【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜Facebook「華文俳句社」【俳句界】2021.8月号〜

2021年07月23日 06時59分39秒 | 華文俳句

俳句大学国際俳句学部よりお知らせ!

 

〜Facebook「華文俳句社」【俳句界】2021.8月号〜

 

◆2021年『俳句界』8月号が発行されました。

◆華文圏に俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。

◆東北公益文科大学教授の呉衛峰氏、台湾詩人の洪郁芬氏を中心として、マレーシア詩人の趙紹球氏、台湾詩人の郭至卿氏の四人が2018年にFacebookグループ「華文俳句社」を立ち上げた。

◆2018年11月1日には、華文俳句社の四人による二行書きの華文俳句の合同句集『華文俳句選』(醸出版)が刊行されました。

◆ 二行俳句の個人句集では、洪郁芬氏が『渺光乃律』(2019、10)を〔華文俳句叢書1〕として、郭至卿氏が『凝光初現』(2019、10)を〔華文俳句叢書2〕として、次々に刊行しています。ついに、全季節を網羅した、世界的にも画期的な「歳事記」が2020年10月に発行されました。これで季重なりの問題が解消されるでしょう。

◆さらに、2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載しています。

◆2020年『俳句界』3月号の特別レポートにおいて、「熊本大学」で呉衛峰氏が行ったラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。

◆どうぞご理解とご支援をお願いします。

 

俳句大學國際俳句學部的通知!

 

~Facebook 「華文俳句社」Kabun Haiku  2021・8〜

 

◆2021年『俳句界』8月號已出版。

◆於華文圏提倡包含俳句的基礎「一個切」和「兩項對照組合」的二行俳句。

◆2018年12月1日已出版華文俳句的合著,『華文俳句選』。

◆2020年『俳句界』3月號以八頁的篇幅特別報導了於「熊本大學」舉辦的「華文俳句の可能性」座談會。

◆請各位多多支持指教。

 

永田満徳選評・洪郁芬訳

 

鄭如絜

  •  

玻璃窗打零工的徵人海報

暑假

〔永田満徳評論〕

暑假是學生打零工的最好時期,而條件好的零工總是特別難找。於是東瞧西看,不知不覺便停留在一個貼在玻璃窗上的徵人海報。此俳句擷取了學生於暑假期間四處尋找打工機會的一幕。

 

鄭如絜

  •  

硝子窓のアルバイトの募集ポスター

夏休み

〔永田満徳評論〕

「夏休み」は学生にとって「アルバイト」をする絶好の期間である。条件のいいアルバイトはなかなか見つからない。そこで、探し回っているうちに、店頭の「硝子窓」に張り出されている「募集ポスター」に釘付けになったのである。夏休みを迎え、アルバイト探しに勤しむ学生の一齣をうまく捉えている。

 

皐月

  •  

重讀紅樓夢的葬花詞

芒種

〔永田満徳評論〕

葬花詞是紅樓夢中被吟詠的一首詩,出現在最令人印象深刻的「黛玉葬花」。葬花詞起初的用意是為了哀悼花的殞落,卻成了女兒自憐己身的一首漢詩。與穀物和稻子麥子播種時期的季語「芒種」配搭,歌詠萬物萬象的興衰,為此我深深著迷。

 

皐月

  •  

紅楼夢の葬花詞を読み返す

芒種

〔永田満徳評論〕

「葬花詞」は小説『紅楼夢』の中で詠まれる、最も強い印象を与える「黛玉葬花」のこと。「葬花詞」は花を悼むつもりが、わが身をいとおしむことになってしまったという漢詩である。穀物の麦や稲などの種を蒔く目安とされる「芒種」との取合せで、生きとし生けるものの命の盛衰を詠んでいて、心惹かれる。

 

慢鵝

  •  

抖出一圈水珠的狗兒

驟雨

〔永田満徳評論〕

正在遛狗的時候,忽然撞見驟雨,驚惶中總算跑到能避雨的地方。還不確定能否進去躲雨?此時愛犬正用力抖動全身。「抖出一圈水珠」的措辭清楚描繪了愛犬奮力將溼透的身體抖動風乾的逗趣情景。

