お姑さんがデイサービスから帰ってきた時、付き添いの職員さんから「今日は微熱がありました」と言われた。
朝から37度2分くらいの熱があって、食欲はあるのだけれど、入浴はやめましたとのことだった。
そういえば二日前、やはりデイサービスから帰ってきたお姑さんの声がガラガラ声になっていて、それが続いていたので「風邪を引いたかな?」と思っていた。
ただ、本人はいたって元気で「買い物へ行きますけど、一緒に行きますか?」と聞くと「行く、行く」と二つ返事で付いて来ていた。
しかし元気そうにしているとは言え、90歳という年齢を考えると、微熱があると言われたら病院で診てもらった方がいいだろう。
デイから帰宅した日は病院が終了している時間だった為、翌朝、お姑さんを連れて病院へ行ってきた。
お姑さんの声はまだガラガラだったが、熱があるようには見えなくて元気そうだ。
しかし、しつこいようだがお姑さんは90歳という高齢であり、何かあってはいけないので病院へ連れて行った。
病院へ着くとすぐに検温されたが、やはり熱はなくて平熱の36度だった。
看護師さんから「インフルエンザの検査をしてもいいですか?」と聞かれたので、そちらもお願いした。
インフルエンザの検査後、診察まで待合室で待つことになった。
お姑さんの行ってる病院はいつも混んでいて、この日もたくさんの患者さんが待合室にいた。
念のためにお姑さんにマスクをかけさせ、自分もマスクをする。
そしてお姑さんには「今日は声がかすれているから、喉に負担をかけないようにして、あまりしゃべらずにいて下さいね」と言っておいた。
すると、お姑さんはうなずきながら、「わかった。喋らない方がいいんだね。私、風邪ひいたからね。変だね~、風邪なんてめったにひかないのに、どこで移っちゃったのかね~、あんまりしゃべらないほうがいいよね。声がガラガラだからね。ところで、今日はいつもの先生なのかい?いつもの先生じゃないと嫌だわ。でも仕方ないよね。飛び込みだから、ところで・・・」以下話は続く。
まだまだ話が続きそうだったので、途中で「喉に悪いから喋らない方がいいですよ」と話を遮った。
お姑さんは「そだそだ。喉に悪いんだった」と話を止めたのだが、しばらくすると、今度は隣に座ったおじいさんに話しかけた。
話題はいつも同じで、まず夫に先立たれて一人になって寂しいという話をする。
相手が相槌を返してくれて、この人は話に乗ってきてくれる人だと分かると、次は自分の出身地の話をする。
ここで相手が同じ出身地もしくは住んだことがあると言った時にはもう大変で、次々と出身地の話題が出てくるのだが、いつもお姑さんの話を聞いている私にとっては、毎度おなじみの話ばかり。
しかし隣の席のおじいさんが良い方で、ニコニコしながらずっとお姑さんの話を聞いてくれていた。
延々と話し続けるお姑さんを、どうやって連れ出そうかと考えながら、私は後ろの席で身を乗り出しながら話を切るタイミングを狙っていた。
・・・と、ちょうどおじいさんが診察室から呼ばれ、席を立って行った。
私はお姑さんの隣の席に移ると「あんまりしゃべると喉に悪いから、声は出さないようにしてくださいね」とかる~く注意を入れた。
「そだそだ。声が出なくなったら困るしね」と言って納得してくれたように見えたお姑さんだったが、しばらくすると暇そうに周囲をきょろきょろし始めた。
後ろの席には高齢の女性が座っている。ま、まずい・・・
お姑さんは振り返ってニッコリ笑うと「混んでますねえ」と声をかけた。
このようにお姑さんと公共の場に行くと、だれかれとなく話しかける。
嫁の立場ではもう制止しきれない。
最初のおじいさんのように、にこにことお姑さんの話に付き合ってくれる人もいれば、迷惑そうに離れていく人もいる。
あからさまに迷惑そうな顔をされれば、もう話しかけるのを止めるのではないかと思うのだが、お姑さんはそんなことには全くめげていない。
次なる「獲物」を探し始める。
話に乗ってくれそうな人を探して辺りを見渡し、そしていざ見つけると、獲物に向かって満面の笑みで近づいていく。
私が看護師さんと話をして、ちょっと目を離したすきにお姑さんの姿が見えなくなって焦ったら、なんと病院の受付に座っている中年女性の所へ行って話しかけていた。
獲物は来ている患者さんだけではなく、病院関係者もだったか・・・元気すぎるお姑さんに感心してしまう。
すごい行動力。。。
お姑さんもちゃんと分かっていて、あまり若い人には話しかけず、ある程度の年齢がいった人を選んでいる。なぜかというと、若い人より高齢の人の方が話につき合ってくれるから。
