月刊『俳句界』12月号!
〜12月25日発売〜
【特集】
特集「美しい日本と俳句」
テーマ:外国語からみた美しい日本
題:「国際歳時記」発行に向けた[Haiku Column]の取り組み
報告:俳句大学国際学部講師・向瀬美音
「国際歳時記」発行に向けた[Haiku Column]の取り組み
俳句大学国際俳句学部のFacebookグループ[Haiku Column]を立ち上げて三年目になる。私は責任者として[Haiku Column]の管理をしている。[Haiku Column]では三行書きにしただけで散文的なHAIKU(国際俳句)が流通していることに危惧を覚え、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提案してきた。
2018年7月現在、参加メンバーは1500人を超えて、一日の投句数は200句を下らない。世界中の人と毎日句会をしている感じである。言語もフランス語、英語、イタリア語と多様である。投稿されてくる国も、フランス、イタリア、イギリス、アメリカ、チュニジア、モロッコ、アルジェリア、インドネシア、インド、台湾と多様である。瞬時に交流できるFacebookという国際情報ネットワークの恩恵を受けている。また、私は毎年フランスに行き、海外の俳人と交流を図っている。今年はマブソン青眼氏のフランス講演に参加し、[Haiku Column]のメンバーとともにパネルディスカッション、食事会を共にした。日本の俳句の国際化と行き詰まったフランス俳句界の未来について語り合い、HAIKUによる国際交流の大切さで意気投合した。
私は毎日、[Haiku Column]に投句される作品をすべて読み、「切れ」があるものや「取り合わせ」が良くできているものを訳している。俳句大学学長の永田満徳氏はその訳を参考にして選び出し、「daily best 3 Haikus」と題して[Haiku Column]に発表している。さらに、永田氏はHAIKUの基準を明確にする目的で「7つの俳句の規則」を提示した。これらの試みによって、初めは説明的で観念的なHAIKUが多かったが、最近は形容詞・動詞などが減ってきて、省略の効いたものになってきた。具体的なものに託し、読み手に任せるという形になってきている。時々ハッとさせられるものに出会い、日本人には絶対思いつかない新鮮な感性のあるものに驚かされる。そういう時はHAIKUの醍醐味を感じる。
さて、私は世界に通用する季語を400厳選して英語、フランス語に編集した。[Haiku Column]ではこれら季語を紹介するために、「We will challenge KIGO」と題して、季語を使ったHAIKUを毎日募集している。季語だけでなく、季語の本意を添えて提示するようになってからメンバーの関心がとみに増して、一日で250句ほどの句が集まる。ほとんどのHAIKUに季語が入るようになった。季節のない国もあるので季語は無理かと考えていたが、インドネシアの俳人の投句が多く、俳句は季節の詩という認識が世界で広まっているのを感じる。今後は「We will challenge KIGO」の秀句を例句として「国際歳時記」を出版するつもりである、
[Haiku Column]では機関誌『HAIKU』(朔出版)を出している。2017年7月発行の創刊号にフランス語圏、イタリア語圏、英語圏の55人が参加した。同年12月発行の2号では91人が参加した。また、2018年5月発行の3号では96人が参加し、320ページを数える。これまでの機関誌『HAIKU』は自選10句とメンバー自身による一句鑑賞とエッセイが主であったが、12月発行予定の4号では「国際歳時記」の第一段として〔夏〕を載せたいと考えている。
最後に、永田氏が[Haiku Column]から選び、月刊誌「くまがわ春秋」(人吉中央出版社)に掲載している秀句を並べてみよう。
Castronovo Maria
●
aurora boreale -
la coda di una balena tra cielo e mare
【美音訳】
カストロノバ マリア
●
北のオーロラ
空と海の間の鯨の尾
Joëlle Ginoux-Duvivier
●
retour de chasse -
le hameçon de lune épinglé au nuage
【美音訳】
ジョエル ギヌーデユビビエ
●
狩の帰り
雲の中の釣り針のような月
Sarra Masmoudi
●
solstice d'été
la queue du chaton dépasse du bac de menthe
【美音訳】
サラ マスモウディ
●
夏至
猫の尻尾はミントの花壇を越える
向瀬美音(むこうせ みね)
1960年2月5日生まれ
上智大学外国語学部卒業
『HAIKU』(朔出版)発行人兼編集長
上智句会会員、「舞」会員
日本伝統俳句協会、俳人協会、国際俳句交流協会、フランス語俳句協会(AFH)会員
国際季寄せ(朔出版)、句集「詩の欠片」(朔出版)