 

慢鵝

  •  

水滴を一回り飛ばす犬

驟雨

〔永田満徳評論〕

犬の散歩の途中、急にどっと降りだした「驟雨」に逃げ惑いながら、やっと雨宿りできるところに辿り着き、軒に入るや否や、犬がぶるぶると体を震わせているのである。「一回り水滴飛ばす」という措辞に、犬が体を勢い良く振り回して、雨の雫を振り払っている愛くるしい犬の様子がよく描かれている。

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〜Facebook「Haiku Column」【俳句界】2021.8月号〜

2021年07月23日 06時30分29秒 | 「俳句界」今月の秀句

俳句大学国際俳句学部よりお知らせ!

 

〜Facebook「Haiku Column」【俳句界】2021.8月号〜

 

◆俳句総合誌『俳句界』8月号が発行されました。

◆俳句大学 〔Haiku Column〕のHAIKUから選句・選評した句を掲載しています。また、「俳句界」2019年1月号から毎月連載しています。

◆R 2・12月号から作者の国名を入れています。人種、国籍を問わず投句を受け入れていることから、その「人道主義的」スタンスが広く支持されています。

◆ 向瀬美音氏は日本語訳の改善に着手している。五七五の17音の和訳は、HAIKUをただ端に日本の俳句の五七五の17音にしただけではなく、原句のHAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に一歩近づくための有効な手立てであることを強調しておきたい。

◆例えば、ある日本の国際俳句大会で「飢えた難民の/前に口元に差し出す/マイクロフォン一本」のような三行書きにしただけで散文的な国際俳句が大会大賞、或いはある国際俳句協会のコンクールで「古い振り子時計―/蜘蛛の巣だらけになっている/祖父のおとぎ話」のような切れがあっても三段切れで冗漫な国際俳句が特選を受賞しているように、三行書きの国際俳句が標準になっていることに危惧を覚えて、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。

◆2017年7月にフランス語圏、イタリア語圏、英語圏の55人が参加する機関紙「HAIKU」を発行しました。12月20日発行の2号では91人が参加しました。また、5月31日発行の3号では96人が参加し、320ページを数えます。さらに、12月26日発行の4号では112人が参加し、500ページを数えます。そして5号では150人が参加して、550ページを越えて、8月1日に出版しました。そして、6号を2020年12月に出版しました。また、2020年3月1日には「国際歳時記」の第1段として【春】を出しました。「HAIKU」6号と「歳時記」は原句の内容を損なうことなく五七五に訳出しています。

◆総合俳句雑誌「俳句界」2118年12月号(文學の森)の特集に「〔Haiku Column〕の取り組み」について」が3頁に渡って書いています。

◆「華文俳句」に於いては、華文二行俳句コンテストを行い、華文圏に広がりを見せて、遂に、2018年11月1日にニ行俳句の合同句集『華文俳句選』が発行されました。

◆ 二行俳句の個人句集では、洪郁芬氏が『渺光乃律』(2019、10)を〔華文俳句叢書1〕として、郭至卿氏が『凝光初現』(2019、10)を〔華文俳句叢書2〕として、次々に刊行している。さらに、全季節を網羅した「華文俳句歳事記」が2020年11月には刊行されて、これで季重なりの問題が解消されるでしょう。

◆さらに、2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載している。

◆『俳句界』2020年3月号の特別レポートにおいて、熊本大学で行われたラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。

◆どうぞご理解ご支援をお願いします。

 

The August issue of 「HAIKUKAI俳句界」!

〜Haiku Colum of Haiku University [Monthly best Haikus]〜

◆the August issue of HAIKUKAI俳句界 has just been published. 

◆It contains the best haikus of the month selected by M. Nagata. 

◆according to the plan, we will continue to publish 2 lines haikus with kire and toriawase.

