〜世界発:本格的「二行俳句」発行〜
『渺光乃律』
二行俳句の個人句集(華文俳句叢書1)
洪郁芬著 華文俳句集
発行2019.10
序一 永田満徳 日文
日本の「俳句大学」の国際俳句学部が提唱している「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句の華文圏初めての個人句集『渺光之律』が台湾で出版されたことは大変喜ばしいことである。
俳句は日本の伝統的な詩の一つである。今では世界各地でそれぞれの言葉で書かれている国際的な文学形式である。しかし、三行書きにしただけの俳句は形式のみで、俳句の美学を表現しているとは思えない。それは俳句の型と俳句の特色に対する共通認識がないからである。
そこで、日本俳句の大切な美学である「切れ」と「取り合わせ」の二行書きの俳句を提唱し、華文圏での俳句の発展に寄与するため、私は顧問および作者として洪郁芬、郭至卿、趙紹球、吳衛峰と共に2018年12月に台北で《華文俳句選》を出版した。さらに2018年12月4日に創立した「華文俳句社」の顧問になり、華文俳句のさらなる進展を図ってきた。
「華文俳句社」の社長である洪郁芬氏が句集『渺光之律』を出版することは「華文俳句社」の顧問として楽しみである。なぜならば、この句集によって、「切れ一つ」と「取り合わせ」の俳句の美学に対する理解が深まり、絶句(漢詩)、現代詩、短詩、散文詩などの様々なジャンルを持つ華文詩の中で、華文俳句の定着と広まりがより一層華文詩界を豊かにすることが期待されるからである。
きちきちを飛ばして進む草千里
掲句は第二回「二百十日」俳句大会に入賞した句である。日本の専門俳人の中で入賞したことは洪氏の日本語能力の高さを示すばかりではなく、俳句においても並々ならぬ力量を持っていることを証明した。
最近では、日本の俳句雑誌「火神」に参加し、積極的に投句している。「火神」65号(平成31年春号)で、今村潤子主宰は「ちつぽけな光の調べ草の露」を選び、「『草の露』の栗粒のような光を『ちつぽけ』といい、更にそれが調べをなしているというところに作者の感性の細やかさがある。」と評している。
囀りや呼ばれて出づる渡し船
硝子瓶蓋をひねれば夏近し
秋うらら合図のやうに開くドア
これらの句は内容の雰囲気といい、季語との取り合わせといい、日本の俳句におさおさ劣らない。洪氏は日本の俳壇でも十分通用できると言っても過言ではない。
恋の果て白蟻の羽黒く落つ
初読の新約聖書愛の文字
洪俳句のみずみずしい青春性が感じられる句で、作者の俳句世界の一面を形作っている。
ところで、「恋の果て」と同様に「たんぽぽの絮草原の果の夢」とあるように、「果て」の文字を使った句がいくつも出てくる。
山道の果ての果てにも桜咲く
初旅や山路の果ての青き海
「果て」の句には「果て」なるものへの嗜好が読み取れる。この「果て」への嗜好が「向こう」、あるいは「あの世」への志向へと繋がっていると言ってよい。
うろこ雲向こうに地球あるやうな
もつれ合ふあの世とこの世冬の靄
この二句からも窺われるのは、洪氏の独特な精神世界、つまり俳句世界が描き出されていることである。この宗教的とでも言える彼岸意識は洪俳句により深みを与えていて、洪俳句の特色をなすものである。
最後に共鳴句を挙げておきたい。
あの庭と同じ落花のしきりなり
ブランコの高みで捕らふ幼き日
全力の軽やかさなり胡蝶飛ぶ
皿を割る子供の喧嘩大暑かな
令和元年七月吉日
永田満徳
日本俳句協会副会長、日本俳句大学学長、俳人