しかし、病院などでは具合の悪い人が大多数なわけで、体調が悪いのに見知らぬ婆さんの出身地や生い立ちなど聞きたいと思う人は、そういないはずだ。
「こうなったら人のいない席に連れて行こう」と、お姑さんを連れて人けのない場所に移動していたら、やっと診察室から呼ばれた。
診察室に入ると医師が開口一番「インフルエンザですね」とおっしゃった。
「インフルエンザー!!!」私はあまりの衝撃に口がぽかーんと開いてしまった。
「インフルエンザですか!?こんなに元気なのに?熱もたった37度で、もう下がってるんですけど」と言うと、医師は「そういう人もたまにいるんですよ。軽くすんじゃう人が・・・でも、間違いなくインフルエンザB型の陽性です」と言われた。
熱もなく元気なので薬はナシ。
結局、インフルエンザだったということを確認しに病院へ行ったようなものだった。
(あっ、あとお姑さんのおしゃべりによるストレス発散ね)
お姑さんが話しかけていた方々にインフルエンザが移っていなければいいのだけれど、心配です。
お姑さんおそるべし・・・
ところで、本を読んでいたら興味深いことが書かれていた。
「なぜ女性は男性よりおしゃべりなのか」という内容で、最近の研究によると、女性は生科学的に、男性より他人とのつながりを求める傾向があるというのだ。
男女共にストレスを感じるとアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンを分泌するのだが、女性の脳はさらにオキシトシンを放出しようとする。
オキシトシンは「結びつきのホルモン」と言われ、女性が落ち込んだ時に友だちと集まっておしゃべりをしたり、ペットに接したりしてオキシトシンの分泌を促し、心を穏やかにしてストレスを消していこうとしているのだそうだ。
ちなみに男性はオキシトシンの量が少なくなっている為に、人間関係にさほど注意を払うことはなく、女性のようにおしゃべりや愛情を与える行為でストレスを解消しようとせず、問題解決や克服などの行動に出ようとするのだとか。
女性でも問題解決や克服に向かう人もいれば、男性でもペットに愛情をかけることで癒されようとする人もいると思うので、これらは一概には言えないが、お姑さんの場合は明らかにオキシトシンが大量に放出されているような気がしている。
それにしても、インフルエンザのお姑さんの方が私よりよほど元気。
疲れましたわ・・・
朝から37度2分くらいの熱があって、食欲はあるのだけれど、入浴はやめましたとのことだった。
そういえば二日前、やはりデイサービスから帰ってきたお姑さんの声がガラガラ声になっていて、それが続いていたので「風邪を引いたかな?」と思っていた。
ただ、本人はいたって元気で「買い物へ行きますけど、一緒に行きますか?」と聞くと「行く、行く」と二つ返事で付いて来ていた。
しかし元気そうにしているとは言え、90歳という年齢を考えると、微熱があると言われたら病院で診てもらった方がいいだろう。
デイから帰宅した日は病院が終了している時間だった為、翌朝、お姑さんを連れて病院へ行ってきた。
お姑さんの声はまだガラガラだったが、熱があるようには見えなくて元気そうだ。
しかし、しつこいようだがお姑さんは90歳という高齢であり、何かあってはいけないので病院へ連れて行った。
病院へ着くとすぐに検温されたが、やはり熱はなくて平熱の36度だった。
看護師さんから「インフルエンザの検査をしてもいいですか?」と聞かれたので、そちらもお願いした。
インフルエンザの検査後、診察まで待合室で待つことになった。
お姑さんの行ってる病院はいつも混んでいて、この日もたくさんの患者さんが待合室にいた。
念のためにお姑さんにマスクをかけさせ、自分もマスクをする。
そしてお姑さんには「今日は声がかすれているから、喉に負担をかけないようにして、あまりしゃべらずにいて下さいね」と言っておいた。
すると、お姑さんはうなずきながら、「わかった。喋らない方がいいんだね。私、風邪ひいたからね。変だね~、風邪なんてめったにひかないのに、どこで移っちゃったのかね~、あんまりしゃべらないほうがいいよね。声がガラガラだからね。ところで、今日はいつもの先生なのかい?いつもの先生じゃないと嫌だわ。でも仕方ないよね。飛び込みだから、ところで・・・」以下話は続く。
まだまだ話が続きそうだったので、途中で「喉に悪いから喋らない方がいいですよ」と話を遮った。
お姑さんは「そだそだ。喉に悪いんだった」と話を止めたのだが、しばらくすると、今度は隣に座ったおじいさんに話しかけた。
話題はいつも同じで、まず夫に先立たれて一人になって寂しいという話をする。
