goo blog サービス終了のお知らせ 

【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

月刊「くまがわ春秋」10周年の集い 挨拶 ~個人を偲んで語ろう~

2025年04月13日 17時44分48秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」

月刊「くまがわ春秋」10周年の集い 挨拶 

~個人を偲んで語ろう~   

             永田満徳

 

週刊「ひとよし」以来、月刊「くまがわ春秋」に寄稿し、大変お世話になっています永田満徳です。

本日は、「10周年の集い」の挨拶の栄誉を賜り、大変光栄に思っています。

 

人吉・球磨で熱心に文化活動を行った先人には高田素次氏、渋谷敦先生がいらっしゃいました。

今、ここに前田一洋先生、鶴上寛治先生がお亡くなりなりました。

郷土に根差し、人吉・球磨の文化活動に貢献された先達を失うことは痛切の極みです。 

ここに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

本当にお疲れ様でした。

  

「くまがわ春秋」は「週刊ひとよし」創刊の趣意を受け継いでいます。

前「週刊ひとよし」編集長の伊勢戸明氏は、「週刊ひとよし」創刊にあたって、「一定の政治目標や経済活動に縛られない、それぞれの意見や研究や作品を発表できる個人参加の自由な集いとし、地域が真に自立するための連帯の場である」と述べられています。

「くまがわ春秋」は人吉・球磨という地域から出るべくして出た月刊誌です。

「本誌を読めば、球磨川流域のことは分かる」雑誌として発行されています。

これからも、人吉・球磨の文化が生きている証として、また、人の営みそのものを伝える月刊誌として愛読されることを願ってやみません。

 

ところで、高田素次氏・渋谷敦先生、前田一洋先生、鶴上寛治先生と連綿と続く人吉・球磨の文化顕彰に尽力された方は「地方からの発信」を心掛けた人たちです。

「地方からの発信」というと、明治時代に湯前町で活躍した井上微笑を思い出します。

井上微笑は夏目漱石を引き入れ、全国的に名を馳せた俳誌「白扇会報」の編集長かつ俳人で、当時、僻遠の地である湯前町に居ながら、「地方からの発信」に努力した人物です。

郷土研究家の高田素次氏が、「井上微笑自身の熱意と辛抱強さ」に目を見張っています。

「微笑の熱意と辛抱強さ」という言葉は、井上微笑が「私は俳句の信者である」と言っていることと無関係ではありません。

私自身、現在、郷土の文学研究、俳句の創作などの活動をしています。

その活動の原動力は、「地方からの発信」を心掛けた井上微笑の「私は俳句の信者である」という「熱意と辛抱強さ」です。

 

人吉・球磨の文化が生きている証として、また、人吉・球磨の人々の営みそのものを伝える「くまがわ春秋」を始めとして、人吉球磨という郷土文化を顕彰し、「地方からの発信」を辛抱強く心掛けていくことは先人の労苦に報いることだと思っています。

ともに、がんばってゆきましょう。

 

日時:2025年4月12日 18時30分~20時30分

場所:人吉旅館

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『くまがわ春秋』3月号(その2) 〜 季語で一句 64 〜

2025年03月06日 22時38分04秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」

俳句大学投句欄よりお知らせ!

 

『くまがわ春秋』3月号(その2)

 

〜 季語で一句 64 〜

 

◆2025年『くまがわ春秋』3月号(第108号)が発行されました。

◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。

 

◆お求めは下記までご連絡下さい。

 ・info@hitoyoshi.co.jp 

 ☎ 0966-23-3759

 

永田満徳:選評・野島正則:季語説明

 

 

吹雪(ふぶき)        「冬-天文」

 

西村楊子

  •  

身の内のこゑもろともに吹雪きけり 

【永田満徳評】

「吹雪」は激しい風を伴う降雪で、自然の猛威の一つ。「身の内のこゑもろとも」という措辞は激しく吹きすさぶ吹雪のなかで、声を上げても声がかき消される猛吹雪の様子そのものをうまく表現している。

【季語の説明】

「吹雪」とは降ってくる雪や積もった雪が吹きすさぶ強風によって激しく舞い上がり、空中を乱れ飛んでいる状態を指す。気象庁によると、吹雪は「やや強い風」程度以上の風が雪を伴って吹く状態であると定義する。吹雪になると視界が悪くなるのが一般的。吹雪の一種として、さらに強い風を伴う猛吹雪と、降雪を伴わない地吹雪がある。

 

 

初午(はつうま)         「初春―行事」

 

西村楊子

  •  

 餅撒きの波と歓声午祭

【永田満徳評】

「牛祭」は家内安全、商売繁盛や五穀豊穣などを祈るもの。境内にたくさんの参拝客が訪れる神社の様子。「餅撒き」の時の参拝客の動きを「波」に例え、参拝客の波のような歓声をうまく詠んでいる。

