【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

100年俳句計画2月号作品12句 【百年百花】 2022年度 第三期 第三回 

2023年01月28日 22時36分07秒 | 100年俳句計画

100年俳句計画2月号作品12句掲載!

〜 【百年百花】 2022年度 第三期 第三回 〜

◉ 「百年俳句賞」選考会員に就任しました。

※ 「100年俳句計画」に4か月間に渡って、
「百年俳句賞選考会員4名による4か月間競詠」
を連載しています。

おにぎり
             永田満徳
北斎の波の逆巻き寒戻る

この町を支へし瓦礫冴返る

阿蘇越ゆる春満月を迎へけり

梅咲いてふるさとの山浮きあがる

花ふぶきときにこの世を闇にして

墓場よりをんな出でくる桜かな

制服をどさりと脱ぐや卒業子

こそばゆき地球ならんか潮干狩

睦五郎飛び損ねたる顔なるよ

こんなにもおにぎり丸し春の地震

春筍の目覚めぬままに掘られけり

春昼やぬるんぬるんと鯉の群

1954年熊本県生まれ。「俳句大学」代表。
句集『寒祭』『肥後の城』。「文學の森」ZOOM俳句教室講師。

・ご購読頂ければ幸いです。
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電話 089-906-0694
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〜Facebook「Haiku Column」〜 ☆【俳句界】2023年2月号☆

2023年01月28日 21時30分01秒 | 月刊誌「俳句界」

俳句大学国際俳句学部よりお知らせ!

〜Facebook「Haiku Column〜
☆【俳句界】2023年2月号☆
 
◆俳句総合誌『俳句界』2023年2月号が発行されました。
◆俳句大学 〔Haiku Column〕のHAIKUから選句・選評した句を掲載しています。また、「俳句界」2019年1月号から毎月連載しています。
※ 2021年の『俳句界』10月号から、優秀な作品が揃って来ましたので、1ページ増えて、3ページに渡って掲載しました。
◆R 2・12月号から作者の国名を入れています。人種、国籍を問わず投句を受け入れていることから、その「人道主義的」スタンスが広く支持されています。
◆ 向瀬美音氏は日本語訳の改善に着手している。五七五の17音の和訳は、HAIKUをただ端に日本の俳句の五七五の17音にしただけではなく、原句のHAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に一歩近づくための有効な手立てであることを強調しておきたい。
◆例えば、ある日本の国際俳句大会で「飢えた難民の/前に口元に差し出す/マイクロフォン一本」のような三行書きにしただけで散文的な国際俳句が大会大賞、或いはある国際俳句協会のコンクールで「古い振り子時計―/蜘蛛の巣だらけになっている/祖父のおとぎ話」のような切れがあっても三段切れで冗漫な国際俳句が特選を受賞しているように、三行書きの国際俳句が標準になっていることに危惧を覚えて、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆2017年7月にフランス語圏、イタリア語圏、英語圏の55人が参加する機関紙「HAIKU」を発行しました。12月20日発行の2号では91人が参加しました。また、5月31日発行の3号では96人が参加し、320ページを数えます。さらに、12月26日発行の4号では112人が参加し、500ページを数えます。そして5号では150人が参加して、550ページを越えて、8月1日に出版しました。そして、6号を2020年12月に出版しました。また、2020年3月1日には「国際歳時記」の第1段として【春】、2022年6月には【冬・新年】を出版しました。「HAIKU」6号と「歳時記」春・冬・新年は原句の内容を損なうことなく五七五に訳出しています。
◆総合俳句雑誌「俳句界」2118年12月号(文學の森)の特集に「〔Haiku Column〕の取り組み」について」が3頁に渡って書いています。
◆「華文俳句」に於いては、華文二行俳句コンテストを行い、華文圏に広がりを見せて、遂に、2018年11月1日にニ行俳句の合同句集『華文俳句選』が発行されました。
◆ 二行俳句の個人句集では、洪郁芬氏が『渺光乃律』(2019、10)を〔華文俳句叢書1〕として、郭至卿氏が『凝光初現』(2019、10)を〔華文俳句叢書2〕として、次々に刊行している。さらに、全季節を網羅した「華文俳句歳事記」が2020年11月には刊行されて、これで季重なりの問題が解消されるでしょう。
◆さらに、2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載している。
◆『俳句界』2020年3月号の特別レポートにおいて、熊本大学で行われたラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。
◆どうぞご理解ご支援をお願いします。

The February issue of 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haiku Colum of Haiku University [Monthly best Haikus]〜
◆the February issue of HAIKUKAI俳句界 has just been published. 
◆It contains the best haikus of the month selected by M. Nagata. 
◆according to the plan, we will continue to publish 2 lines haikus with kire and toriawase.

