【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

パンデミック時代における国際俳句の苦闘と想像力 2020·1―2021·1

2024年02月07日 10時04分05秒 | 国際俳句

外国人には日本の俳句は理解できないという常識は覆る!

 

〜 常識は常識であって、真理ではない 〜

 〜 常識を覆してこそ、進歩がある 〜

 

【季語】について

ナディン レオン(フランス)

季語の機能は俳句を普遍的な時間、すなわち万人に共有する時間に位置づける。

 

※この本によって、外国では日本のような明確な四季の区別がないから季語のある俳句は作れない、あるいは季語のあるhaikusを作ることを提案するのは日本の文化の押し付けであるという先入観は覆る。

・投句者:インドネシア・カメルーン=熱帯 シリア・アルジェリア=乾燥帯など。

 

【取り合わせ】について

ジャン・ルイ シャルトラン(フランス)

「取り合わせ」は、2つの表現が間接的で微妙にリンクしていることで成立している。

 

ナディン レオン(フランス)

この2つの異なる、一見無関係に見える表現の組み合わせ(取り合わせ=注・永田)は、物語的な統一性はないものの、語られないものに大きな共鳴を与え、それぞれの行を他の行に照らして解釈するように誘います。

 

※ なお、現在、国際俳句は、散文的な三行書きのhaikusがほとんどで、「取り合わせ」で作るという意識が薄い。

※しかし、Facebook「Haiku Column」の「週刊一句鑑賞」集であるこの本では、「取り合わせ」が俳句の本質であるという考えで 実践している。

※それゆえに、日本の俳人でさえ難しい「取り合わせ」のことをナディン レオンを始め、多くのメンバーがよく理解しているのである。

 

【一物仕立て】について

ナディン レオン(フランス)

一物仕立て俳句があまり一般的でないのは、ルールが難しいからではなく、その成功がむしろ稀であるからです。一物仕立て俳句の成功は、まるで恩寵に触れたようなものです!

 

『パンデミック時代における国際俳句の苦闘と想像力 2020·1―2021·1』

向瀬 美音 (企画・編集・翻訳)  2024年2月・コールサック社 2,750 税込

・多くの方にお読み頂ければ幸いです。(文責・永田満徳)

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平和願いしHAIKU 黛さん企画、世界から詠み人

2022年05月29日 22時55分49秒 | 国際俳句

中日新聞(2022年5月29日 05時05分 )

〜 平和願いしHAIKU 黛さん企画、世界から詠み人 〜

◆ 「Facebook「Haiku Column」」では、月刊「俳句界」5月号・6月号において、いち早く〈ウクライナ特集〉をしているが、「中日新聞」も黛まどか氏企画による「戦争を題材にした俳句」を掲載した。
◆平和への願いとともに、「伝達性」と「記録性」、「慰撫の力」がある俳句の国際化の絶好の機会であるので、マスコミから発信されることはいいことである。

◆ なお、HAIKUという点では、二行Haikuの「Haiku Column」と比べて、三行書きの欠点である、冗漫なところはあるが、切れ、あるいは取り合せがあり、何よりもKigoのあるhaikuが常識になっていることが分かり、有益な内容になっている。

記事(抜粋)
 戦争を題材にした俳句は、ロシアの軍事侵攻後の3月19日にインターネットで「Haiku for Peace」と銘打つ企画を始め、国内外から募集。今月27日までに集まった475句は「戦争は絶対にいけない」(黛さん)との思いに呼応し、35カ国の10言語にわたる。
 黛さんは短詩型文学の俳句について「全てを言い切らず余白にあるものへの想像力をかきたてる。世界の人々が、遠い戦争の悲惨を自分のこととして受け止めるよすがになり得る」と強調。平和を願い、世界の人々が参加するオンライン句会を開きたい考えだ。
(林啓太)

https://www.chunichi.co.jp/amp/article/473899

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Haiku Column(俳句大学国際俳句学部投句欄)よりのご報告!

2021年01月05日 11時08分56秒 | 国際俳句

Haiku Column(俳句大学国際俳句学部投句欄)よりのご報告!

 

〜Today' KIGO〜

 

●芭蕉庵国際英語俳句大会選者・藤田直子(俳人・「秋麗」主宰・俳人協会評議員)氏に貴重なコメントを頂きました。

 

①私が◎を付けたいと思った句は、

初雪や柔き呼吸の新生児

これは取り合わせの句としていいと思いました。

 

君の居ぬ去年と同じ聖樹かな

この二句には心が(詩情が)あると思います。

 

②△を付けてもよいと思った句は、

 

元旦やコーヒーに浮く白き泡

糸杉の景色の先の初御空

絵手紙に新年の色集めたる

 

※今後を楽しみにさせていただきます。

 

◆Haiku Column(俳句大学国際俳句学部投句欄)投句された「Today' KIGO」のうちで、最もいい句を紹介します。

◆「Today' KIGO」は向瀬美音氏がそのHaiku Columnから取り出して、向瀬美音氏はフランス語、イタリア語、中野千秋氏は英語を直訳し、それを元にして、それぞれが五七五の十七音に和訳した句を私こと永田満徳が評価する投稿欄です。

◆KIGO(季語)は日本独特なもので、季節のない国の人々が、KIGO(季語)のあるHAIKUを創ることが困難だという常識は覆りつつあり、季節のない国からもKIGOのあるHAIKUが多く投句されてきており、俳句は「KIGOの詩」という認識が世界で広まっています。

◆国際俳句の「7つの規則」と「KIGO(季語)」の提供により、フランス語を例に言えば、最大で15シラブル以内のHAIKUが増えてきて、五七五の十七音の和訳にすることができます。

◆ 五七五の十七音の和訳は、HAIKUをただ単に日本の俳句の五七五の十七音に当てはめただけではなく、HAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に一歩近づくための有効な手立てであることを強調しておきます。

◆ 二つのパターンの二行俳句を提唱しています。

・この二つのパターンの二行俳句によって、KIGO(季語)の重なりがなくなります。

・そればかりではなく、一行目がKIGO(季語)で固定されるために、二行目がシンプルになってきます。

・このように、メンバーのHAIKUが日本の俳句の本質である「切れ」と「取合せ」のある句になってきています。

〔魔法の取合わせ〕

・一行目はKIGO(季語)と二行目はKIGO(季語)とは関係のない言葉。

・または一行目はKIGO(季語)とは関係のない言葉と二行目はKIGO(季語)。

 

 

1月4日

 

【初鏡】

the first makeup -

a lipstick a little redder

  •  

Mirela Brailean

口紅をすこし紅目に初鏡  千秋

her thin lips and big eyes

first make up

  •  

Mafizuddin Chowdhury

大きな目薄い唇初鏡  千秋

first mirror -

I see myself in your eyes

  •  

Mirela Brailean

君の目にわれの映りて初鏡  千秋

first mirror

looking at the face of my mother

ます

Kimberly Olmtak

初鏡そこには母の顔がある  千秋

half of his soul is still in isolation room

first mirror

  •  

Zamzami Ismail

魂の半分はここ初鏡  千秋

first mirror

traces of tears on my smile

  •  

In Ismael

微笑みに涙の筋や初鏡  千秋

 

 

【冬の泉】

your love poured out drop by drop-

winter fountain

 

il tuo amore elargito goccia a goccia-

fontana invernale

  •  

Angela Giordano

冬の泉一滴ごとに注ぐ愛  千秋

fântână de iarnă -

apele tăcute ale cerului

 

winter fountain -

the silent waters of the sky

  •  

Sebastian Ciortea

天の水たたえて冬の泉かな  千秋

winter fountain

making a wish to become a bird

  •  

Réka Reka Nyitrai

ふと鳥になりたき冬の泉かな  千秋

 

 

1月3日

 

【元旦】

元旦や子どもの笑ひ聞こえたる 美音

premier de l'an--

le rire des enfants

  •  

Choupie Moysan

元旦やコーヒーに浮く白き泡 美音

Premier jour de l'année ~

Une mousse flottante sur mon café.