「俳句界」12月号特集掲載
〜12月25日発売〜
【特集】
特集「美しい日本と俳句」
テーマ:外国語からみた美しい日本
題:「国際歳時記」発行に向けた[Haiku Column]の取り組み
報告:俳句大学国際学部講師・向瀬美音
「国際歳時記」発行に向けた[Haiku Column]の取り組み
俳句大学国際俳句学部のFacebookグループ[Haiku Column]を立ち上げて三年目になる。私は責任者として[Haiku Column]の管理をしている。[Haiku Column]では三行書きにしただけで散文的なHAIKU(国際俳句)が流通していることに危惧を覚え、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提案してきた。
2018年7月現在、参加メンバーは1500人を超えて、一日の投句数は200句を下らない。世界中の人と毎日句会をしている感じである。言語もフランス語、英語、イタリア語と多様である。投稿されてくる国も、フランス、イタリア、イギリス、アメリカ、チュニジア、モロッコ、アルジェリア、インドネシア、インド、台湾と多様である。瞬時に交流できるFacebookという国際情報ネットワークの恩恵を受けている。また、私は毎年フランスに行き、海外の俳人と交流を図っている。今年はマブソン青眼氏のフランス講演に参加し、[Haiku Column]のメンバーとともにパネルディスカッション、食事会を共にした。日本の俳句の国際化と行き詰まったフランス俳句界の未来について語り合い、HAIKUによる国際交流の大切さで意気投合した。
私は毎日、[Haiku Column]に投句される作品をすべて読み、「切れ」があるものや「取り合わせ」が良くできているものを訳している。俳句大学学長の永田満徳氏はその訳を参考にして選び出し、「daily best 3 Haikus」と題して[Haiku Column]に発表している。さらに、永田氏はHAIKUの基準を明確にする目的で「7つの俳句の規則」を提示した。これらの試みによって、初めは説明的で観念的なHAIKUが多かったが、最近は形容詞・動詞などが減ってきて、省略の効いたものになってきた。具体的なものに託し、読み手に任せるという形になってきている。時々ハッとさせられるものに出会い、日本人には絶対思いつかない新鮮な感性のあるものに驚かされる。そういう時はHAIKUの醍醐味を感じる。
さて、私は世界に通用する季語を400厳選して英語、フランス語に編集した。[Haiku Column]ではこれら季語を紹介するために、「We will challenge KIGO」と題して、季語を使ったHAIKUを毎日募集している。季語だけでなく、季語の本意を添えて提示するようになってからメンバーの関心がとみに増して、一日で250句ほどの句が集まる。ほとんどのHAIKUに季語が入るようになった。季節のない国もあるので季語は無理かと考えていたが、インドネシアの俳人の投句が多く、俳句は季節の詩という認識が世界で広まっているのを感じる。今後は「We will challenge KIGO」の秀句を例句として「国際歳時記」を出版するつもりである、
[Haiku Column]では機関誌『HAIKU』(朔出版)を出している。2017年7月発行の創刊号にフランス語圏、イタリア語圏、英語圏の55人が参加した。同年12月発行の2号では91人が参加した。また、2018年5月発行の3号では96人が参加し、320ページを数える。これまでの機関誌『HAIKU』は自選10句とメンバー自身による一句鑑賞とエッセイが主であったが、12月発行予定の4号では「国際歳時記」の第一段として〔夏〕を載せたいと考えている。
最後に、永田氏が[Haiku Column]から選び、月刊誌「くまがわ春秋」(人吉中央出版社)に掲載している秀句を並べてみよう。
Castronovo Maria
●
aurora boreale -
la coda di una balena tra cielo e mare
【美音訳】
カストロノバ マリア
●
北のオーロラ
空と海の間の鯨の尾
Joëlle Ginoux-Duvivier
●
retour de chasse -
le hameçon de lune épinglé au nuage
【美音訳】
ジョエル ギヌーデユビビエ
●
狩の帰り
雲の中の釣り針のような月
Sarra Masmoudi
●
solstice d'été
la queue du chaton dépasse du bac de menthe
【美音訳】
サラ マスモウディ
●
夏至
猫の尻尾はミントの花壇を越える
向瀬美音(むこうせ みね)
1960年2月5日生まれ
上智大学外国語学部卒業
『HAIKU』(朔出版)発行人兼編集長
上智句会会員、「舞」会員
日本伝統俳句協会、俳人協会、国際俳句交流協会、フランス語俳句協会(AFH)会員
国際季寄せ(朔出版)、句集「詩の欠片」(朔出版)
「俳句界」12月号特集掲載