Février aout de 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haikus du mois de Haiku Colum de Haiku Universite〜
◆ Février aout de HAIKUKAI俳句界 vient d'etre publie.
◆il contient les meilleurs haikus du mois selectionnes par M. Nagata. 
◆Selon ce plan nous allons continuer a publier des haikus en deux lignes avec kire et toriawase.

永田満徳選評・向瀬美音選訳(仏・伊)・中野千秋訳(英)

【今月の秀句(monthly excellent Haikus)】  
(Facebook「Haiku Column」より)


シウ ホング‐イレーヌ タン (インドネシア)

白い紙黒いインクや蕪村の忌 
〔永田満徳評〕
「蕪村忌」は与謝蕪村の命日で、12月25日。「白い紙」に「黒いインク」で物を書くか、描くか、どちらかの情景であろう。〈菜の花や月は東に日は西に〉という蕪村の句風に似て、簡潔な詠みである。「白」と「黒」の水墨画的な対比とともに、親しみやすい画風で、俳画の創始者でもある与謝蕪村をうまく描いている。
 
Siu Hong-Irene Tan(Indonesia)

white paper and black ink
Buson death anniversary
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
The 'Buson Memorial' is the anniversary of Yosa Buson's death, 25 December. The scene may be of writing or drawing something with black ink on white paper. The poem is simple, similar to Buson's haiku style, "Rape blossoms, the moon is to the east, the sun is to the west". The contrast between the 'white' and 'black' ink painting styles, as well as the familiar painting style, successfully depicts Yosa Buson, who was also the founder of haiga.
 

アンヌ‐マリ ジュベール‐ガヤール(フランス)

寒月やこの拒絶はなぜだらう 
〔永田満徳評〕
「寒月」は冬の夜空の空気が澄みきって、玲瓏と冴えてみえる月。特別悪いことをしたことがないのに、相手にされないことがある。身に覚えのない「拒絶」にあって、嫌な思いをしたことはだれしも経験があること。冴え冴えとした「寒月」という季語との取合せによって、人間関係の不可解で不条理な場面をうまく捉えている。
 
Anne-Marie Joubert-Gaillard(France)

lune d'hiver
pourquoi ce rejet ?
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
La "lune froide" est la lune où l'air du ciel nocturne d'hiver est clair et semble lumineux et brillant. Il arrive que l'on ne vous prenne pas au sérieux, même si vous n'avez rien fait de mal. Nous avons tous vécu un rejet dont nous ne nous souvenons pas, et nous nous sommes tous sentis mal à l'aise. L'association du mot saisonnier "cold moon" (lune froide) et du mot lumineux et brillant "cold moon" (lune froide) rend bien les scènes inexplicables et absurdes des relations humaines.
 

キム オルムタック ゴメス(オランダ)

輝ける海の真珠を持ちて牡蠣 
〔永田満徳評〕
「牡蠣」は別名「海のミルク」と呼ばれ、牛乳のように栄養素をバランスよく含むことで知られている。牡蠣のような、内側がキラキラした二枚貝は真珠を作り出すことができるという。「輝ける海」の措辞がよく、冬日にかがやく、あるいは冬の月にひかる海の「真珠」を身の内に育てるという発想は詩的で、実に美しい。
 
Kim Olmtak Gomes(Holland)

oyster
blinking sea pearls
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
'Oysters', also known as 'milk of the sea', are known to contain a balance of nutrients like milk. Oyster-like bivalves with a sparkling interior are said to be capable of producing pearls. The phrase 'the shining sea' is well worded, and the idea of cultivating within oneself the 'pearls' of the sea, glistening in the winter sun or shining in the winter moon, is poetic and truly beautiful.

【今月の季語(Kigo of this month】     
(Facebook「Haiku Column」より) 

【 立冬 りっとう rittou / the first day of winter / premier jour de l’hiver 】
ナニ マリアニ(オーストラリア)

立冬や雀の声の新しく 
Nani Mariani (Australia)

first day of winter
the chirping of sparrows is not like yesterday

ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)

立冬や角のパン屋の閉じられて 
Nuky Kristijno(Indonesia)

first day of winter
the bakery on the corner is closed
 
【 小春 こはる koharu / Indian summer / été de la Saint- Marin 】
ザンザミ イスマイル(インドネシア) 

ベストセラーの本とお茶ある小春かな 
Zamzami Ismail(Indonesia)

Indian summer
bestselling book and hot tea on the table

タンポポ  亜仁寿(インドネシア)

小春日や老バリスタの珈琲店 
タンポポ  亜仁寿(Indonesia)

Indian summer -
smiling old barista at coffee shop
 
【 初雪 はつゆき hatsuyuki / first snow / premiére neige 】
ローザ マリア ディ サルバトーレ(イタリア)

