第二句集『肥後の城』を読む
河西 志帆
肩書の取れて初心の桜かな
肩書のあり過ぎる人を信用しないんです。へそ曲がりだからかもしれません。
水俣やただあをあをと初夏の海
「MINAMATA」を観ました。うかつに何かを言えないような重い気持を抱えています。
一踊りして歩をすすむ阿波踊
「牛深ハイヤ節が元気だゾ」って、牛深の友がずっと前に言っていました。ハイヤ節は「ロック」ですネ。いつか必ず行ってみたいです!!
ペンシルの芯折れやすき夜学かな
マゴの親友が夜学生になりました。生き生きとして通学の“陸くん” 先生がきっと好きなんですネ。
菜種梅雨句読点なき江戸の文
古文書を読む講座に行ったものの、ところどころの「字」が見えただけでした。
月冴ゆる橋の名ごとにバス停車
きれいな橋の名前なんでしょうネ。ちなみに、我が家は橋の横にあり、橋を渡らなければ家に入れません。泥の川ではありませんが。
冬深し土間が売場の蒟蒻屋
昔は豆腐屋さんも駄菓子屋さんもでしたよ。そんな懐かしさがよみがります。
年迎ふ裏表なき阿蘇の山
この山は大きくて誰にも分けへだてがないって、言っているんですネ。阿蘇に、行きましたよ。
寒鯉や黒透くるまで動かざる
鯉は「血の道の薬」と母に買ってきた父。新聞紙に包まれて動かずにやってきました。
「負けんばい」の貼紙ふえて夏近し
これネ。読んでいて、涙がこぼれました。地が揺れて城を壊す前の年に、熊本を訪ねました。地獄温泉にも!!。
本震のあとの空白夏つばめ
でっかい城、優雅な城、何度も行ったり来たりしました。熊本の友はあったかくて!!。
昼寝覚われに目のあり手足あり
身体が無事だった~という安心感は嬉しくも悲しいと聞きました。
ぱさぱさの鶏の胸肉夏の風邪
ああ実感ですネ。鶏さんかわいそう。
争いの双方黙る扇風機
これも分かるんです。喋り倒す前に、口の中が乾くからですよネ?
熱帯夜溺るるごとく寝返りす
動かないほど静かに眠っていたらしい私。このごろはひとりベットが広い。
慰霊の碑も埋立の地も灼けてをり
情けない現実はいたる所に!!。悲しいネ。
秋うららデモの後尾に乳母車
うばぐるまを見なくなりました。「ベビーカー」なら、家にあり(笑い)
夭折にも晩年のあり春の雪
先日、「海原」(俳句誌)の新人がなくなりました。晩年があったらよかったのに。
揚雲雀古墳一つに人ひとり
本当にそうですネ。何という「贄」でしょうネ。
扇風機語り掛けたくなるときも
このたんたんした書きようが好きです。
かたつむりなにがなんでもゆくつもり
何を考えているんでしょうネ。人間なんかにゃ、わからない。
対岸はバテレンの島枇杷咲きぬ
天草にいきたしと思いながら帰りました。
ストーブを消して他人のごとき部屋
年の半分上をストーブが働きます。寒いのよ。
寒風にぼこぼこの顔してゐたり
九州の人の寒さって、本当かなあ。だったら、信州の私は「ぼっこぼこ」ですヨ~。
この町を支へし瓦礫冴返る
悲しいですネ。ガレキとは人の暮らしのものばかり。
半球はつかめぬかたち天道虫
おもしろいですネ。「天動説」なんかでも混じりそうで。
炎昼や身体遅れて坂下る
魂が遅れそうとか聞くけれど、こちらの方がよく分かります。
原城址火箭のごと降る冬の雨
行きたい、見たい原城!! 来年こそはと思っています。
ペンギンのつんのめりゆく寒さかな
彼らのあの行動が不思議でなりません。もっといいやり方はないのかと、人間のくせに思います。
釣つてすぐ魚を放つや山桜
そんな遊びはやめちまえ!!って、魚は思う。
老犬の背より息する残暑かな
家に黒ラブ(黒ラブラドールの略)がいます。肩で息しています。
大阿蘇を踏石として月昇る
この尊い山を踏めるのは月なら許されそうですネ。
今は亡き犬の首輪や日脚伸ぶ
こんな日が来るのが怖いです。従順すぎる犬って、倖せなんだろうかって、いつも思う。
戦死者に敵味方なし日の盛
モハメド・アリが言った言葉を想い出します。
夜学果て居残りの子の机拭く
定時制の先生と仲良しでした。バスケの練習を終えると、教室に灯りがついたんです。
指につく粘着テープ憂国忌
絶品の句ですネ。忘れません。
阿蘇見ゆる丘まで歩く師走かな
阿蘇は大きかった。バスから降りて、熊本の友のあとを追い、山を登ってゆきました。霧と雨で手が冷え更に寒くなってきました。今はどうなっているんでしょうか。夢のような、本当のような阿蘇でした。
句集ありがとうございます。
思いのままに書いて、楽しませて頂きました。
感謝を込めて!!