チュニス滞在6日目は、北部の地中海沿岸の町タバルカに日帰りで遠征した。
なぜタバルカを選んだかというと、アルジェリア国境に近いからだ。アルジェリアでは去年、約20年にわたって政権の座についていた高齢で病身のブーテフリカ大統領の5期目への立候補に抗議する大規模なデモが発生して拡大・継続し、これが政権交代に繋がったという画期的な事件があったのだが(デモはその後も継続)、その様子をアルジャジーラで追っているうちに、「まあ~デモが終わった後に皆でゴミ集めて捨ててる~同じく反政府デモが起こっているスーダンでは治安部隊(民兵組織)が丸腰のデモ隊を攻撃して死者が大勢出てるのに、アルジェリアではほとんど死者が出てない~ここらで軍事クーデターが起きるのがアラブ的な流れなのに、ここの軍参謀総長(昨年末死去)は口は出すけど手は出さない~なんてステキな国かしら~」とうっとりし、ものすごく行ってみたくなったのだ。
アルジェリアの首都アルジェでの2019年12月17日のデモの様子(フランス24の記事の写真) 仏植民地時代の名残らしき建物もステキ
アルジェリアは個人旅行では観光ビザを取るのが大変そうなので断念したが、チュニジアのお隣だから、国境付近まで行ったら向こうの雰囲気も伝わってくるかも!と考えた(行ってみたら、そうでもなかったが)。また、重い荷物を下げてチュニスから移動する根性はないが、少しは他の地域も見ておくべきだろうということで、ガイドブックに載っているそれなりの観光地で、日帰り出来るタバルカに行くことにしたのだ。
前置きがやけに長くなったが、そういうわけで、この日はちょっとがんばって遠出した。でも早起きする気合はなかったので、朝食をパスして9時半ごろまで眠り、ゆっくり洗濯をしてから出かけた。廊下で出会った朝食係兼掃除係の小柄な女性には、「あなた朝ご飯に来なかったけど、どうしたの?大丈夫?」と声を掛けられた。優しい・・・すいません、眠かっただけなんです~
北バスステーションに向かっている時に通りかかったおうち。ドアの脇の小さいドアの飾りがハート直撃
バスステーションに到着して、タバルカ行きのルアージュ(乗り合いミニバス)に乗り込む。乗客8人が揃って出発したのは12時間際だった。
運転手さんが呼び込みもやる。
車窓からの風景。オリーブ畑
前日に聞いた通り、約3時間でタバルカに着いた。午後3時から観光するっていう・・・時間が遅くなると帰りの便がなくなるか、あるいは8人分の運賃を払ってルアージュを借り切る羽目になるので、2時間ほどで観光を済ませて戻って来る心積もりをして、市内中心部に向けて歩き出す。
タバルカ猫、警戒警報発令中?
「ZAPATISTA(サパティスタ)」と壁に書かれている。他の場所でも見かけた。サパティスタ民族解放軍はメキシコの先住民族主体のゲリラ組織らしいが、チュニジアにも影響を与えたのだろうか。
ぐったりした野菜を売る女性たち
スイカはトラックで売られていた。
朝食抜きでお腹が減っていたので、観光の前にまず腹ごしらえをする。
「Pizzeria(ピッツェリーア)」が「Pizzaria」になっているお茶目なお店でランチにした。
どこがレバノン風かわからないレバノン風シャワルマサンドと、サラタ・マシュウィーヤ(=焼きサラダ)とコーラで7.5TD(300円弱)
シャワルマ(ケバブ)サンド。お肉がたっぷり
ちなみに、レバノンのシャワルマサンドはこんなかんじ(ネットから拝借した写真)これはビーフだが、チキンももちろんある。
パンが焼きたてのようで柔らかく、いい匂いがした。サラタ・マシュウィーヤは、ナスやトマト、パプリカなどを焼いてペースト状にしたもので、ハリッサ入りなのか辛かったが、美味しかった。