初雪や幸せさうな赤き頬 
Rosa Maria Di Salvatore(Italy)

first snow
red cheeks and happiness
prima neve
guance rosse e felicità

キム オルムタック ゴメス(オランダ)

初雪や犬は尻尾を振りまはす 
Kim Olmtak Gomes (Holland)

first snow
the joy in my dog's wagging tail
 
【 波の花 なみのはな naminohana / foam of the wave / écume des vagues 】
アンヌ‐マリ ジュベール‐ガヤール(フランス)

波の花日はどんどん過ぎてゆく
Anne-Marie Joubert-Gaillard  (France)
● 
les jours s’ajoutent aux jours-
reste l’écume des vagues

ナニ マリアニ(オーストラリア)

留まらぬ人生であり波の花
Nani Mariani(Australia)

foam of the wave
the story of a life that keeps moving
 
【 クリスマス くりすます kurisumasu / Christmas / Noel 】
Isni Heryanto(Indonesia)

boy out of the slide at the mall
Christmas
イシ ヘルヤント(インドネシア)

クリスマス子が飛び出して滑り台 

ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)

クリスマスしかと抱きしむる貯金箱 
Nuky Kristijno(Indonesia)

Christmas
holding her piggy bank dearly
 
【 芭蕉忌 ばしょうき bashoki / Basho death anniversary / anniversaire de la mort de BASHO 】
キム オルムタック ゴメス(オランダ)

芭蕉忌や俳句匂はす彼の筆
Kim Olmtak Gomes (Holland)

Basho's death anniversary
haiku memories from his ink brush

チュイリエ フランソワーズ(フランス)

芭蕉忌や心と俳句は一つなり 
Thuillier Françoise(France)

anniversaire de la mort de Bashô
ils écrivent d'un même coeur et partagent leurs haiku
 
【冬景色、ふゆげしき、fuyugeshiki / winter landscape , winter scene / paysage d'hiver 】
クローディア ロマナ コド(フランス)

冬景色ホットココアと開いた本  
Claudia Ramona Codau(France)

paysage d’hiver -
du chocolat chaud et un livre ouvert

ミレラ ブライレーン(ルーマニア)

冬景色すべての色はひとつへと
Mirela Brailean(Romania) 

winter landscape -
all colors in one
 
【 落葉 おちば ochiba / fallen leaves / feuilles morte 】
ジーナ ボナセーラ(イタリア)

落葉舞ふカラフルな縞に風の吹き
Gina Bonasera(Italy)

foglie morte-
su strisce colorate alita il vento

マリン ラダ(ルーマニア)

落葉の絨毯日輪はいつも金の糸 
Marin RADA (Romania)

tapis de feuilles -
le soleil brille toujours fils d'or

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Facebook「華文俳句社」 〜【俳句界】2023.2月号〜

2023年01月28日 19時53分19秒 | 月刊誌「俳句界」

俳句大学国際俳句学部!

Facebook「華文俳句社」
〜【俳句界】2023.2月号〜

◆2023年『俳句界』2月号が発行されました。
◆華文圏に俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載しています。
◆どうぞご理解とご支援をお願いします。

俳句大學國際俳句學部的通知!

~Facebook 「華文俳句社」Kabun Haiku  2023・2〜

◆2023年『俳句界』2月號已出版。
◆於華文圏提倡包含俳句的基礎「一個切」和「兩項對照組合」的二行俳句。
◆請各位多多支持指教。

華文俳句【俳句界】2023,2月号
永田満徳選評・洪郁芬選訳
 
冬暖
擦背的小曾孫

鐵人
〔永田満徳評論〕
「冬暖」是一個季語,表達了冬天的溫暖和平靜,讓你忘記寒冷,讓你感受到冬天的祝福。為了讓祖父感覺好一些,小曾孫正在為他擦背。孫子或小曾孫都是祖父心頭的一塊肉。此刻曾孫為他搓背,並有冬日的溫暖相扶,他沉浸在幸福中。
 
冬暖か背中をさするひ孫かな

鐵人
〔永田満徳評〕
「冬暖か」は寒さを忘れるような日の暖かさ、穏やかさを言い、冬の恵みを感じさせる季語。「ひ孫」が元気にしたい、良くしてあげたい気持で祖父の背中をさすっている情景だろう。孫やひ孫という存在は目の中に入れても痛くないほど、かわいくてたまらないもの。ひ孫から背をさすられ、冬の暖かさも手伝って、幸せな気分に浸っているところがうまく描き出されている。
 
 

中藥行玻璃窗的廣告

立冬
明月
〔永田満徳評論〕
「立冬」是秋天的尾聲。天氣雖然尚未嚴寒,但北風呼嘯,初有入冬的跡象。「藥屋」在作者的原文裡是「中藥行」。例如葛根湯或桂枝湯等,都是治療感冒的草藥。隨著冬天來臨,中藥行的「窗戶」玻璃上貼了感冒藥等「廣告」。作者看到廣告,便知道冬天來了,這一點讓我感同身受。
 
