「飲む」「打つ」「買う」といえば、ほとんどの女性たちがまゆをひそめる男の道楽。
ちなみに「飲む」はお酒で「打つ」はギャンブル、「買う」は女遊びのことだが、これらは昔々のお話で現代では死語に近い言葉になっている。
ところが、死語となった「飲む」「打つ」「買う」を友人の口から聞くとは思わなかった。
二十年ぶりに友人二人と三人で会うことになった。
長らく会っていないので、お互いに顔がわからないのではないかと心配したが、みんな変わっていなかったのが嬉しかった。
これまでの会わなかった年月にあった出来事など、話に花が咲いたのだが、話題は家族のことになり「ご主人はお元気?」という流れになった。
昔は配偶者同伴で集まったことがあり、安否確認の意味で話題に出たのだが、友人二人のご主人はみな定年を迎えていて、今は自宅に居ることが多いとか。
一人の友人のご主人は、自転車や山登りなどをして定年ライフを楽しんでいるそうだ。
それを聞いていた別の友人が、急に恥ずかしそうになって「充実していていいねぇ」と言った。
そして「うちの夫の趣味は、飲むと打つだよ」と教えてくれた。
元々、お酒を飲むことが好きな人だと知っていたので、飲む事は驚かなかったが、「打つ」話を聞いて驚いた。
なんと奥さんが知らないうちにギャンブルで大金を失くしたのだという。
その金額は、高級外車が買えるほどだというから驚く。
「もう貯金通帳みて、その場に座り込んじゃったわよ。盗まれたんじゃないかと思ったけど、帰ってきた夫に聞いたら、(すみません、私です)って謝られて、、、でもそれは夫が義父から貰ったお金だから、私のお金じゃないから何も言わなかったの。ただお金をくれたおじいちゃんには申し訳ないなぁと思った」
友人の嫁いだ家はかなりの資産家で、大金が消えても生活には支障はないようだけど、それでも私が妻ならきっと怒る。
いくら自分のお金じゃなくても、そんな大金をギャンブルで使い果たすってどーゆう事?と詰め寄りそうだが、友人はそうではなかった。
おおらかに笑い話にして、逆にご主人の良いところに目を向けている。
友人の話を聞くと、ご主人は本当にいい人で、自分が損をしても相手の得になるように考える人だそうだ。
これまで騙されたことも多々あったのではないかと思うが、家庭が修羅場にならず、子どもたちも健やかに育っているのは、ご主人の人柄と友人の力ではないかと思う。
ご主人がギャンブルで大金を失くしてから、今はお小遣い制にして、そこからギャンブル代を出してもらうようにしているそうだ。
「まだギャンブルするのかい?」とは決して言わず、笑顔で送り出すなんて妻の鏡、、、
それを聞いていたもう一人の友人が「私には真似できないし、我慢できないと思う」と言った。
いつも真っ直ぐできちんとした性格の友人なら、きっとそう思うだろうなと思った。
好きなギャンブルができるのも、資金力があるからこそだと思うが、幸せなご主人だと思う。
そして友人もまたとても幸せそうだった。
大酒飲みでギャンブル好きな夫との暮らしというと、不幸な結婚生活を想像するが、視点を変えればとても幸せで穏やかな気持ちで暮らせるのだと思った。
ところで最後の「買う」だが、友人曰く「ギャンブルするくらいお金はあるのに、それだけは無いのよね〜きっとモテないんだと思う」とのことだが、それは違うと思う。
きっとおおらかで包容力のある奥さん一筋だからなのだろう。