 

août aout de 「HAIKUKAI俳句界」!

〜Haikus du mois de Haiku Colum de Haiku Universite〜

◆L août de aout de HAIKUKAI俳句界 vient d'etre publie.

◆il contient les meilleurs haikus du mois selectionnes par M. Nagata. 

◆Selon ce plan nous allons continuer a publier des haikus en deux lignes avec kire et toriawase.

 

Haiku Column(俳句大学)(「俳句界」R3.8月号)

 

【今月の秀句(monthly excellent Haikus) 】

永田満徳選評・向瀬美音選訳

(Facebook「Haiku Column」より)

イン イスマエル(インドネシア)

  •  

夏の月赤子は笑ひ空を蹴る 

〔永田満徳評〕

「夏の月」は白く、霜が降りたように見えることから夏の霜ともいい、昼間の暑さが厳しいほど、夏の夜の涼しさがひときわ感じられるものである。夏の月が煌々と照り、涼しさの中で、健やかに育っている「赤子」の様子が目に浮かぶ。「空を蹴る」という措辞に、赤子の元気のよさがうまく切り取られている。

 

In Ismael

  •  

summer morning

smiling baby kicks the sky

〔Commented by Mitsunori Nagata〕

The "summer moon" is white and looks like frost, so it is also called summer frost. The more severe the daytime heat, the more cool the summer nights can be felt. The summer moon shines brightly, and in the coolness, you can see the "baby" growing up in good health. The excitement of the baby is well cut out in the phrase "kicking the sky".

 

 

ステファニア アンドレオニ(イタリア)

  •  

追憶や芥子の蕾を開くとき 

〔永田満徳評〕

芥子の花言葉は恋の予感であるので、追憶は誰しも経験のある、叶うことのなかった初恋と関係するものであろう。懐かしくもあり、ほろ苦くもある想いが抑えがたく、込み上げてきたのである。「追憶」と「芥子」を取り合わせることによって、ロマンチックな心情がおのずから伝わってくるところがいい。

 

Stefania Andreoni

  •  

flashback-

quando schiudevo i boccioli dei papaveri

〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕

Puisque le langage de la fleur de coquelicot est une prémonition d'amour, le souvenir peut être lié au premier amour que tout le monde a connu et n'a jamais réalisé. Les sentiments à la fois nostalgiques et doux-amers sont incontrôlables et se sont accumulés. En combinant « souvenir » et « coquelicot », il est bon que les sentiments amoureux se transmettent naturellement.

 

 

アリアナ ユハナ(インドネシア)

  •  

贅沢はときに危険や玉虫よ  

〔永田満徳評〕

箴言のような句は取合せが難しく、単なる感慨句になることが多い。止めどなく無駄遣いをする「贅沢」は確かに「危険」である。虹色に輝く宝石のような玉虫の色は贅沢と言っていいほど過剰である。その色彩豊かな玉虫から連想して、贅沢というものの孕む危険性に考えが及んでいる点の着眼が鋭い。

 

Ariani Yuhana

  •  

a part of luxuries is very dangerous

jewel beetle

〔Commented by Mitsunori Nagata〕

Phrases such as Proverbs are difficult to match and are often just emotional phrases. Endlessly without the waste "luxury" is certainly "danger". The color of the rainbow-colored jewel-like jewel beetle is almost "luxury". It is sharp to think about the danger of luxury, which is associated with the colorful jewel beetles.