  •  

Sonia Ben Ammar

陽は照らす松の天辺大旦  美音

premier jour de l’an

allumée par l’aube la cime des pins

  •  

Francoise Maurice

元旦や子供のための色鉛筆  美音

premier jour de l'année -

crayons de couleur pour mon enfant 

  •  

Marin Rada

元旦や陰と陽のハーモニー 美音

Premier jour de l'année

l'eau l'air harmonie du yin et du yang

  •  

Isabelle Carvalho Teles

capodanno-

si potesse ricominciare!

 

New Year-

we could start again!

  •  

Stefania Andreoni

年明くる再出発のできたなら  千秋

New Year's Day

a desert rose blossoms

  •  

~ Christina Chin

元日や砂漠に薔薇の咲くごとく  千秋

let's start with the right foot

New Year's Day

  •  

Zamzami Ismail

右足から初めてみやうお元日  千秋

 

 

【読初】

読初世界合同句集かな 美音

Anne-Marie Joubert-Gaillard

  •  

anthologie de haijins du monde-

première lecture de l’an

first reading -

the fresh smell of ink on the pages

  •  

Mirela Brailean

読初紙のインクの匂ひけり  千秋

読初息子の願ひなりにけり 美音

Minuit première lecture

les vœux de mon fils

  •  

Isabelle Carvalho Teles

 

 

【大晦日】

蝶々の影天井に大晦日 美音

Marin Rada

  •  

sfârșit de an -

umbra unui fluture pe tavan

 

la fin de l'année -

l'ombre d'un papillon au plafond

大晦日苦悩の刻の最後かな 美音

Olfa Kchouk Bouhadida

  •  

le premier jour de l'année ~

la fin d'une angoisse aux moments difficiles

 

 

【年の暮】

end of the year

and my last sip of sake

  •  

Zaya youkhanna

年の暮酒の最後のひと啜り  千秋

 

1月2日

 

【新年】

New Year

I really miss my family

  •  

Nani Mariani

年明くる家族の皆の懐かしく  千秋

New Years Day

one more step forward

  •  

Nani Mariani

元日や前進のためもう一歩 千秋

a blank sheet of white paper

new year's day

  •  

Probir Gupta

まつさらな白紙のやうにお元日  千秋

Florence Mühlebach

  •  

Si loin de mes parents ~

Si fraîche leur lettre pour le Nouvel An

 

Far away from my parents~

So fresh their letter for New Year

両親より新年祝ふ手紙受く  千秋

ページ捲る前に空見る年新た  美音

Fabiola Marlah

  •  

jour de l'an ~

j'observe le ciel avant de tourner la page

一言はしじまを壊す年新た 美音

Fabiola Marlah

  •  

nouvelle année ~

un mot pour briser ce silence

年迎ふ新たな太陽現れて 美音

Gisèle Evrot

  •  

jour de l'an ~

un nouveau soleil vient d'éclore

誰もゐぬシャンゼリゼ2021大旦 美音

Bernadette Couenne

  •  

Champs Elysées déserts

premier de l'an 2021

 

 

【初空】

first sky of the year -

looking with hope to the future

  •  

Mirela Brailean

初空に希望の未来広がりぬ  千秋

first sky of the year -

I entrust all my hopes

  •  

Mirela Brailean

初空やすべての希望託しつつ  千秋

the first sky of the year

beautiful scenery adorns the cypress tree

  •  

Nani Mariani

糸杉の景色の先の初御空  千秋

初空やぬくき君の手肌に触れ 美音

Choupie Moysan

  •  

soleil froid du nouvel an--

ta paume aussi chaude contre ma peau

初空や雲には雲のミュージック 美音

Corinne P-Phoenix

  •  

premier ciel de l'année

une note sur chaque nuage

 

 

【年賀状】

年賀状薔薇と「愛してる」と書きて 美音

Anne-Marie Joubert-Gaillard

  •  

carte du nouvel an -

des roses et un je t’aime

年賀状手書きの言葉の温かさ 美音

Cudillero Plume

  •  

carte du nouvel an

la chaleur des mots écrits à la main

 

new year's card

the warmth of handwritten words

In Ismael

  •  

isolation room

open new year's cards one by one

賀状のカードを開く隔離室  千秋

new year's greeting card...

writing a haiku to welcome it

  •  

Rosa Maria Di Salvatore

賀状来てしみじみ一句書いている  千秋

carte du nouvel an

la chaleur des mots écrits à la main

 

new year's card

the warmth of handwritten words

  •  

Cudillero Plume

手書きには温もりのあり賀状来る  千秋

 

 

【初電話】

first telephone -

my finger hesitate next to your name

  •  

Mirela Brailean

指先にためらひのあり初電話  千秋

first phone -

the warm voice of my mother

  •  

Mirela Brailean

その声の温かき母初電話  千秋

premier téléphone

le combiné porte-parole à l'oreille

 

first phone

the speakerphone to the ear

  •  

Cudillero Plume

初電話耳につけたるスピーカー  千秋

君の声大西洋越え初電話 美音

primul telefon -

vocea prietenei mele peste ocean...

  •  

Larbi Limi

 

 

【大晦日】

last day of the year

returning of postponed wishes

  •  

Adoni Cizar

大晦日また向き合つて願ひごと  千秋

子は鳥を追ひに近づく大晦日 美音

Dernier jour de l'année

l'enfant s'approche faisant fuir les oiseaux

  •  

Kamel Meslem

稚児の歯の生え始めたる大晦日 美音

dernier jour de l'année ~

apparition de la première dent de mon bébé

  •  

Olfa Kchouk Bouhadida

 

 

2021年

1月1日

 

【新年】

clinking glasses via virtual drinks

New Year's party

  •  

Barbara Olmtak

バーチャルのグラスかちんと新年会  千秋

Etegami

I collect the colors for the new year

  •  

Salvatore Cutrupi

絵手紙に新年の色集めたる  千秋

 

【初雪】

the first snow-

the colors disappear little by little

 

la prima neve-

spariscono i colori a poco a poco

  •  

Angela Giordano

初雪に消えゆく彩の少しずつ  千秋

first snow -

the soft breathing of a new-born child

  •  

paul callus

初雪や柔き呼吸の新生児  千秋

Carmen Baschieri

  •  

first snow

the footprints of a wolf in the garden

初雪が降る狼の足の跡  千秋

first snow

ink spots of the fountain pen

 

la prima neve

macchie d'inchiostro della stilografica

  •  

Stefano Riondato

初雪や万年筆の染みの跡  千秋

 

【冬の海】

seagulls squawking to the incoming waves

winter shore

  •  

Kimberly Olmtak

冬の海寄せくる波に鳴く鴎  千秋

pacific winter

furious to the bitter end

  •  

Zaya youkhanna

冬の海苦き終りの怒りかな  千秋

 

 

【クリスマス】

social distancing

soundless christmas carol

  •  

Zaya youkhanna

社会的距離の無音の聖歌かな  千秋

 

Christmas Day

the same tree as last year without you

  •  

Nani Mariani

君の居ぬ去年と同じ聖樹かな  千秋

 

【水涸る】

the mud spewing its last bubbles

drying water

  •  

Kimberly Olmtak

水涸るる泥は最後の泡を吐く  千秋

Nani Mariani

bottom of the river

the loneliness deepened

  •  

Nani Mariani

水涸れて孤独がさらに深くなる  千秋

 

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国際俳句の改革に対するご質問とお答え

2020年12月31日 09時19分00秒 | 国際俳句
Haiku Column(俳句大学国際俳句学部投句欄)よりのご報告!
 