【季語の説明】

「初午」は立春を迎えて初めに訪れる午の日に家内安全や商売繁盛を祈願して、全国の稲荷神社でお祭りが行われる日。稲荷神社に穀物の神が初午に降臨したことから、稲荷詣をするならわしとなった。お供え物に、稲荷神の使いの狐が好むという信仰からきた油揚げや、油揚げで酢飯を包んだ稲荷寿司などがある。

 

 

春日(はるひ)             「春-天文」

 

野島正則

  •  

春日へと一歩踏み出す母の杖

【永田満徳評】

「春日」は暖かい春の日差し。足腰の弱くなった「母」が春の日差しに誘われ、「杖」を突いて、「一歩」外に出ようとしているところ。「春日へ」という措辞は能動的になった母を温かい眼差しで表現している。

【季語の説明】

「春の日」はのどかでゆったりと暖かく、長く感じられる一日をいう。うららかな明るい春の太陽、またはその日差しとは区別して用いる。「春の日」と言えばいつの間にか眠気を催してくるようなのんびりした気分の日中を思い浮かべるのが自然であろう。鈴木花蓑の「大いなる春日の翼垂れてあり」の句は春の日の気分を謳歌している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『くまがわ春秋』3月号(その1) 〜 季語で一句 63 〜

2025年03月05日 22時30分46秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」

俳句大学投句欄よりお知らせ!

 

『くまがわ春秋』3月号(その1)

 

〜 季語で一句 63 〜

 

◆2025年『くまがわ春秋』3月号(第108号)が発行されました。

◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。

 

◆お求めは下記までご連絡下さい。

 ・info@hitoyoshi.co.jp 

 ☎ 0966-23-3759

 

永田満徳:選評・野島正則:季語説明

 

初富士(はつふじ)          「新年―地理」

 

三高邦子

  •  

初富士や婚約帰省の新幹線

【永田満徳評】

景色の良さで知られる山の名を付けて詠まれ、「初富士」もその一つである。おめでたい「婚約」した者同士が「新幹線」から眺める「初富士」を詠んだ句である。まことにめでたい風景と言わざるを得ない。

【季語の説明】

初富士(はつふじ)          「新年―地理」

                                                                                      

【季語の説明】

「初富士」は正月に初めて仰ぎ見る富士山のこと。昔は江戸から望む富士を初富士といった。「一富士二鷹三茄子」の通り、初夢で最も縁起がよいのが富士山。富士山の初日の出は元旦の7:30~8:00頃に見られ、ダイヤモンド富士は元旦の8:01頃。初比叡は元日に望む比叡山で、東の「初富士」と呼応する季語。

 

 

鶴(つる)            「冬―動物」

 

大工原一彦

  •  

丹頂やすベての所作の儀式めく

【永田満徳評】

「鶴」は秋にシベリア方面から渡来し、沼や田圃で越冬、春には再び去る。「丹頂」は古来よりめでたい鳥として尊ばれてきた。「儀式めく」という措辞によって、丹頂の優美なたたずまいを的確に描いている。

【季語の説明】

「鶴」はツル科の鳥の総称。鍋鶴・真鶴は秋、シベリアから飛来し、田や沼で冬を越す。鶴は容姿の美しさもあり、古来より瑞鳥とされてきた。凍ったようにじっと動かず片足で立っている鶴を凍鶴という。北海道東部で年間を通して棲息する丹頂はめでたい鳥として尊ばれ、ほかの鶴と同様に冬の季語として扱われる。

 

 

落葉(おちば)          「冬―植物」

 

大工原一彦

  •  

平等にある重力や落葉掻く

【永田満徳評】

「落葉掻く」とは落葉を掃き集めること。すべての葉を落とすので、落葉掃除が大変。落葉を掻きながら、葉が落ちることを万有引力という物理現象と捉えた句である。落葉という自然の原理の厳しさをよく捉えている。【季語の説明】

「落葉」は落葉樹が晩秋から冬にかけて落とした葉を指す。木の葉の散る様子も地面や水面に散り敷いた様子も表わす。落葉樹が葉を落とすのは日が短く、気温が低くなると光合成の生産量が少なくなり、葉を保つためのエネルギー量が足りなくなるためである。茶色の枝だけになった冬木の姿は寒々しさを感じさせる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〜 季語で一句 62 〜 ◆2025年『くまがわ春秋』1月号 第106号◆

2025年01月07日 23時42分11秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」

俳句大学投句欄よりお知らせ!

