以前、井戸を掘ったところで地中に塩ビ管を残してきた家がある。その家の奥さんから「抜いて欲しい」と言われ、撤去してきた。井戸を掘った当時は、「そのままでいい」と言われていたが、きっと何か嫌なことが続いて起きたりしたのだろう。塩ビ管が残っているせいではないか、そんな風に誰かに言われたか、あるいは自分が思われたのだろう。鉄柱を立てて、チェーンで引っ張り上げて撤去できた。「いかほどでしょう?」と奥さんは言われるが、そもそも本来は撤去すべきもの、「お金はいいです」と断ると、「お茶代にして」と3千円渡された。
それで、昼食に焼肉屋へ出かけた。土曜日の昼なのに随分混んでいる。家族連れが多いが、女子だけのグループもいる。ビックリしたのはひとりで来ている男性が2組もいたことだ。ひとりはお猪口で日本酒を飲み、もうひとりはビールを大ジョッキで飲んでいた。焼肉も上等なカルビで、肉を食べながら酒を飲む姿は特異だった。「昼間からお酒とは、優雅というか贅沢というか‥」と先輩が羨ましそうに言う。「焼肉をひとりとは、優雅より貧相で物悲しいね。食事は大勢でしたいものだ」ともうひとりの先輩が言う。
「身なりから見ても決して金があるようには思えない。あれだけ食べてても痩せてるから、1日1食、それを今とっているのではないか。老人のひとり暮らしでは、1日に1食しか食べない人が結構いるよ」と先輩は分析する。家族連れや華やかな女子グループが多い中で、ひとりで酒を飲みながら焼肉を食べる老人は孤独感に満ちている。別々のところに座っているふたりの老人を1つのテーブルに座らせても、ふたりは黙って酒を飲み焼肉を食べるだろう。
一緒に居たい人となら話は弾むが、居たくない人とは何をしても楽しくない。気持ちのいい人もいれば、気の利かない人いる。いつも元気な女性がいる。その人が元気がないので、「元気が取り柄なのに、どうしたの?」と声をかけた。翌日その女性に会うと、「取り柄は元気だけですから」と言われた。そんなことはないのに、言葉のかけ方が悪かった。「元気だけでなく、皮肉も言えるよ」と訂正しておこうか。