【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

季語で一句⑥ (『くまがわ春秋』5月号〕

2020年05月15日 10時21分00秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!

〜季語で一句⑥
 
◆『くまがわ春秋』5月号が発行されました。
◆「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
 (info@hitoyoshi.co.jp ☎0966-23-3759)

【くまがわ春秋】5月号

風光る(かぜひかる)    「春-天文」

【季語の説明】
「風光る」は寒暖を繰り返しながら日差しは徐々に強くなっていき、鋭かった風もやや弱まり、風も光ってみえるようだ、という感覚的な季語の一つ。動詞「光る」には、『光を反射し輝く』という意味があり、太陽の光に輝いて見える、ということである。江戸時代から使われ始め、特に明治以降好んで使われている。

野島正則 
富士望む段々畑風光る  
【永田満徳評】
「風光る」は春風がきらきらと光り輝くように感じられる外の情景と取合せた句が多い。掲句は日本の代表的で秀麗な「富士」に日本の原風景とも言うべき「段々畑」を配置した情景であるところがいい。
田打(たうち)                    「春-生活」

【季語の説明】
「田打」は春田の土を田植えの用意に鋤き返すこと。収穫が終わった田圃は、新たな稲作のために土地を整える必要がある。田起こし(耕起)することにより、田圃に豊かな酸素を取り入れ、その後に続く代掻きという作業を効率的にできるようにする。最終的には土を細かくして、平らにすることを想定して耕す。

杉山滿
百年の歴史重たき田打かな
【永田満徳評】
「田打」は今でこそ機械化されて、随分楽になっているが、昔は重労働であった。掲句は、一枚の田にも、長い年月を掛けて、代々守りながら受け継いできた、一族の「歴史」の重さがあることをよく詠んでいる。

独活(うど)                 「春-植物」                     【季語の説明】
「独活」はウコギ科に属する多年草で、葉は大型の羽状で、球状の白い小花をつけ、高さは二メートル近くにもなる。日本特有の植物で、日本各地に分布し、山地に自生しているが、栽培もされている。古くから食されてきて、地上に出る前の若い茎は香気と歯ざわりがよく、吸い物を始めとして、生食·和え物などにする。

大津留 直
鬼岩の力を借りて独活を掘る
【永田満徳評】
 「独活」は斜面に自生するので、何かに頼って採るほかない。掲句の場合、「鬼岩」がパワースポット的な石であればこそ、「力を借りて」は納得される措辞で、独活掘りの一場面がうまく切り取られている。



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