〜 季語で一句 62 〜

◆2025年『くまがわ春秋』1月号(第106号)が発行されました。

◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。

◆お求めは下記までご連絡下さい。

 ・info@hitoyoshi.co.jp 

 ☎ 0966-23-3759

 

永田満徳:選評・野島正則:季語説明

季語で一句(R7.1月号)

 

時雨(しぐれ)                       「冬―天文」

 

 辻井市郞

  •  

上千本しぐれてはるる下千本

【永田満徳評】

「上千本」「下千本」とは奈良県の吉野山のこと。下千本、中千本、上千本、奥千本はそれぞれの桜の見頃。標高の低い順に下千本から徐々に花を咲かせる桜の名所である土地の特色をよく描いている。

【季語の説明】

「時雨」は冬の初め、晴れていても急に雨雲が生じて、しばらく雨が降ったかと思うとすぐに止み、また降り出すということがある。本来は京都で見られる現象で、「北山時雨」などとも使われていたが、しだいに都会でも冬の通り雨を時雨と呼ぶようになった。時雨は降る様子から定めなさ、はかなさが本意とされてきた。

 

雪(ゆき)             「冬―天文」

 

藤澤迪夫

  •  

降る雪の騒吸うて黙吐きにけり

【永田満徳評】

「雪」は空気の振動を吸収してしまうので、音が遠くまで響きにくくなり、静かに感じる。「騒」と「黙」という対義語を使い、「吸う」と「吐き」と擬人化して、「雪」の音に対する物理的関係をうまく表現している。【季語の説明】

「雪」は大気中の水蒸気から生成される氷の結晶が空から落下してくる。やや高い温度では集まり、雪片をつくり、水分を含む湿った雪になる。直径1cmほどの小さなものを「粉雪」、綿状に集まったものを「牡丹雪、ぼたん雪、ぼた雪」と呼ぶなど、気温や湿度によって違う雪の性状はいくつかの呼び分けがある。

 

橇(そり)            「冬―生活」

 

辻井市郞

  •  

運命を犬橇に託して北極点

【永田満徳評】

「犬橇(のそ)」と言えば、映画『南極物語』で話題になった「犬橇」の犬のモデルになったタロとジロのことを思い起こす。「北極点」という極寒の地の過酷な運命に抗して生きる「犬橇」の犬たちの活躍をよく捉えている。

【季語の説明】

「橇」は雪や氷の上をすべらせて、人を乗せたり、荷物などの運搬をしたりするのに用いる。古くから雪国の主要な交通手段であった。普通、馬に曳かせるが、犬に曳かせるものもある。寒さに強く、持久力に優れている犬に牽かせる「犬橇」は身動きがとりにくい雪道での交通手段・荷物運搬にも活動の場を広げてきた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〜 季語で一句 61 〜 ◆2024年『くまがわ春秋』12月号◆

2024年12月05日 22時52分38秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
 
〜 季語で一句 61 〜
 
◆2024年『くまがわ春秋』12月号(第105号)が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
・info@hitoyoshi.co.jp 
 ☎ 0966-23-3759
 
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R6.12月号)
 
村芝居(むいらしばい)  「秋―生活」
 
野島正則
木戸銭は畑の野菜村歌舞伎
【永田満徳評】
「村芝居」は演じるだけでなく、舞台作りから何から何まで地元の自分たちが中心になって作り上げる。「木戸銭」(入場料)が「畑の野菜」であるという。いかにも秋の収穫後の「村芝居」らしいところがいい。
【季語の説明】
「村芝居」は地芝居、田舎芝居とも呼ばれ、農繁期を終え、労をねぎらうために村人たちが演じる芝居。秋になると、町内の各神社ごとに例祭が行われ、その前夜祭、本祭で演じられる。歌舞伎役者が避暑をかねて盛んに地方巡業した遺風で、地方に芝居熱が高まり、祭礼や盆や秋の収穫後などに素人が演じた。
 
 
嚔(くさめ)・咳(せき)   「秋―生活」
 
外波山チハル
大嚏して取り戻す視界かな
【永田満徳評】
「大嚏」は一回、数回痙攣状の吸息を行なった後、急に強い呼息を発すること。「大嚏」であればあるほど、目をつぶってしまう。嚏が収まってしまうと、目を開けてしまう。一瞬の出来事をうまく捉えている。
【季語の説明】
「嚔・咳」は冬の冷たい空気などで鼻孔が刺激をうけたときの呼吸器系の反応をいう。免疫力が低下しやすい冬は乾燥や風邪の炎症などによって喉が刺激されて咳が出ることが多い。咳には湿った咳や乾いた咳などの種類があり、咳き込む姿はいかにも辛そうに見える。「咳く(せく・しわぶく)」と詠まれたりもする。
 
 
鴨(かも)        「秋-動物」
 
佐竹康志
口軽き男と鴨を見ておりぬ
【永田満徳評】
「鴨」は早朝や夜間に草の実や水草を採りに行き、昼間は水に浮いて日向ぼこをしている。ぷかぷかと浮かんでいる「鴨」とそれを見ている「口軽き男」とが軽やかな浮遊感という点で似通っていて、俳諧味がある。
【季語の説明】
「鴨」は秋にシベリアなどの寒地から日本に渡ってきてそのまま越冬し、春また北方へ帰る。湖沼に住んで穀物を好む種類と、海を主たる居住区として魚を主食とする類に分けられる。古くから日本人に親しまれて来た。種によって、河川・湖沼や海上・江湾・荒磯などで見られる。鴨と雁はガンカモ科で、形や習性が似ている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする