大阪・堺市の市長選挙で、「維新の会」候補が敗れた。橋下大阪市長が率いる「維新の会」は、急速に勢いを失っている。自民党政権が長く続き、その腐敗に飽き飽きした有権者は民主党に大きな期待を寄せた。はっきりものを言うのが好きな有権者は、橋下さんの主張に共感した。行政改革を断行し、税金の無駄使いをなくせと、「みんなの党」と共に新しい政治勢力の活躍を歓迎した。
ところが橋下さんは、行政改革や税金の無駄使いよりも、「慰安婦問題」のようなに、韓国や中国をバッシングすることで人気を得ようとした。これが国際的にも非難されると、マスコミの語学力不足で真意を捉えていないとマスコミを批判した。共同代表の石原慎太郎さんが堺市長選の応援演説に来た時、韓国や中国への非難に終始した。市民から「堺の話をしろ」とヤジが飛ぶと、「大事な話をしているのだ。静かに聞け」とやり返したという。
これでは「維新の会」候補の当選はないだろうと思ったが、その通りだった。日本人はどちらか言えば、極端な主張を嫌う。どこまでも穏やかで凡庸な人柄なのだ。それでいて、「みんなで渡れば恐くない」というように、周りをとても気にし、集団からはずされることを恐れる。そんな日本人だけれど、余りに長く自民党政治が続いたので新しい政治を求めたが、やはり極端さは好きになれなかったのだと思う。
世界の各地で、いろんな現象が生まれている。イギリスのスコットランドで独立運動が起きている。イタリアは連立内閣が崩壊しそうだ。ドイツはメルケル首相率いる与党が大勝したけれど、アメリカとは違う道を進みそうだ。ヨーロッパは、小国に分裂しながら連合体を形成していくだろう。それは大きな経済成長を望まず、貧富の差が少ない社会を目指していくように思われる。アメリカはまだ成長を求めているが、シリアへの攻撃に否定的な市民も多く、大学を卒業しても就職できない状況が続いているから、貧民層の不満は大きくなっている。
経済成長が著しい中国やインド、アジアやアフリカ、イスラム諸国もまた資本主義化が進めば当然、内部矛盾が大きくなる。どういう選択をしていくのか、大きな岐路を迎えている。極端な主張は一時的な支持を得ても、やがて消えていくことを堺市民は見せた。ただ、投票率が低すぎる。投票に行かなかった有権者は、また、ふわふわと「格好いい」主張に乗ってしまうかも知れない。そうならないことを祈る。