昨夜から強い風が吹いている。花の終わった白いサザンカが、再び根元から押し倒されている。ロープを張って倒れないように手当てを尽くしたのに、この強風には勝てなかった。明日からもう4月だ。マンションの周りの桜は満開になってきたのに、風は無情にも花びらを吹き飛ばしていく。
「ロシアのプーチン大統領のもとに陳情書が届いた。―敬愛する大統領閣下!ここドイツには5百万以上のロシア系住民がいます。私たちはひどい目に遭っています。あらゆる場所で、ドイツ語の使用を強いられているのです。私たちを助けてください。軍を投入してください―物騒な陳情だが、もちろんこれは冗談。ロシアの政治小咄投稿サイトで見つけた新作だ」(3月25日、中日新聞の『中日春秋』より)
「住民保護」という大義の下にウクライナのクリミア半島へ出兵したプーチン政権を皮肉った小咄である。こんな小咄が飛び交う間はまだよいと思う。この『中日春秋』は、ロシアのクリミアへの軍人介入を決めたことに対して、自民党の石破幹事長が3日に行なった記者会見を取り上げていた。石破幹事長は「軍事介入は、ウクライナにおける自国民保護ということであって、それは日本流に言えば、邦人救出というお話ですから‥‥武力の行使とか、武力介入というお話にはならない」と。
戦争になる時はいつだってそうだ。自国民の保護とか、自国の国益を守るとか、民主主義とか、大義をかざした。そうでなければ国民が納得しないからだ。ヒトラー率いるナチスドイツも「アーリア人を守る」という大義があったし、日本帝国も「アジアを欧米から解放し、大東亜共栄圏をつくる」という大義があった。国民の後押しがなければ戦争は出来ない。感情の昂ぶった兵士は命を惜しまないから、「大義のための闘いである」ことを徹底的に教え込んだ。
世界は今いろんな人々が混然として住んでいる。アメリカは移民国家だから中国人も韓国人も日本人もベトナム人も多種多様だ。アメリカに住む中国人が習主席に、冒頭のような陳情書を送ったら第3次世界大戦である。いや、どこの国も「自国の利益」を優先すれば必ず衝突が生まれる。国はあるけれど、人は国を超えて住むようになった今日では、だんだん国境の意味は薄くなっている。新しい時代に、新しい世界のあり方が生まれてきている。