〜国際俳句の改革に対するご質問とお答え〜
 
多くの人にご理解とご支援頂く機会を頂きありがとうございます。
ご質問にお答えします。
 
●まず、現在の国際俳句から見ていただきたい。

宮地信弘氏の訳をお借りして、いくつか英語俳句を示し、現在のHAIKU(国際俳句)の状況をみておきたい(注・「英語俳句試論(Ⅰ):日本語俳句の受容と展開」(『三重大学教育学部研究紀要第59巻』二〇〇八・三・一)。
 
①    trapped             回転ドアに
in the revolving door       閉じ込められて
autumn leaves          秋の木の葉たち
(Peter Brady:United States)
②    3 a.m.              午前3時
the alrport conveyor turnlng   空港の回るコンベアー
one battered green valise     緑の手提げかばん潰れて一つ
(Marianne Bluger:Canada)
③    child's voice―          子どもの声―
the old dog           老いた犬は
settles lowerin its box       箱の中でさらに体を低くする
 (Cyril Childs:New Zealand)
④    scent of hyacinth         ヒヤシンスの匂いが
fills the empty room       何もない部屋に満ちる
mother's birthday        母の誕生日
(Doderovicy Zoran:Yogoslavia)
⑤    a leaf              一枚の
patching a hole         木の葉が繕う
in my shoe           靴の穴
(Funda Zveljko:Croatia)
 
ここでは内容の良し悪しは問わないこととして、論述上、俳句の型に注目してみると、①は二行目で切れて、一物仕立て、②は三段切れで、一物仕立て、③は一行目の「―」で切れを表し、二物仕立て(取合せ)、④は二行目で切れて、二物仕立て(取合せ)、⑤は切れがなく、一物仕立てである。これらの例句で問題にしたいのは、②の三段切れはむろんのこと、⑤のような切れのない句である。
三行書きにしただけの俳句は形式のみで、三行詩(散文詩)的なHAIKUが標準になっていることがあげられる。HAIKUは三行書きなりという定型意識が強い。それは俳句の型と俳句の特性に対する共通認識が形成されていないからである。
このように、世界で流通している三行書きのHAIKUは散文詩的で、俳句の型が有効に機能せず、そのために俳句の特性が活かされていない。
 
①国際俳句で、なぜ二行俳句なのか?
 
俳句の型の基本は「切れ」である。松尾芭蕉の「古池や蛙飛び込む水のおと」を句切れなしの「古池に蛙飛び込む水のおと」にすると、平板で、幼稚で散文的な表現になる。ところが、「古池や蛙飛び込む水のおと」だと、「切れ」によって、暗示・連想の効果が働き、複雑で、韻文的な表現になる。「切れ」は散文化を防ぎ、韻文化を促すのである。
俳句の基本型は「切れ」とともに「取合せ」で、本来の俳句の特性を示すことになる。「取合せ」の例として、芭蕉の「荒海や佐渡によこたふ天河」を挙げると、「荒海」と「天河」という二物の「取合せ」で読みの幅が広がり、複雑で、韻文的な表現になる。芭蕉自身が「発句は畢竟取合物とおもひ侍るべし」(森川許六『俳諧問答』)と述べているように、「取合せ」は俳句の本質に関わる問題である。
そこで、俳句の本質であり、かつ型である「切れ」と「取合せ」を取り入れた「二行俳句」を提唱したい。
「切れ」のある「取合せ」の二行俳句の一例を「Haiku Column」から挙げてみる。〔永田満徳評〕〔向瀬美音訳〕
 
Castronovo Maria カストロノバ マリア(イタリア)
Aurora boreale ―            北のオーロラ
La coda di una balena tra cielo e mare  空と海の間の鯨の尾
 
掲句は天上のオーロラと海面の鯨との「取合せ」によって、天体ショーを繰り広げるオーロラのもと、鯨が尾を揚げて沈む北極圏の広大な情景が描き出されている。(月刊誌『くまがわ春秋』八月号、二〇一八)
 
Sarra Masmoudi サラ マスモウディ(チェニジア)
palabres électorales~         政治の論争~
le chat remue l'oreille en dormant    猫は寝ながら耳を動かす
 
狸寝入りしながら、ご主人たちの政談を盗み聞きしている猫を描いているのである。夏目漱石の「吾輩は猫である」さながらの情景であるところがおもしろい。(『俳句界』十二月号、二〇一九)
日本の俳句の翻訳の場合であるが、はやくも俳句の構造上による「二行書き」の問題を取り上げていたのは角川源義である。角川源義は『俳句年鑑昭和四十九年版』(昭和四十八年十二月)において、「俳句の翻訳はほとんど三行詩として行われている。これは俳句の約束や構造に大変反している」として、「私は二行詩として訳することを提案する」と述べ、「俳句の構造上、必ずと云ってよいほど句切れがある。切字がある。これを尊重して二行詩に訳してもらいたい」とまで言って、俳句の本質の面から二行書きを推奨している。「切字の表現は二行詩にすることで解決する」と結論付けることによって、「切れ」(切字)による二行書き(二行詩)を提言していることは無視できない。
とどのつまり、「切れ」と「取合せ」は、二行書きにして初めて明確に表現できるのである。
 
②国際俳句において、なぜ、KIGO(季語)を提唱するのか?
 
季語は日本独特なもので、季節のない国の人々が、季語のあるHAIKUを創ることは困難だという常識である。現代の世界俳句では、無季(自由季)が優勢で、季節が六つある国、二つの国、ない国など様々だから、日本語の季語の本意で外国語俳句を分類するのは無理がある。例えば、フランス南東部の「春風」は寒冷で乾燥した北風であり、同国の「月」は秋ではないし、語源は狂気・不安と通じるという考えである。
これに対しては、そういうことが分かった上で、国際俳句においても「KIGO(季語)」を取り入れることを提案したい。
 
Mohammad Azim Khan(モハメッド アジム カン)      
  〔Pakistan〕      〔パキスタン〕
sunny spot (of winter)            (冬の)陽だまり
 the push of a wheelchair      車椅子の一押し
                         向瀬美音訳
 
sunny spotに(of winter)を補ってみたらどうだろう。身障者の「車椅子」を「陽だまり」の中に押し出し、少しでも温まってほしいという気持ちは「冬」の季節でなければ伝わらない。それほどKIGOの喚起力は強いのである。
季語を使った「魔法の取合せ」として、次のような二通りの作り方を提示している。この型は「切れ」と「取合せ」がはっきりし、二行俳句が作りやすいという利点があることを強調しておきたい。
① 一行目は季語
   二行目は季語とは関係のない言葉
② 一行目は季語とは関係のない言葉
   二行目は季語
 
 
毛布 もうふ moufu / blancket / couverture
 
Zamzami Ismail  ザザミ イスマイル
[Indnesia]       [インドネシア]
blancket
the warmth of a baby sleeping soundly in its cocoon
ぐつすりと眠る赤子や毛布掛く
 
Veronika Zora   ヴェロニック ゾラ
〔Canada〕    〔カナダ〕
blankets and chairs
a castle of children's laughter
子の笑ひ毛布と椅子を占領す
 
