「だいたいできたと思う。ヒントのある方は百点」と、カミさんは誇らしげに言う。今日は西枇杷島警察署での認知機能検査のため、カミさんを午前9時までに送り届けなくてはならなかった。私は自分の時よりも、遅れてはならないと緊張した。
15分ほど前に到着したからか、駐車場はまだ余裕があった。けれど、邪魔をしてはいけないので、近くの喫茶店を探して時間の来るのを待った。ここの喫茶店も年寄りばかりで、「古紙よりもアルミ缶の方が儲かるぞ」とか話していた。
10時前に迎えに行き、そこから名古屋法務局へと向かった。NPO「おたすけ」は解散したけれど、その登記を取ってくるようにと県生活部から電話が入ったためだ。役所というのはめんどくさいけれど、それが決まりなら仕方ない。
法務局の後、「いい時間だから、名古屋市美術館で開催している『FOLON展』を観に行こう」となった。白川公園には子どもたちがたくさん来ていた。フォロンはベルギーのアーティストで、アメリカで有名になった。その作品は発想が奇抜で、まるで漫画のようだ。
私が勤めていた高校のデザイン科の生徒の方が、面白い作品を描いたかも知れない。どこでどんな風に評価されるか、時代と社会が大きく作用する。美術館の地下1階は、所蔵作品の展示を行っているが、今日は市内の中学生が校外学習で来ていた。
モディリアーニの作品の前で、ボランティアの人が中学生に説明していた。余りに熱心だったので、私も少し聞かせてもらった。でも、絵は感性から入った方がいい。まず鑑賞し、質問があったら答える手順でないと、知識が先では退屈になってしまう子もいる。
観終わって、最後にウイルあいちへ、法務局で発行してもらった登記を持って行った。けれど、工事中で建物の中に入れない。警備の人に聞いても、「駐車場は無い」と言う。今日で全て完了するはずだったのにと情けなくなる。
家に帰って、封筒に入れて郵送で送る。カミさんは全て順調なのに、どうして私はダメなのだろう。「あなたは思い込みが強いのよ。合理的に考えないし」とカミさんに指摘され、そうかと納得するが、今日の半分はカミさんのために働いたのにと疑問が湧いてきた。