薬屋の窓に広告冬立てり

明月
〔永田満徳評〕
「立冬」は秋が極まり、寒さはそれほど厳しくないが、心なしか吹く風も冷たく、冬の気配が立ち始める日。「薬屋」は原句では「漢方薬の店」。風邪対策の漢方薬と言えば葛根湯・桂枝湯などがある。冬を迎えて、風邪薬などの「広告」が「窓」のガラスに貼り出されている風景であろう。薬の広告を目にしたことによって、冬の到来を覚えている点で共感できる。
 
 

蹲後巷刷牙的芳鄰
冬暖

胡同
〔永田満徳評論〕
踏入台灣的「後巷」,如畫的懷舊風景與復古的都市風光交相輝映。在狹窄的巷落裡,可以找到許多老牌的店鋪,也是逛街的好去處。暴露在風中的後巷,一大清早就有人在刷牙。這真是冬暖中的情景!它成功地捕捉了一個尋常小鎮的新的一天。
 
路地裏の歯磨く人や冬暖か

胡同
〔永田満徳評〕
台湾の「路地裏」に一歩足を踏み入れると、レトロな街並みが広がっていて、懐かしく、絵になる風景に出会うことができる。路地裏で見かける「巷」(店) は古くから営業しているところも多く、散策を楽しむ場所でもある。吹きさらしの「路地裏」で、早朝歯磨きをしている姿は「冬暖か」ならでの情景である。庶民的な裏町の一日の始まりをうまく切り取っている。

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永田満徳句集 『肥後の城』 物江里人 句集・俳書存門 俳誌「雲取」NO.280

2023年01月20日 02時19分06秒 | 第二句集『肥後の城』

俳誌「雲取」NO.280(通巻328)2023年1・2月号より

物江里人 句集・俳書存門

 

永田満徳句集

『肥後の城』           (文學の森刊)

 作者は昭和二十九年生まれ。昭和六十二年 「未来図」

入会、平成八年同人。 平成七年 「未来図」新人賞、令和

元年 「未来図賞」受賞。 平成二十四年から令和二年まで

の三四四句を収めた第二句集。

  阿蘇越ゆる春満月を迎へけり

  不知火や太古の舟の見えてきし

  左義長の余熱に力ありにけり

  教へ子に白髪のありぬ秋初め

  新涼や妻へ真珠のイヤリング

 大景を詠い上げた一句目の他、阿蘇を詠んだ作品多数。

己を育んでくれた家郷への思いは深い。二句目、まつろわ

ぬ民への幻想。三句目は作者の昂ぶりの余韻でもあろう。

四句目、月日の速さへの感慨。五句目は奥様の誕生日か。

  骨といふ骨の響くや朱夏の地震

  本震のあとの空白夏つばめ

  一夜にて全市水没梅雨激し

 平成二十八年四月熊本地震発生。 一、二句目からは作

者の衝撃の大きさが伝わってくる。令和二年七月には故

郷人吉市が豪雨に襲われた(三句目)。集中 「むごかぞ

と兄の一言梅雨出水」は痛切な叫びだ。

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柴田奈美句集『イニシャル』一句鑑賞 

2023年01月19日 08時16分20秒 | 月刊「俳壇」

月刊「俳壇」2023年1月号(転載許可済)

ブックレビュー

柴田奈美句集『イニシャル』一句鑑賞 

 

どんぐりの降る降る鬼は十数ふ

 

 鬼ごっこの変種の一つ「だるまさんがころんだ」をして

いる場面であろう。「鬼は十数ふ」とは「だるまさんがこ

ろんだ」の音数が十拍になることを指す。「どんぐり」が

降りしきるなかに、遊びに余念のない子ども達の様子が描

かれていて、ほほえましい。自選十二句にも選ばれている

掲句が魅力的なのは、「十数ふ」という行為のなかで、異

界へと誘い込まれる感覚がするからである。「鬼」の句の

ほかに、「雪女」の句も多く、「盆踊影の一つは亡者なり」

と「亡者」まで詠み込まれていて、異界の世界が広がって

いる。集中の「桜蘂声のやさしき鬼の来る」の鬼や「間引

かれし子を懐に雪女」の雪女は異形の者のおどろおどろし

さがない。「形は鬼なれ共、心は人なるがゆへに」という

人間的な心を捨てかねている世阿弥の「鬼」の能に近く、

裏切られても、命を取らずに去り、約束の破棄を許してい

る小泉八雲の「雪女」に同じである。異界への嗜好を示し、

日本人の異界への親近性を表現する句の数々は、句集『イ

ニシャル』の特色の一つであると言ってもよい。

                     永田満徳

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