 向瀬美音訳
 
 現在、国籍もフランス、イタリア、イギリス、ルーマニア、ハンガリー、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、アメリア、インドネシア、中国、台湾と多様である。季節のない国からもKIGOのあるHAIKUが多く投句されてきており、俳句は「KIGOの詩」という認識が世界で広まっている。
 
③曖昧だった国際俳句に基準を設けたことも大きく前進した要因である。
これは、日本を含めた世界共通の基準でもある。
 
二〇一七年四月に「俳句ユネスコ無形文化遺産協議会」が設立された。このこと自体に異議を差しはさむことはない。この運動によって、俳句が広く認知されていくことは俳句の国際化にとってよいことである。しかし、この運動を推進するに当たって、「何をもって、『俳句』とするか、そのコンセプトの共有に危惧を抱く」(西村和子『角川俳句年鑑』巻頭提言・二〇一八年版)という意見は重要である。
 
そこで、世界に通用する「HAIKUとは何か」を明確にするために、「Haiku Column」において、「切れ」と「取合せ」を基本とした「7つの俳句の規則」〔7rules of Haiku〕を例句とともに提示した。〔向瀬美音訳〕
 
1.【取り合わせ】       【TORIAWASE】
〔例句〕永田満徳      〔Example〕Mitsunori Nagata
春近し            near spring
HAIKU講座は二ヵ国語    lecture of HAIKU in two linguages
2.【切れ】         【only one cut】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
オートバイ          motorbyke on an autumnal path
落葉の道を広げたる      whirlwind of dead leaves
3.【季語】          【season word(KIGO)】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
百夜より一夜尊し       one night more precious than hundred nighat 
クリスマス          christmas
4.【今を読む・瞬間を切り取る】【catch the monent, tell now】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
春の雷             spring thunder
小言のやうに鳴り始む      beginning like scording
5.【具体的な物に託す】    【use the concrete object】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
肌よりも髪に付く雨      the rain dropping on hair not on skin
アマリリス          amaryllis
6.【省略】          【omissions】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
良夜なり           relaxed night
音を立てざる砂時計      sandglass without sound
7.【用言は少なく】      【avoid verbs,adjevtives, adjective verbs as much as possible】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
春昼や            spring afternoon
エンドレスなるオルゴール   endless music box
 
Haiku Columnでは、最初、説明的で観念的な句が多かったが、「7つの規則」を提示して以来、形容詞、動詞などが減り、具体的なものに託した表現を基調とし、省略された俳句が多くなっている。
例えば、二〇一九年一月十日の「Haiku Column」において、わずか一日だけの投句であるが、どれも捨てがたい句が揃うようになった。「Haiku Column」を立ち上げて三年目の成果であると思っている。
 
Agnes Kinasih
first light              
mother whispers a prayer of salvation 
初明り
母は救済の祈りを囁く
中野千秋訳
 
Claire Gardien
premier amour               
les lettres de fiançailles de son père à sa mère 
初恋
パパからママへの婚約の手紙
向向瀬美音訳
 
Salvatore Cutrupi
palle di neve-             
l'inizio di un racconto nato per gioco   
雪団子
物語の始まりはおもちゃのように生まれた
向向瀬美音訳


 
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国際俳句についての試み!

2020年10月24日 08時28分59秒 | 国際俳句

国際俳句についての試み!

◆Facebookグループの「Haiku Column」(俳句大学国際俳句学部投句欄)投句された「Today' KIGO」から言えることは「常識は守ることではなく、破ることである」ということである。

◆KIGO(季語)は日本独特なもので、季節のない国の人々がKIGO(季語)のあるHAIKUを創ることは困難だという常識は覆りつつある。季節のない国からも「KIGOのあるHAIKU」が多く投句されてきており、俳句は「KIGOの詩」という認識が世界で広まっている。

◆世界への俳句の発信が叫ばれている今こそ、空理空論に終始することなく、実践的に「俳句の何を」「俳句をどう」発信するかが問われている。

 

【国際俳句の試み】本題

俳句大学国際俳句学部では、2015年10月に国際俳句交流のFacebookグループ「Haiku Column」を立ち上げ、私は代表として、「Haiku Column」を管理している。

現在、参加メンバーは2023年9月27日現在、3059人を越え、一日の投句数も100句に及ぶ。瞬時に交流できるFacebookという国際情報ネットワークの恩恵を受けているのも特色である。

国籍もフランス、イタリア、イギリス、ルーマニア、ハンガリー、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、アメリア、インドネシア、中国、台湾と多様である。

人種、国籍を問わず投句を受け入れていることから、その「人道主義的」スタンスが広く支持されており、HAIKUによる国際文化交流が国際平和に繋がることを痛感する毎日である。

⚫️国際俳句改革の必要性

俳句は日本の伝統的な詩の一つである。今では世界各地域の言語文化という場で世界化し、また、進化している国際的な文学形式である。現代の世界俳句では、三行書きで、無季(自由季)のHAIKUが優勢であることは否定しようがない事実である。

しかし、現在の国際俳句は、俳句実作者の立場からすると、俳句の型と本質から外れているように思われる。

三行書きにしただけの俳句は形式のみで、三行詩(散文詩)的なHAIKUが標準になっていることがあげられる。HAIKUは三行書きなりという定型意識が強い。

それは俳句の型と俳句の特性に対する共通認識が形成されていないからである。

そこで、世界に通用する「HAIKUとは何か」を明確にするために、「Haiku Column」において、俳句の本質であり、かつ型である「切れ」と「取合せ」を取り入れた二行俳句」を提唱した。

ただ、日本の俳句の場合、「切れ」があっても、「取り合わせ」でないことである。例えば、「大蛍ゆらりゆらりと通りけり 一茶」や、切れ字のある「白藤や揺りやみしかばうすみどり 芝不器男」のように、切れ、或いは切れ字のある一物仕立ての二句一章はその内容から言って、二句があまり断絶していず、句意が一句一章とは大差がない。

しかし、切れ(切れ字)があることによって、空間をもたらし、想像の余地を与え、余韻を残す。これが「切れ(切れ字)」の最大の効用である。

HAIKUにおいて、二行俳句を推進しているのは、「KIRE(切れ)」を明確にするためで、KIREのない、単なる散文詩的なHAIKUの是正を図っている。

 

①〔7つの俳句の規則〕

取組み:まず、「切れ」と「取合せ」を基本とした「7つの俳句の規則」〔7rules of Haiku〕を例句とともに提示した。

〔国際俳句の「7つの規則」〕〔向瀬美音訳〕

1.【取り合わせ】       【TORIAWASE】
〔例句〕永田満徳      〔Example〕Mitsunori Nagata
春近し            near spring
HAIKU講座は二ヵ国語    lecture of HAIKU in two linguages
2.【切れ】         【only one cut】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
オートバイ          motorbyke on an autumnal path
落葉の道を広げたる      whirlwind of dead leaves
3.【季語】          【season word(KIGO)】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
百夜より一夜尊し       one night more precious than hundred nighat 
クリスマス          christmas
4.【今を読む・瞬間を切り取る】【catch the monent, tell now】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
春の雷             spring thunder
小言のやうに鳴り始む      beginning like scording
5.【具体的な物に託す】    【use the concrete object】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
肌よりも髪に付く雨      the rain dropping on hair not on skin
アマリリス          amaryllis
6.【省略】          【omissions】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
良夜なり           relaxed night
音を立てざる砂時計      sandglass without sound
7.【用言は少なく】      【avoid verbs,adjevtives, adjective verbs as much as possible】
〔例句〕永田満徳       〔Example〕Mitsunori Nagata
春昼や            spring afternoon
エンドレスなるオルゴール   endless music box

