昨日、私はとんでもないことをした。
今思い出しても背筋がぞぞぞってしてくる。
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昨日の昼、私はデミ嬢と一緒にランチをとるため近所にあるスーパーの中のスタバにいた。
と言っても11時ごろ私は自分のデスクでさささっと10分程度でサンドイッチを食べていて
「あなたね、たまには立って歩かないとそのうち血液の塊ができるわよ」とデミ嬢に言われ、
それならちょっと息抜きでもいいかと思い、コーヒーでも飲みに出かけたのだった。
彼女と仕事の愚痴を話したりして45分ごろが経過し、私たちは会社へ戻った。
私の手には、そこで飲みきれなかったコーヒーカップが握られている。
会社に戻ると留守電にメッセージが残されており、それを確認してその相手に電話をかける。
用件を聞き、電話を切る。
そうだ。口紅でも塗りなおそう。
さっきコーヒーを飲んで、口紅が薄くなっている。
そして口紅を塗ろうとしていつもバッグをいれておく引き出しを開けると、バッグがない。
机の上を右から左、左から右へと見たが、やはりバッグがない。
床を見てみる。
やっぱりない。
5秒ぐらい間をあけて、私は弾かれたように口元を手で覆った。
私はバッグ丸ごと、スタバに置き忘れて帰ってきてしまったのだった。
デミ嬢に「ねえ、帰って来るとき私バッグ持ってなかったっけ?」と誰かと商談中にも関らず割り込んで聞く。
「あんたバッグを椅子に引っ掛けてたのは見たけど...。え。まさか忘れて帰ってきちゃったの?」
とりあえず、さっきの場所に戻ってみなよという彼女の言葉と同時に私は走っていた。
そんな日に限ってヒールの高い靴を履いていた。
こんな高いヒールで全力疾走したことは今まであっただろうか。
走りながら、いろんなことを思った。
財布にはアメリカ人が普段入れていない額の現金が入っている。
クレジットカードも、運転免許証も、グリーンカードも入っている。
あ。鍵が入っているから家にも入れない。
ってか、車運転して帰れない。
女性なら絶対にうなずけると思うが、女性というものは普段から自分が使っているバッグに
自分の生活に欠かせない、いわば「人生」そのものをバッグに詰め込んでいると言っても過言ではないと思う。
あの場所を離れてから、すでに30分は経過していた。
私は何を考えていたのだろう。
財布や携帯をどこかに置き忘れる人は結構いると思うが、
バッグ丸ごとってあんまり聞かない。
私はそんなに疲れているのだろうか。
走ってスーパーに駆け込むとき、若い従業員の男の子が
「そんなに走らなくてもうちのスーパー、夜の11時まで開いてるよー」と笑ってた。
カウンターに到着した瞬間、2人の従業員がいたが、その一人が
「あるわよ。」と言う。
私が何も言わなくても絶望感が顔に出ていたんだろう。
その言葉に安堵で脱力。腰が抜けるかと思った。
ってか泣きたい。
「ファーストネーム、何て読むの?」って聞かれ、腑抜けになった声で答えた。
「金庫からバッグ、出してくるね。」と彼女が奥へ消える。
その間、もう一人の従業員に「誰が発見して持って来てくれたの?」と訊ねたら
「あの人。レジのカウンターにいるでしょう?」と、他の従業員を指差した。
彼女のことは知っている。
行き着けのスーパーだから顔見知りだ。
いつも親切にしてくれる人だけど、今回は心の底から彼女に感謝した。
私のバッグと共に戻ってきて、「中身確認してみてね。大丈夫だと思うけど。」って言われ
一応中を見たけど、全部そのままだった。
「うちのメンバーズカードが鍵についていたから、家に電話入れといたのよ。あ、でも鍵ないから家に入れないか。
それからさっきね、あなたの同僚からも心配して電話があったから、バッグを保管してますよって言っておいたわよ。」
って言ってくれた。
電話を入れてくれたのはデミ嬢だった。
バッグがないと認識してから約30分。
私はもうバッグは二度と戻ってこないだろうと確信さえしていたのに、
今ちゃんと私の手元にある。
ねえ、アメリカもまだまだ捨てたもんじゃないよ。
私は私のバッグを発見してサービスカウンターに届けてくれたその彼女に歩み寄り、
大きなハグをした。
「よっぽど仕事がしたくて急いで会社に戻ったのねえ。」と笑ってアメリカンジョークを言ってくれた。
職場に戻ってからは、トラウマと全力疾走、それから安堵で朦朧としていた。
デミ嬢がキューブを覗き込んで、「普通バッグそのもの、忘れる??」って笑ってたけど
もう疲れて疲れてただ、「へ へ へ。」って笑って返すのが手一杯だった。
レジのあの彼女には、改めてお礼をしようと思う。
休憩をのんびりすごしてねと、スタバのギフトカードにしようか。
『ありがとう。世の中があなたのような人であふれますように。』とカードも添えようと思う。
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みなさんにも信じられない忘れ物、あります?
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いつもありがとう。