 

【 今月の季語(Kigo of this month) 】

永田満徳選評・向瀬美音選訳

(Facebook「Haiku Column」より)

 

【 虹 にじ niji / rainbow / arc-en-ciel 】

タンポポ 亜仁寿(インドネシア)

  •  

子ども等の夢はさまざま虹が立つ   

タンポポ 亜仁寿

  •  

various dreams in children's smile

rainbow seeds

バーバラ オルムタック(オランダ)

  •  

虹立つや集中豪雨より希望 

Barbara Olmtak

  •  

arc of hope in the wake of a cloudburst

rainbow

 

【 母の日 ははのひ hahanohi / mother’s day / fête des mères 】

アグネーゼ ジアロンゴ(イタリア)

  •  

母の日や思ひ出の写真片付ける 

Agnese Giallongo

  •  

fête des mères

ranger une photo et des souvenirs

カリーヌ コシュト(フランス)

  •  

母の日や子供心の温かさ 

Karine Cocheteux

  •  

fête des mamans

la chaleur du coeur des enfants

 

【帰省 きせい kisei / homecoming / retourner dans son pays natal】

キンベリー オルムタック(オランダ)

  •  

とめどなく帰省を祝ふ涙かな 

Kimberly Olmtak

  •  

homecoming celebration

the tears will not go away

ザヤ ヨークハンナ(オーストラリア)

ときめきに歩みの進む帰省かな

  •  

Zaya Youkhanna

  •  

homecoming

his heartbeats precedes his steps

 

【 ハンモック はんもっく hanmokku / hammock / hamac 】

アブダラ ハジイ(モロッコ)

  •  

ハンモック糸杉の間に揺れる夢 

Abdallah Hajji

  •  

hamac

entre deux cyprès mes rêves oscillent

ザザミ イスマイル(インドネシア)

  •  

右足の砂の落ちたるハンモック

Zamzami Ismail

  •  

hammock

the sand on my right foot is falling

  

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〜特集「あれから一年」に寄稿す〜

2021年07月08日 23時14分13秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
月刊『くまがわ春秋』7月号!
 
〜特集「あれから一年」に寄稿す〜
 
◆2021年7月4日発行の『くまがわ春秋』7月号が発行されました。
◆その特集「あれから一年」に「出水の故郷から-俳句」と題する俳句並びに自注自解を寄稿しました。
◆ 編集子より「被災者だけの声・感覚だけでは不十分だ」ということでしたので、直接に被災した訳ではないのですが、お引き受けしました。
◆実は、熊本地震の折にも、いち早く、熊本地震に関する特集「クローズアップ 熊本大震災」を組んだ月刊「俳句界」(2016) 7月号に寄稿し、「震災の記録」として残しています。
 
【俳句と自注自解8句】
 
出水の故郷よりー俳句
永田満徳
 
 二〇二〇年(令和二年)七月四日、未明から朝にかけて、熊本県南部で集中豪雨が襲い、球磨川が氾濫し、土砂崩れや浸水被害が多数発生した。人吉市街地の浸水高は昭和四十年代にあった二つの水害よりもはるかに高かった。
 
一夜にて全市水没梅雨激し
 人吉市は、市街地を中心に広範囲にわたって浸水や冠水が発生した。一夜明けた五日、高校まで過ごし、見聞きしていた市内の景観は一変していた。
 
梅雨出水高さ誇りし橋流る
 私の実家のある永野町と人吉市内を結ぶ橋が西瀬橋。市内に出るには必ずこの橋を渡らなければならなかった。西瀬橋の高さは幼少時の記憶によると、途方もなく高く感じられた。今でも夢に見るが、その夢で決まって出てくるのは橋の欄干から覗き込んだ、息を飲むほどの高さである。
 
身一つもて元気と出水の故郷より
 洪水で自宅と納屋が全壊した上村雄一氏のことが気掛かりでいると、Facebook「月刊『くまがわ春秋』ファンクラブ」に、その第一報「元気です」がもたらされた。のちに、上村雄一氏はその投稿は七月七日のことであり、「避難所生活3日目で友人のタブレットを利用して投稿したものです。避難所はまだ混乱の最中で、避難者が増えている時点です。」と語っている。
 
携帯の出水警報つぎつぎに
 近年では携帯やテレビに大雨洪水警報が出るようになった。これはこれで、大変有益な情報であるが、大雨に対する注意が身近になって、けたたましく警報が鳴ると不安になる。 
 