結果:「Haiku Column」では、最初、説明的で観念的な句が多かったが、「7つの規則」を提示して以来、形容詞、動詞などが減り、具体的なものに託した表現を基調とし、省略された俳句が多くなった

②〔季語の提示〕
取組み:二つのパターンの二行俳句(取合せ)を提唱しました。
・一行目はKIGO(季語)と二行目はKIGO(季語)とは関係のない言葉。
・または一行目はKIGO(季語)とは関係のない言葉と二行目はKIGO(季語)。
結果:この二つのパターンの二行俳句によって、季重なりはもちろんのこと、無季語による評価の困難さが解消されつつある。さらにメンバーの句が日本の俳句に近くなっている。
そして、この二つのパターンの二行俳句は国際俳句作家にとって俳句の本質を踏まえたHAIKUが作りやすいという点では大いに効果がある。

 

③〔和訳の工夫〕
1、五七五の17音の和訳を試みている。比較的にセンテンスの長い、これまでのHAIKUをただ端に、無理に日本の俳句の五七五の17音にすることではない。
また、日本人読者に読むやすいように、便宜上、五七五訳をするのではない。
これらの取り組みによって、省略された文が俳句の原句として五七五の17音に収まり、自然に受け入れられています。
ここにおいてこそ、五七五の17音の和訳がHAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に一歩近づくための有効な手立てであることを強調しておきたい。
2.さらなる方向性として、HAIKUの原句を五七五訳を一行書きに統一する。
二行書き俳句に拘ることなく、二行書きでも、一行書きでもいいということである。なお、、どうしても散文的、または三段切れになりやすい三行書きを推奨するつもりない。
その場合、もちろん、切れのマーク「 ー 」を入れ、切れと取合わせのある句であることを示すことは必要である。
〔例〕永田満徳訳
戦争や瓦礫のなかの名なき花   ※戦争=夏の季語とする
War‐among the rubble a nameless flower
Guerra‐tra le macerie un fiore senza nome
 アンジェラ ジオルダーノ/Angela Giordano (イタリア/Italy)

 

④日本人による国際俳句の具体的な指導
※2024年3月からこの試みは日々行なっている。
※国際俳句に於いても、俳句のルールを学ぶことは国際俳句の交流の基盤をなすものでである。
※こういう指導添削ができるのも、FacebookなどのSNSの発達のお陰である。

a【原句】

sunburned fields 
falling peaks of clouds quench the thirst

Probir Gupta
【大津留直訳】
雲の峰落ちて渇きを癒しけり

[永田満徳]⇨
どういう情景ですか?

Probir Gupta] →
Nagata  Mitunori 'falling peaks of clouds' obviously can fall as rain and certainly not as cloud. These rains relieve the thirst of sunburned ground.
永田満徳
「雲の峰が落ちる」は、明らかに雨として降ることもあるが、雲として降ることはない。
この雨は、日焼けした大地の渇きを癒す。

[永田満徳]⇨
わかりにくい。

[Probir Gupta] →
Nagata  Mitunori Agreed. I have to practice writing with more simple words and structure.
永田 満徳
 同感です。もっと簡単な言葉と構成で書く練習をしないと。

[永田満徳]⇨
ご理解いただきありがとうございます。

b【原句】
A.G
mattina d'estate
un bimbo svuota l' oceano con un secchio
夏の朝
バケツで海を空にする子供

【指導例】本人の承諾済み
永田満徳:
In che senso?
un bimbo svuota il mare col secchiello
下記の言葉はどういう意味ですか?
子供がバケツで海を空にする

A.G:
Nagata  Mitunori intendo dire che il bimbo si illude di svuotare il mare con un secchio.
永田満徳......つまり、子供はバケツで海を空っぽにすると妄想してるってこと。

永田満徳:
それを俳句では表現できていない。
これならいい。

夏の夢
バケツで海を空にする子ども

【本人による訂正】
A.G
sogno estivo
un bimbo svuota l' oceano con un secchio
夏の夢
子どもがバケツで海を空っぽにする

- 三行書きの国際俳句の指導添削例(4/9)   -※本人の了解済み

Evgeny Khvalkov:
Under moon's soft gaze,  
Dew-kissed fields embrace the night,  
Dreams drape like a shawl.
(満徳訳:月の柔らかな視線の下、
露に濡れた野原が夜を包み、
夢がショールのように垂れ下がる。)

永田満徳:
ここは二行書きか、一行書きにしてください。

その①
Evgeny Khvalkov:
Nagata  Mitunori you listed "dew" among the KIGO, didn't you?
(満徳訳:永田満徳さんは季語の中に「露」を挙げていらっしゃいましたね。)

永田満徳:
季語があるだけではダメです。

HAIKU is a short poetry-type literary 
artbased on "KIRE", in which themes 
such as"KIGO" play an important role.
(満徳訳:俳句は「季語」などのテーマが重要な役割を果たす「切」を基本とした短い詩形式の文芸です。)

「切れ」「取り合せ」が必要です。

Evgeny Khvalkov:
Then this haiku is fine or not?
(満徳訳:それでこの俳句はいいのでしょうか?)

永田満徳:
これならいいです。


野原が夜を抱く


なまなざし

長い夜(満徳提案・秋の季語)
夢はショールのように広がる

その②
Evgeny Khvalkov:
Silenzio profondo,  
la rugiada adorna l'erba,  
manto di frescura.
(満徳訳:深い静寂、  
露が草を飾る、  
涼しさのマント。)

永田満徳:
どういう意味ですか?

Silenzio profondo, la rugiada adorna l'erba, manto di frescura.

Così?
(満徳訳:深い静寂、草を飾る露、涼しさのマント。
こんな感じ?)

永田満徳:
三段切れということで、俳句ではNGです。

三段切れのよくないところは詠む材料が多いということです。

俳句は三行詩とは違います。

永田満徳:
これならいいです。
いい俳句です。

「深い静寂」は俳句で言えば
答えになっているので省きます。

露が草を飾る
マントのように

その③
Evgeny Khvalkov:
Sous un ciel d'orage,  
l’épouvantail veille, stoïque,  
garde des moissons.
(満徳訳:嵐の空の下、  
ストイックなかかしが見張っている、  
収穫を守っている。)

永田満徳:
ストイックという措辞がいいですね。

逐次訳の二行書き
嵐のかかし
ストイックに収穫物を見守る
五七五訳
ストイックに見守つてゐる案山子かな

Le 575 traduzioni giapponesi riproducono il vero valore dell'HAIKU e sono collegate alla formulazione degli haiku internazionali.
(満徳訳:五七五の十七音の和訳は、HAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に繋がりものである。)

Evgeny Khvalkovさんの俳句は比喩が特にいいです。

 

⑤〔機関誌の発行〕
機関誌「俳句大学」では、月刊「俳句界」掲載の国際俳句を収録している。

⑥ 月刊「俳句界」掲載
※2021年の『俳句界』10月号から、優秀な作品が揃って来たので、1ページ増えて、3ページに渡って掲載している。
※2020年12月号から作者の国名を入れ、世界から投句されていることを示している。

 

国際俳句の五七五訳についての疑問❔

[ 日本語への翻訳が俳句の価値をきめてしまう。怖いことです。]

【答え】
日本語訳が目的でなく、手段である!