相手が相槌を返してくれて、この人は話に乗ってきてくれる人だと分かると、次は自分の出身地の話をする。
ここで相手が同じ出身地もしくは住んだことがあると言った時にはもう大変で、次々と出身地の話題が出てくるのだが、いつもお姑さんの話を聞いている私にとっては、毎度おなじみの話ばかり。
しかし隣の席のおじいさんが良い方で、ニコニコしながらずっとお姑さんの話を聞いてくれていた。
延々と話し続けるお姑さんを、どうやって連れ出そうかと考えながら、私は後ろの席で身を乗り出しながら話を切るタイミングを狙っていた。
・・・と、ちょうどおじいさんが診察室から呼ばれ、席を立って行った。
私はお姑さんの隣の席に移ると「あんまりしゃべると喉に悪いから、声は出さないようにしてくださいね」とかる~く注意を入れた。
「そだそだ。声が出なくなったら困るしね」と言って納得してくれたように見えたお姑さんだったが、しばらくすると暇そうに周囲をきょろきょろし始めた。
後ろの席には高齢の女性が座っている。ま、まずい・・・
お姑さんは振り返ってニッコリ笑うと「混んでますねえ」と声をかけた。
このようにお姑さんと公共の場に行くと、だれかれとなく話しかける。
嫁の立場ではもう制止しきれない。
最初のおじいさんのように、にこにことお姑さんの話に付き合ってくれる人もいれば、迷惑そうに離れていく人もいる。
あからさまに迷惑そうな顔をされれば、もう話しかけるのを止めるのではないかと思うのだが、お姑さんはそんなことには全くめげていない。
次なる「獲物」を探し始める。
話に乗ってくれそうな人を探して辺りを見渡し、そしていざ見つけると、獲物に向かって満面の笑みで近づいていく。
私が看護師さんと話をして、ちょっと目を離したすきにお姑さんの姿が見えなくなって焦ったら、なんと病院の受付に座っている中年女性の所へ行って話しかけていた。
獲物は来ている患者さんだけではなく、病院関係者もだったか・・・元気すぎるお姑さんに感心してしまう。
すごい行動力。。。
お姑さんもちゃんと分かっていて、あまり若い人には話しかけず、ある程度の年齢がいった人を選んでいる。なぜかというと、若い人より高齢の人の方が話につき合ってくれるから。
しかし、病院などでは具合の悪い人が大多数なわけで、体調が悪いのに見知らぬ婆さんの出身地や生い立ちなど聞きたいと思う人は、そういないはずだ。
「こうなったら人のいない席に連れて行こう」と、お姑さんを連れて人けのない場所に移動していたら、やっと診察室から呼ばれた。
診察室に入ると医師が開口一番「インフルエンザですね」とおっしゃった。
「インフルエンザー!!!」私はあまりの衝撃に口がぽかーんと開いてしまった。
「インフルエンザですか!?こんなに元気なのに?熱もたった37度で、もう下がってるんですけど」と言うと、医師は「そういう人もたまにいるんですよ。軽くすんじゃう人が・・・でも、間違いなくインフルエンザB型の陽性です」と言われた。
熱もなく元気なので薬はナシ。
結局、インフルエンザだったということを確認しに病院へ行ったようなものだった。
(あっ、あとお姑さんのおしゃべりによるストレス発散ね)
お姑さんが話しかけていた方々にインフルエンザが移っていなければいいのだけれど、心配です。
お姑さんおそるべし・・・
ところで、本を読んでいたら興味深いことが書かれていた。
「なぜ女性は男性よりおしゃべりなのか」という内容で、最近の研究によると、女性は生科学的に、男性より他人とのつながりを求める傾向があるというのだ。
男女共にストレスを感じるとアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンを分泌するのだが、女性の脳はさらにオキシトシンを放出しようとする。
オキシトシンは「結びつきのホルモン」と言われ、女性が落ち込んだ時に友だちと集まっておしゃべりをしたり、ペットに接したりしてオキシトシンの分泌を促し、心を穏やかにしてストレスを消していこうとしているのだそうだ。
ちなみに男性はオキシトシンの量が少なくなっている為に、人間関係にさほど注意を払うことはなく、女性のようにおしゃべりや愛情を与える行為でストレスを解消しようとせず、問題解決や克服などの行動に出ようとするのだとか。
女性でも問題解決や克服に向かう人もいれば、男性でもペットに愛情をかけることで癒されようとする人もいると思うので、これらは一概には言えないが、お姑さんの場合は明らかにオキシトシンが大量に放出されているような気がしている。
それにしても、インフルエンザのお姑さんの方が私よりよほど元気。
疲れましたわ・・・