雨音にけふも出水の悪夢かな
 水害後、梅雨の時期でもないのに、少しでも長雨になると、水害が起こるのではないかと心配するようになった。
 
球磨川の水位情報梅雨激し 
 熊本市内の私の家は高台にあって、崖崩れの心配はあっても水害の恐れはない。しかし、故郷を離れて、四十数年になっても、故郷・人吉の情報はわが身のことのように感じられる。
 
むごかぞと兄の一言梅雨出水  
 人吉在住の兄は水害被害にあった家屋の復旧を手伝った。被害状況や被災復旧を含めて、水害は言葉に言い尽くせないほど悲惨で過酷であったようで、「むごか」という一言以外にその多くを語らない。
 
前触れはいつも雨音夏出水  
 五年前の熊本地震と同じように、一度、大水害が起こると、また起こるのではないかと思うこの頃である。
 
■定期購読
月額500円で毎月お届けします。お申し込みは、下記へお願いいたします。
〒868-0015 熊本県人吉市下城本町1436-4の3号
TEL 0966-23-3759  FAX 0966-23-3759
メール info@hitoyoshi.co.jp
 
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〜季語で一句 20〜

2021年07月08日 23時09分23秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
 
〜季語で一句 20〜
 
◆『くまがわ春秋』7月号が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
Mail:info@hitoyoshi.co.jp 
☎ 0966-23-3759
 
「くまがわ春秋」
【季語で一句】(R3・7月号)
 
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
 
麦秋(ばくしゅう《ばくしう》)「夏-時候」
山野邉茂
墓碑にはみな猿田の名字麦の秋
【永田満徳評】
「猿田」は『古事記』に登場する道案内した猿田彦でお馴染みの祭神。掲句は、季語「麦の秋」を使って、神々しい「猿田」の「名字」を持った人々が寄り合う、穀物の豊かな集落の様をうまく描き出している。               
【季語の説明】
「麦秋」とは初夏の頃の季節のこと。麦が熟し、麦にとっての収穫の「秋」であることから名づけられた時候の季語。麦の種を蒔くのは晩秋から初冬にかけてで、冬に芽を出し、春を迎えるとすくすくと育つ。やがて、麦の穂がたわわに実り、麦畑が黄金色に染まる時期が麦秋で、目でも楽しめる初夏の風物詩である。
 
鰺(あじ)         「夏-動物」
江口秋子
鯵握りこの子誰に似たんだらう
【永田満徳評】
「鯵」は大衆魚。新暦5月は鯵の美味しい季節。鯵の握り寿司を頬張りながら、唐突に「誰に似たんだらう」という疑問が起こる。掲句は日常のふとした疑念と庶民的な「鯵」とが取合わせられて、面白い。
【季語の説明】
「鰺」はアジ科に属する海魚で種類が多い。鰺の代表格は真鰺で、日本各地の沿岸に分布していて、釣り、定置網、底引き網等の沿岸漁業で漁獲される。刺身、塩焼き、フライ、干物などにして食す。「味がいい」から「あじ」だとも、鰺のおいしい季節が旧暦の3月なので、数字の「参」が使われたとも言われている。
 
花菖蒲(はなしょうぶ《はなしやうぶ》) 「夏-植物」
篠木 睦
菖蒲田の水明りして亀沈む 
【永田満徳評】
「花菖蒲」の紫は色濃く、そこに混ざって咲く白は初夏の日差しを受けてまぶしい。水を張った「菖蒲田」は空の青と菖蒲の花の色を映して美しい。「水明り」の表現がよく、「亀沈む」が絵画のようで、心惹かれる。
【季語の説明】
「花菖蒲」はアヤメ科の多年草で、ノハナショウブをもとに、江戸時代を中心に品種が育成された。6月頃色彩もさまざまな花が開く。梅雨の最中に花弁を雨粒が濡らす姿は風情がある。優美な花形が魅力で、色彩の魔術師とも呼ばれ、花色の変化に富んでいる。アヤメは花弁のつけ根などでカキツバタと区別できる。
 
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