① 五七五訳を参考にして、どの言葉が不必要で、どの言葉が必要かを考えるためである。

② 五七五の十七音の和訳は、HAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に繋がりものである。

③原句に対して意訳せず、逐語訳に努めて、原句通りに五七五訳をし、原句がそのまま五七五訳ができるところまで来ている。

従って、日本語訳が目的でなく、手段であることである。

 

「国際俳句についての試みの例」

2424年3月からはより具体的に、より丁寧に指導した結果、形式的には日本の俳句に近くなり、内容的には日本の俳句を越えるHAIKUSが増えている。

Haiku Column(俳句大学)今月の秀句(「俳句界」R6.8月号)

7月号から、五島高資氏が監訳者として参加しています。

【今月の秀句monthly excellent Haikus  永田満徳選訳 訳:Anikó Papp・大津留直 監訳:五島高資


summer time...
surfing the sports channels all day
 ●
Momolu S. Freeman(America)
モモル・S・フリーマン(アメリカ)
 ●
夏来るスポーツ番組サーフィンす

summer morning
smell of fresh baked bread
 ●
Nuky Kristijno(Indonesia)
ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)
 ●
焼きたてのパンの匂ひや夏の朝

sera d’estate -
melodia del flauto da un balcone
summer evening -
flute melody from a balcony
 ●
Daniela Misso(Italy) 
ダニエラ ミッソ(イタリア)
 ●
夏の夕バルコニーよりフルートの音

family chit chat outdoors
summer evening
 ●
Christina Chin(Malaysia)
クリスティーナ チン(マレーシア)
 ●
屋外の家族の喋り夏の宵

night rainbow . . .
all my dreams are coloured
 ●
Rosa Maria Di Salvatore(Italy)
ローザ マリア ディ サルバトーレ(イタリア)
 ●
夜の虹すべての夢の彩らる

vento estivo -
tra l'erba le capriole d'un gatto
 ●
Marisa Schiavon(Italy)
マリサ シアボン(イタリア)
 ●
夏風や草むらに猫宙返る

طائرة ورقية
أكتشف اتجاه نسيم الصباح
paper airplane
find  the direction of  morning breeze
 ●
Fatma Zohra Habis( Algeria)
ファトマ ゾーラ ハビス(アルジェリア)
 ●
朝風の吹ける方へと紙飛行機

quiet evening sea
fish always swim as a sign of life
 ●
Achmad Rif'an( Indonesia )
アハマド リファン(インドネシア)
 ●
夕凪や生きるあかしに魚泳ぐ

summer mountain
silence of my steps ascends to the sky
 ●
Kim Olmtak Gomes (Holland)
キム オルムタック ゴメス(オランダ)
 ●
足音は空へと昇る夏の山

summer lake~
sitting on a wooden chair feeling the breeze
 ●
Dyah Nkusuma(Indonesia)
ディア ヌクスマ(インドネシア)
 ●
夏湖や木の椅子にそよ風を聴く

squid fishing -
moonlight my accomplice
 ●
Paul Callus(Marta)
ポール カルス(マルタ)
 ●
烏賊釣や月の明かりを輩に

rattan chair
memory of mother still lingers
 ●
Irmareeves (Indonesia)
イルマリーヴス(インドネシア)
 ●
籐椅子や母の記憶のまだ残る

ice cream
the little boy asks his mom to open her mouth
 ●
Ariani Yuhana(Indonesia)
アリアニ ユハナ(インドネシア)
 ●
アイスクリーム子どもは母に「口開けて」

Crème glacée
rouge fraise la langue de la petite
 ●
Ouechtati Faiza(Tunisia)
ウエクタティ ファイザ (チュニジア)
 ●
アイスクリーム小さな舌の紅色よ

hammock
the waves did not disturb his sleep
 ●
Rufkiyandhie Rambe(Indonesia)
ルフキヤンディ ランベ(インドネシア)
 ●
ハンモック波は眠りを妨げぬ

sunglasses
reduce my nervousness
 ●
el Hamied(Indonesia)
エル ハミード(インドネシア)
 ●
緊張を和らげるサングラスかな

a mosquito in the same carriage as me -
the last train home
 ●
Tanpopo Anis (Indonesia)
たんぽぽ亜仁寿(インドネシア)
 ●
一匹の蚊と乗り合はす終電車 

fievole luce-
un pianeta lontano o una lucciola?
 ●
Anna Rimondi(Italy)
アナ リモディ(イタリア)
 ●
微光なり遠き惑星か螢火か

onde di grano dorato
tuffo nell'infanzia
waves of golden wheat
dive into childhood
 ●
Angela Giordano(Italy)  
アンジェラ ジオルダーノ(イタリア)
 ●
麦の波子供時代に飛び込みぬ


strawbery ~
grinning little girl held back a sour taste
 ●
Dyah Nkusuma(Indonesia)
ディア ヌクスマ(インドネシア)
 ●
につこりと酸つぱさに耐ゆる苺かな

 

Haiku Column(俳句大学)今月の秀句(「俳句界」R6.6月号)

【今月の秀句monthly excellent Haikus  永田満徳選訳 訳:Anikó Papp・十河 智・大津留 直

(Facebook「Haiku Column」より)


Angela Giordano(Italy)

war...
among the rubble a nameless flower

guerra...
tra le macerie un fiore senza nome

アンジェラ ジオルダーノ(イタリア)

戦争や瓦礫のなかの名なき花

Daoud Bouhouch(Tunisie)

ثياب بالورود~
الربيع يستضيف المولود الجديد 

ダウド ブーフシュ(チュニジア)

赤ちやんを迎へる春や花柄服

Hina Ya (France)

early spring
eraser crumbs piling up

ヒナ ヤ(フランス)

春浅し消しゴムの粉溜まりけり

Nuky Kristijno  (Indonesia)

near spring
horses in the backyard

ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)

春隣バックヤードに駿馬たち

 Irmareeves (Indonesia)

calm ~
doing taichi on the beach feeling the breeze

イルマリーヴス(インドネシア)

のどかさや浜の風受く太極拳

Probir Gupta(India)

I turned back to see who was stalking me
a spring wind

プロビル グプタ(インド)

春風や誰がゐさうで振り返る


Probir Gupta(India)

spring wind
into the sail while oars splash 

プロビル グプタ(インド)

帆に入るオールのしぶき春の風

Barbara Olmtak(Holland)

hazy moonlit night
drowning in the depth of his eyes

バーバラ オルムタック(オランダ)

朧月夜瞳の奥に溺れけり

Daniela Misso(Italy) 

consapevolezza nel respiro -
mare di primavera 

awareness in breathing -
spring sea

ダニエラ ミッソ(イタリア)

春の海呼吸するのを意識して

Zamzami Ismail(Indonesia)

nothing lasts forever
melting snow

ザンザミ イスマイル(インドネシア)

不滅なるものはあらずや雪解くる 

Rufkiyandhie Rambe(Indonesia)

picnic
his soul is as fresh as freshly picked fruit

ルフキヤンディ ランベ(インドネシア)

野遊や心採れたて果実のやう

Adoni Cizar(Syrie)

kite
hearts' uniting with an invisible thread

アドニ シザー(シリア)

凧揚げて心繋がる見えぬ糸

Tanpopo Anis (Indonesia)

good weather for kites -
even strangers can become friends 

たんぽぽ亜仁寿(インドネシア)

知らぬ子も友になりたる凧日和 

Paul Callus(Malta)

spring shawl ‐
sunshine across her shoulders

ポール カルス(マルタ)

肩越しに輝く日差し春ショール

Zana Coven(Romania)

fox cubs
mother's love is unique 

ザナ コヴェン(ルーマニア)

母の愛は特別なもの狐の子

el Hamied(Indonesia)

first butterfly -
the sound of baby crying in delivery room

エル ハミード(インドネシア)

初蝶や分娩室にややの声

Dyah Nkusuma (Indonesia)

pigtailed little girl~
laughing chasing butterflies

ディア ヌクスマ(インドネシア)

蝶を追ふお下げ髪なる少女の笑まひ

Nani Mariani(Australia)

spring tangerine
the sweet and sour taste of loneliness

ナニ マリアニ(オーストラリア)

孤独てふ甘酸つぱさよ青蜜柑

Kim Olmtak Gomes (Holland)

azalea 
my ancestral  home in the mountains

キム オルムタック ゴメス(オランダ)

躑躅咲く先祖の家は山の中

Angela Giordano (Italy)

daisies
mother's name on the cold marble

margherite
il nome di mamma sul freddo marmo

アンジェラ ジオルダーノ(イタリア)

マーガレット大理石には母の名前

Valentina Meloni (Italy)

violette tra i ruderi--
nostalgia per quello che non ho vissuto 

violets among the ruins--
nostalgia for what I haven't experienced

バレンティーナ メロニー(イタリア)

廃墟の菫これまでになき郷愁 


【「俳句界」R4.5月号】より
Haiku Column(俳句大学)今月の秀句
永田満徳選評・向瀬美音選訳(仏・伊)・中野千秋訳(英)

(Facebook「Haiku Column」より)


Angela Giordano(Italy)

war...
among the rubble a nameless flower

guerra...
tra le macerie un fiore senza nome

アンジェラ ジオルダーノ(イタリア)

戦争や瓦礫のなかの名なき花

Daoud Bouhouch(Tunisie)

ثياب بالورود~
الربيع يستضيف المولود الجديد 

ダウド ブーフシュ(チュニジア)

赤ちやんを迎へる春や花柄服

Hina Ya (France)

early spring
eraser crumbs piling up

ヒナ ヤ(フランス)

春浅し消しゴムの粉溜まりけり

Nuky Kristijno  (Indonesia)

near spring
horses in the backyard

ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)

春隣バックヤードに駿馬たち

 Irmareeves (Indonesia)

calm ~
doing taichi on the beach feeling the breeze

イルマリーヴス(インドネシア)

のどかさや浜の風受く太極拳

Probir Gupta(India)

I turned back to see who was stalking me
a spring wind

プロビル グプタ(インド)

春風や誰がゐさうで振り返る


Probir Gupta(India)

spring wind
into the sail while oars splash 

プロビル グプタ(インド)

帆に入るオールのしぶき春の風

Barbara Olmtak(Holland)

hazy moonlit night
drowning in the depth of his eyes

バーバラ オルムタック(オランダ)

朧月夜瞳の奥に溺れけり

Daniela Misso(Italy) 

consapevolezza nel respiro -
mare di primavera 

awareness in breathing -
spring sea

ダニエラ ミッソ(イタリア)

春の海呼吸するのを意識して

Zamzami Ismail(Indonesia)

nothing lasts forever
melting snow

ザンザミ イスマイル(インドネシア)

不滅なるものはあらずや雪解くる 

Rufkiyandhie Rambe(Indonesia)

picnic
his soul is as fresh as freshly picked fruit

ルフキヤンディ ランベ(インドネシア)

野遊や心採れたて果実のやう

Adoni Cizar(Syrie)

kite
hearts' uniting with an invisible thread

アドニ シザー(シリア)

凧揚げて心繋がる見えぬ糸

Tanpopo Anis (Indonesia)

good weather for kites -
even strangers can become friends 

たんぽぽ亜仁寿(インドネシア)

知らぬ子も友になりたる凧日和 

Paul Callus(Malta)

spring shawl ‐
sunshine across her shoulders

ポール カルス(マルタ)

肩越しに輝く日差し春ショール

Zana Coven(Romania)

fox cubs
mother's love is unique 

ザナ コヴェン(ルーマニア)

母の愛は特別なもの狐の子

el Hamied(Indonesia)

first butterfly -
the sound of baby crying in delivery room

エル ハミード(インドネシア)

初蝶や分娩室にややの声

Dyah Nkusuma (Indonesia)

pigtailed little girl~
laughing chasing butterflies

ディア ヌクスマ(インドネシア)

蝶を追ふお下げ髪なる少女の笑まひ

Nani Mariani(Australia)

spring tangerine
the sweet and sour taste of loneliness

ナニ マリアニ(オーストラリア)

孤独てふ甘酸つぱさよ青蜜柑

Kim Olmtak Gomes (Holland)

azalea 
my ancestral  home in the mountains

キム オルムタック ゴメス(オランダ)

躑躅咲く先祖の家は山の中

Angela Giordano (Italy)

daisies
mother's name on the cold marble

margherite
il nome di mamma sul freddo marmo

アンジェラ ジオルダーノ(イタリア)

マーガレット大理石には母の名前

Valentina Meloni (Italy)

violette tra i ruderi--
nostalgia per quello che non ho vissuto 

violets among the ruins--
nostalgia for what I haven't experienced

バレンティーナ メロニー(イタリア)

廃墟の菫これまでになき郷愁 

 

【「俳句界」R4.5月号】より

Haiku Column(俳句大学)今月の秀句

永田満徳選評・向瀬美音選訳(仏・伊)・中野千秋訳(英)

【今月の秀句(monthly excellent Haikus)】  (Facebook「Haiku Column」より)

Agnese Giallongo (Italy)

lucciole -
una speranza per l' Ucraina tutta al buio
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
La luce della 'houtaru' (lucciola) è anche destinata a portare fortuna. La lucciola che brilla nel "buio" del cambiamento forzato dello status quo da parte della Russia è la stessa "speranza dell'Ucraina". È una frase che risuona in tutto il mondo, poiché esprime la speranza che il disastroso campo di battaglia causato dall'invasione russa dell'Ucraina sia portato a termine il più presto possibile.
アグネーゼ ジアロンゴ (イタリア)
ほうたるや闇にウクライナの希望 
〔永田満徳評〕
「ほうたる」(螢)の光は幸運を呼び寄せる意味もある。ロシアの力による現状変更を強引に進める「闇」の中で光る螢は「ウクライナの希望」そのものである。ロシア軍のウクライナ侵攻による悲惨な戦場の様子を見るにつけ、一刻も早く終息してほしいと願う気持が込められていて、世界の共感を呼ぶ句である。。


Olfa Kchouk Bouhadida( Tunisia)

tulipes noires ~
la nature en deuil à Kiev
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
Kiev est la capitale de l'Ukraine. L'Ukraine est un pays de plaines, de steppes et de plateaux fertiles, traversé par les fleuves Dnepr, Donets et Dniester, et riche en nature. La Tulipe noire représente la tragédie de l'invasion russe en Ukraine, et la phrase "La nature de Kiev est en deuil" est profondément émouvante.
オルファ クチュク ブハディダ(チュニジア)

黒きチューリップキエフの自然は喪に服す 
〔永田満徳評〕
「キエフ」はウクライナの首都。ウクライナの国土は肥沃な平原、草原、高原で占められ、ドニエプル川、ドネツ川、ドニエステル川が横切っており、自然豊かである。「黒きチューリップ」がロシア軍のウクライナ侵攻による悲劇を代弁していて、「キエフの自然は喪に服す」という措辞は深い感銘を与える。


Angela Giordano (Italy)

urban warfare ...
a daisy blossoms inside a crack
guerriglia urbana...
una margherita sboccia dentro una crepa
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
'Urban warfare' leaves cities in ruins. Strategic bombing of cities is followed by civilian casualties. Russian forces attack indiscriminately in various parts of the country, even involving large numbers of civilians. The poem touches the reader's heart by comparing the Ukrainian people to the 'hina chrysanthemum', which is treated as a weed in Europe, and by expressing the feeling that one cannot help but wish for a strong recovery.
アンジェラ ジオルダーノ(イタリア)