永田満徳氏プロフィール:
日本俳句協会副会長、俳人協会熊本県支部長、俳人協会幹事、「未来図」同人、「火神」編集長。恩師の紹介で俳句を始めて30年、現在に至る。
文学研究では三島由紀夫や夏目漱石の俳句などの論考がある。
句集に『寒祭』(文學の森) 共著に『漱石熊本百句』(創風出版)『新くまもと歳時記』(熊本日日新聞社)。
書名:渺光之律
副標題:華文俳句集
Tune of the Tiny Light
Chinese Haiku Anthology
洪郁芬
Yuhfen Hong
序一 永田満徳 中文
相同於日本「俳句大學」的國際學部,以提倡「切」與「兩項對照組合」的二行華文俳句個人詩集「渺光之律」的台灣出版是值得慶賀的。
俳句原是日本的傳統詩型之一,現已跨越日文藩籬,在世界各地以不同的語言書寫,儼然成為國際性的文學型式。然而,綜觀國際俳句的實況便可以理解,大部分的國際俳句都寫成三行,卻無表現俳句美學的實質內容。這是因為國際俳句對於俳句的形式與特色沒有達成共識所致。
為了於華文圈提倡俳句的本質「切」與「兩項對照組合」,並推廣俳句,我擔當顧問及作者參與洪郁芬、郭至卿、趙紹球、吳衛峰於2018年12月《華文俳句選》的出版。除此之外,也擔當成立於2018年12月4日的「華文俳句社」的顧問,力圖華文俳句的推廣與發展。
身為「華文俳句社」的顧問,我相當樂見華文俳句社社長洪郁芬出版《渺光之律》俳句集。希望此俳句集的出版能讓讀者更理解「切」與「兩項對照組合」的俳句美學,並期望華文俳句能與古典詩、現代詩、小詩、散文詩等齊聚一堂共同豐富華文詩壇。
踢飛著蚱蜢前進
草千里
這是洪郁芬入選日本第二回「二百十日」俳句大会的俳句。能於專業的日本俳人間領獎,不只證明她日文能力之高,也說明了她具有不同凡響的俳句藝術。
近來洪郁芬刊登日本「火神」俳句雜誌,並於「火神」65号(平成31年春号)被火神主宰今村潤子評選「渺光之律╲草露」。今村氏如此評道:「將草露粟米般的光以『渺』來形容,並看見渺光中包含了音律。由此可見作者獨特的觀察力與細膩的情感。」
鳥囀
喚來行舟渡輪
扭開玻璃瓶鋁蓋
臨夏
秋日麗
門示意即開
以上這幾首俳句,無論是在內容,或是在季語的兩項對照組合使用上,完全不亞於日本正規俳句。我敢斷言,洪郁芬完全符合能在日本俳句界發展的條件。
愛之盡
白蟻的黑翅飄落
歲初讀新約聖經
愛的文字
這幾首俳句使我們感受洪郁芬花樣年華般的青春,是構成她俳句的一個特色。除了愛之「盡」外,「蒲公英棉絮╲夢裡草原的盡頭」等,句集裡出現多次的「盡頭」,如:
山路盡頭之盡頭
櫻花開
回望山路盡頭蔚藍的海
歲之行始
對於「盡頭」的喜好和追求,也可以說相通於對「那方」或「彼方」,甚至是對於「結束後的世界」有濃厚的興趣和傾向。
魚鱗雲
地球彷彿那方
糾纏的來世今生
冬靄
從這兩首俳句,我們可窺見洪郁芬獨特的精神世界,藉由她的俳句表達。宗教信仰或是對於來世的觀感,也可說是她俳句的一個特色。
最後列舉幾首我心所慕的俳句:
庭戶如我
落花無數
鞦韆的高點捕獲
童年
盡全力的輕巧
蝴蝶飛
孩童爭吵摔碗
大暑
令和元年七月吉日
永田満徳
日本俳句協會副會長、日本俳句大學校長、俳人
永田満徳先生簡歷:
日本俳句協會副會長、俳人協會熊本縣分部長、日本俳人協會幹事、雜誌《未來圖》同人、雜誌《火神》總編輯。由恩師引領開始創作俳句30年至今。
在文學研究方面,著有對三島由紀夫和夏目漱石俳句的論考。
著有《寒祭》(文學の森),《漱石熊本百句》(合著,創風出版)、《新くまもと歳時記》(合著,熊本日日新聞社)。