【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

「文學の森大賞」を受賞して

2023年06月19日 19時57分00秒 | 機関紙「HAIKU」

総合文化雑誌「KUMAMOTO」43号

NPO法人 くまもと文化振興会 2023年6月20日発行

   一  「文學の森大賞」を受賞して ー

                  永田満徳

このたび、句集『肥後の城』が第十五回「文學の森大賞」を受賞した。名誉ある大賞を頂き、身の引き締まる思いである。

「文學の森賞」は月刊「俳句界」を発行している文學の森にて刊行された2021年の句集を対象に選出する賞である。

『肥後の城』(文學の森・令和三年九月)は『寒祭』(文學の森・平成二十四年)に次ぐ、第二句集である。平成二十五年より令和三年までの三四四句を収めた。二十五年間の句業の集大成である『寒祭』に比べて、短期間の句業を収めることができたのは、インターネットやSNSなどの情報通信技術の恩恵に浴するところが大きい。

私が代表を務める「俳句大学」では、例えば、インターネットの「俳句大学ネット句会」、或いは、Facebookの「俳句大学投句欄」に於ける、講師による「一日一句鑑賞」、会員による「一日一句互選」や週ごとの「席題で一句」「テーマで一句」「動画で一句」、特別企画の「写真で一句」などに投句し、講師として選句も担当してきた。私の作句数は月に五〇句を超えることがしばしばで、八年間で五〇〇〇句以上の俳句を残せた。近年のコロナ禍にあっても、より積極的に、より活発に活動できた。

本句集は、平成二十八年四月に起こった熊本地震の句を起承転結の〈転〉の部分に当てるつもりで編集を進めていた。一度は文學の森で初校まで出来ていたところ、令和二年七月、郷里の人吉を大水害が襲ったため、二つの大災害を悼むことにした。さらに、「未来図」の鍵和田秞子主宰の「あなたは熊本にいるのだから、熊本城や阿蘇、天草を詠みなさい」というご助言や元熊本大学教授で「火神」主宰の首藤基澄先生の阿蘇への思いの集大成とも言うべき句集『阿蘇百韻』(本阿弥書店)に促されて、熊本城、阿蘇、天草を詠み込んだ句を多く残すことにした。テーマ性と郷土色を盛り込んだ内容の読物になるように心掛けたと言ってよい。その意味で、熊本の多くの人に読んで頂きたい気持は強い。

また、夏目漱石は熊本にて運座(句会)を開き、正岡子規の新派俳句を熊本にもたらした。しかし、今日、漱石俳句の継承者はいない。そこで、私は漱石の後継者を自認し、漱石の言葉である「俳句はレトリック」に倣い、連想はもとより、擬人化・比喩・オノマトペなどを駆使して、バラエティーに富んだ、多様な俳句を作ることを試みた。

この内容と表現において、本句集がどれほど成功しているかは覚束ないが、この大賞を励みにチャレンジしていきたいと思っている。

『肥後の城』抄(十句)

阿蘇越ゆる春満月を迎へけり   こんなにもおにぎり丸し春の地震

水俣やただあをあをと初夏の海  大鯰口よりおうと浮かびけり

立秋やどの神となく手を合はす  あぶれ蚊の寄る弁慶の泣きどころ

大鷲の風を呼び込み飛びたてり  巌一つ寒満月を繋ぎ止む

朝日差す富士のごとくに鏡餅   喧嘩独楽手より離れて生き生きと

(ながた みつのり/「火神」主宰・俳人協会熊本県支部長)

一部変更



 

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〜 季語で一句 86 〜2023年『くまがわ春秋』6月号

2023年06月06日 12時50分56秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜 季語で一句 86 〜
◆2023年『くまがわ春秋』6月号が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
・info@hitoyoshi.co.jp 
 ☎ 0966-23-3759
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R5.6月号)
立夏(りっか《りつか》)  「夏-時候」
西村楊子
アルプスの水の山積み夏来る
【永田満徳評】
「アルプス」という措辞がよく、冷やしていなくても、高山の雪解けの清涼な飲料水を思わせる。「山積み」であればなおさら、水分補給が必要になってくる「夏来る」という季語の雰囲気にぴったりである。
【季語の説明】
「立夏」は二十四節気のひとつで、野山に夏の気配が立つ、5月6日ごろ。春分と夏至の中間にあたり、昼と夜の時間で季節を分けるとき、暦の上ではこの日から夏が始まる。活気に満ちた季節の到来を感じさせる。季節が一歩進んだ感じが漂い始める。「八十八夜」も過ぎて、新緑がまぶしく、美しい時期である。
代搔く(しろかく)     「夏-生活」
西村楊子
映り込む深山ともども代を搔く
【永田満徳評】
「代掻く」は田に水を入れ、土を砕いて均平にして、水が張られた状態。谷間の棚田の田はわずかな青空を映して、とても美しい。「深山ともども」がいかにも山間部らしい代掻きの田の風景を描いている。
【季語の説明】
「代」は植代のことで、苗を植える田のこと。「代掻く」は鋤起こした田に水を張って、土を細かく砕き、田の底を掻きならし、土の表面を平らにし、肥料を土中に混ぜる作業。田植の準備ができた田を「代田」という。昔は牛や馬に馬鍬を引かせて行っていたが、近年は機械化されて、代掻く牛馬を見かけなくなった。
花水木(はなみずき《はなみづき》  「夏-植物」
杉山 満
オープンカー缶を引きずり花水木
【永田満徳評】
「缶を引きずり」に、新婦と新郎が「オープンカー」に乗って、結婚式に参列した人達をあとにして、新婚旅行に旅立ってゆく情景が見える。しゃれた明るさのある「花水木」がその情景に彩りを与えている。
【季語の説明】
「花水木」は北米原産で、日本へは明治に贈った桜の返礼として贈られてきた木。白と紅があり、4枚の花びらの先に切り込みがある。庭木や街路樹として、新緑も紅葉も赤い実も枯れ姿も四季折々楽しめる。花水木の名は水木の仲間で花が目立つことに由来する。古来の山地や雑木林に自生する水木とは別種である。
 
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