市街戦亀裂より咲く雛菊よ  
〔永田満徳評〕
「市街戦」は都市を廃墟同然にする。都市への戦略爆撃に次いで、市民への被害を発生させる。ロシア軍は大勢の民間人を巻き込むこともいとわず各地で無差別に攻撃している。ヨーロッパでは雑草扱いの「雛菊」にウクライナの人々をなぞらえ、力強い復興を願わずにはいられない気持を詠んでいて、読む者の心を打つ。

【今月の秀句(monthly excellent Haikus)】(Facebook「Haiku Column」より)
〔ウクライナ特集〕
ウクライナ侵攻に対する各国の俳人の投句を見るのつけ、俳句という短詩形が持つ「伝達性」と「記録性」、「慰撫の力」とを改めて思う。(永田満徳)


Gabriella De Masi (Italy)

ucraina -
la primavera esplode tra le macerie
ガブリエラ デ マシ (イタリア)

ウクライナ春は瓦礫に爆発す


Paul Callus(Malta)

sunflowers of hope -
a nation oppressed but not subdued
ポール カルス(マルタ)

向日葵や屈服をせぬ国のある  


Carmen Baschieri(Italy)

ghiaccio sottile
la pace sulla Terra un'utopia

thin ice
peace on earth is a utopia
カルメン バシエリ(イタリア)

薄氷や平和といふはユートピア 


Feten Fourti (Tunisia)

sale cette guerre
boue de printemps
フテン フルティ(チュニジア)

春の泥汚き戦争ありにけり 


Nuky Kristijno (Indonesia)

not a single butterfly in sight
cry of war
ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)

戦争や蝶の一つも見当たらず  


Imelda Senn(Switzerland)

bourgeons de printemps
les discussions politiques n'ont point porté de fruits
イメルダ セン(スイス)

実りなき政治論争木の芽張る 


Rachida Jerbi(Tunisia)

matin de printemps ~
les mimosas explosent les bombes aussi
ラチダ ジェルビ(チュニジア)

爆弾もミモザも爆発春あけぼの 


Mudher Iraqman(Iraq)

tambours de guerre -
les oiseaux gazouillent pour le vide
ムドハー イラクマン(イラク)

戦争の太鼓や虚しき囀り 

【今月の季語(Kigo of this month)】(Facebook「Haiku Column」より)
※                                                    

【 朧月 おぼろづき oborozuki / hazy moon / lune voilée 】
Hervé Jayol (France)

lune voilée
nuit effrayante dans la forêt des pins noirs
エルベ ジャヨル(フランス)

朧月黒松の森の夜の怖さ  


Christina Chin(Malaysia)

hazy moon
my footsteps and I
クリスティーナ チン(マレーシア)

自らの足音連れて朧月 

【 バレンタインデー ばれんたいんでー  barentainde(-) / Valentine’s Day / la Saint-Valentin 】
Nuky Kristijno(Indonesia)

sealed with red lipstick lips
my Valentine’s card for you
ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)

封印の口紅バレンタインカード 


Souad Hajri(Tunisia)

Saint-Valentin ~
coeurs rouges sur vitrines enfarinées
スアド ハジリ(チュニジア)

バレンタインデー真つ白き窓に赤きハート   

【燕来る  つばめくる tsubamekuru / swallow coming / hirondelle retour 】
Olfa Kchouk Bouhadida(Tunisia)

rrivée de l'hirondelle ~
la maison au bord de mer attend la famille
オルファ クチュク ブハディダ(チュニジア)

燕来る浜辺の家は家族待ち


Cello Muse(France)

lettre parfumée de l'amoureuse ~
hirondelles dans le ciel
セロ ミュゼ(フランス)

燕来る香りの付きしラブレター 

【薔薇の芽 ばらのめ baranome / bud of rose / bouton de rose 】
タンポポ 亜仁寿(Indonesia)

rosebud
baby's hand slowly opens
タンポポ 亜仁寿(インドネシア)

薔薇の芽やゆつくり開く赤子の手


Rina Darsa(Indonesia)

bud of rose
a baby clenching fist while sleeping
リナ ダルサ(インドネシア)

薔薇の芽やこぶしを握り眠る嬰 


華文俳句【俳句界】2022,5月号
永田満徳選評・洪郁芬選訳

夫婿三代相似的穿著
春節

雨靈
〔永田満徳評論〕
春節是從陰曆的正月元日持續到正月五日。台灣的原住民有民族服裝和傳統衣著,於每年定例的活動或祭典中穿著。大年初二是已經出嫁的女兒回娘家的日子。這首俳句描寫家人三代聚集一起,穿著相似的衣服,大夥兒一同慶祝新年的情景。春節中相聚,能聯絡感情,使家庭關係親密。而本俳句也勾勒出重視傳統的台灣習俗,饒富趣味。

三代の揃ひの服やお正月

雨靈
〔永田満徳評〕
春節は旧暦正月の元日から5日までを指す。台湾の原住民族には民族衣装・伝統衣装があり、行事やお祭りのときに着用する。2日は嫁いだ娘が実家に帰る習慣がある。「三代」の親族がうち揃い、「揃ひの服」を着て、正月を祝っている情景であろう。「春節」に集う家族の絆が窺え、また伝統を重んじる台湾の習俗が描き出されて、興味深い。


裝滿星星的石滬
桜鯛

胡同
〔永田満徳評論〕
「石滬」是一種利用潮汐的傳統陷阱式漁法,在退潮時捕捉殘留於石滬的魚。心型的石滬是很普遍的,然而,如果魚群裡參雜了一尾「櫻鯛」,一天的風景就有所不同了! 試圖用手去捕捉時,逃跑的櫻鯛五顏六色的輝映著月光,美麗的粉紅鱗片閃閃發亮,伴隨著四周灑在水面上的星光點點。

桜鯛星いつぱいの石滬

胡同
〔永田満徳評〕
「石滬(シーフー)」は潮の満ち引きを利用した仕掛け。潮が引いた時に石滬のなかに取り残された魚を捕まえる。石滬はハート型が一般的であるが、その中に「桜鯛」が混じっていたのである。手づかみで捕えようとすると、逃げ回る桜鯛の色鮮やかで、きれいなピンク色に染まった鱗のきらめきとともに、水面に映った星のきらめきが美しく切り取られている。


父親初戀的記憶
櫻花

明月
〔永田満徳評論〕
屬於亞熱帶的台灣,櫻花季大約是一月下旬至三月中旬之間。島上栽植的櫻花種類,除了從日治時期以來的品種之外,還有台灣特有的櫻樹,和日本與台灣混種的櫻花樹。作者賞櫻,忽然想到父親的初戀,和種種關於櫻花的回憶。藉由與櫻花的兩項對照組合,思索父親的羅曼史,也是思念父親的一種表現,並使我們窺見親子之間的緊密聯繫。

初恋の父の記憶や桜花

明月
〔永田満徳評〕
亜熱帯の台湾では、桜の見ごろは1月下旬から3月中旬である。台湾固有のものから日本統治時代に植樹されたものや日本と台湾の掛け合わせの品種が見られる。「桜」を見て、「父」の「初恋」と「桜」にまつわる話を想い出したのだろう。桜との取合せによって、父のロマンに心を寄せ、父を偲んでいる子の姿が浮かび上がってくる。親子の絆の強さを詠んでいて、心温まる。

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