満腹になって店を出たが、歩き出して間もなくトイレに行きたくなったので、通りがかりのレストランで借りる。小ぎれいなレストランだったが、トイレには鍵がかからなかったので、ドキドキしながら用を足した。そういえば、ナポリでもトイレの鍵がかからないところがあった。余談になるが、私は中東にハマる前にイタリア生活を経験しているので、大抵の事には驚かない。水回り関係の不具合にも、役所の手続きの不毛さにも、公共交通機関が予定通りに動かないことにも。ありがとう、イタリア~
なんかいわくありげなモザイク
バイオリンのオブジェ。タバルカは、毎年7月にジャズ・フェスティバルが開催されることで有名らしい。
観光スポットの「ジェノバ人の要塞」と「針岩」がある海岸は中心部から歩いてすぐだった。タバルカの街はコンパクトで観光しやすい。シーズンでないせいか、他の外国人観光客は見なかったが。
麦わら帽子タイプのパラソルを設置した海岸
ゴミだらけの海岸だが、子供は楽しそうに遊んでいた。
ヒジャーブで髪を覆った姿で海水浴を楽しむ女性たち
ジェノバ人の要塞。タバルカが16世紀半ばから約200年間ジェノバ人の一族の支配下にあった時代に建てられたらしい。行く時間も根性もなかったので、遠くから眺めたのみ。
名物の「針岩」。この周辺はデートスポットのようで、カップルを見かけた。若者のグループもいた。
こういう岩で出来ていた。
時間がないので、針岩の周辺を一回りしてから早めに街中に戻り、少し散策して5時頃にはバスステーションに戻った。
魚食堂があった。海辺だから新鮮な魚介類が食べられそう。
下の方におでんマーク(ちくわ抜き)があるドア
「パン屋」と書いてある壁。もう廃業していると思われる。
マネキンの人口密度の高い服屋さん
タバルカはなぜか猫が少なかった。
近寄ったら微妙な顔をされた・・・かわいい
帰りのルアージュに乗ったら、行きと同じ運転手さんだった。道中はほとんど寝て過ごしたが(他のお客も同様)、ふと目覚めた時、すごいスピードでビュンビュン飛ばしているのに気が付いた。後で知ったが、チュニジアでは交通事故が多いらしい。くわばら、くわばら・・・
チュニスに到着してた時は、もう夜だった。メトロでリパブリック駅に出て、またカルフールで猫エサを補充してからホテルに向かう。途中で見つけたサンドイッチ屋さんで夕食用にマルフーフ(ラップサンド)を購入。
このお店で買った。パンから手作りで、具はシシュタウック(スパイシーな下味をつけたチキンのぶつ切りの焼いたやつ)。
ホテルに帰る前に、冷たいビールが飲みたくなったので、ハナーホテルにまた寄って、大ジョッキを頼む。夜はホテルの前のオープンテラスにテーブルが出ていた。向かいの建物の前のイベントスペースではコンサートをやっていて、最後に観衆が参加してチュニジア国歌を斉唱していた。選挙運動関係のイベントらしかった。大統領選が近かったのだ。
長旅の後に戸外で飲む冷たいビールは、幸せの味がした。
(続く)
気持ちがスカッとします。
それにしても野菜がほんとにぐったりしてますね。
日本だったらまず買わないですね。笑
旅行大好き人間ですが、中々中東には行く勇気がなく
興味深く拝見させて頂きました。
すてきな記事ありがとうございます!
ぐったりした野菜は、ビタミン少な目のぐったりしたサラダなどを作るのに良さそうです。
中東は面白くて退屈しませんし(退屈するどころの騒ぎではない)、広くて多様で興味深いです。紛争地以外は大丈夫なので、勇気を出してぜひ~
以前、職場の先輩が、アルジェとトルコに駐在していたのですが、なぜ行かなかったのかが不思議と言うか、残念なことをしたと言うか、今さら思います。
プレッシャーを掛けるようで恐縮ですが、続きを楽しみにしています。
応援のコメント、ありがとうございます~今のペースで行くと永遠に終わらないので、もう少し気合を入れてがんばろ・・・う・・・