このたび『肥後の城』が第15回文學の森大賞を頂きました。
身に余る受賞のご報告とともに、日ごろの御厚情に心より御礼申し上げます。
本句集は熊本地震と郷里人吉の水害という二つの大災害をテーマとし、熊本城、阿蘇、天草という郷土色を押し出した内容にすべく、心掛けました。
また、熊本在勤時代の夏目漱石が述べた「俳句はレトリックの煎じ詰めたもの」に倣い、修辞の可能性を探るべく、多様な表現を試みました。
つまり、テーマ性と郷土色を盛り込んだ内容の読物になるように努めました。
この内容と表現において、本句集がどれほど成功しているかは覚束ないですが、この大賞を励みにチャレンジしていきたいと思っています。
今後ともご指導のほどよろしくお願い致します。
※「文學の森 各賞贈賞式」は2023年5月16日(火)、新宿の「京王プラザホテル」で行われます。
※月刊「俳句界」(2023年5月号)に、「第15回文學の森賞発表」と題して、「選評」や「受賞句集から自選5句」「受賞の言葉」「略歴」「顔写真」が掲載されます。ご覧頂ければ幸甚です。
※『肥後の城』を機に増刷しましたので、文學の森か、Amazonオンラインでお求め頂ければ幸いです。
令和5年3月22日
永田 満徳
俳句大学国際俳句学部よりお知らせ!
〜Facebook「Haiku Column〜
☆【俳句界】2023年2月号☆
◆俳句総合誌『俳句界』2023年2月号が発行されました。
◆俳句大学 〔Haiku Column〕のHAIKUから選句・選評した句を掲載しています。また、「俳句界」2019年1月号から毎月連載しています。
※ 2021年の『俳句界』10月号から、優秀な作品が揃って来ましたので、1ページ増えて、3ページに渡って掲載しました。
◆R 2・12月号から作者の国名を入れています。人種、国籍を問わず投句を受け入れていることから、その「人道主義的」スタンスが広く支持されています。
◆ 向瀬美音氏は日本語訳の改善に着手している。五七五の17音の和訳は、HAIKUをただ端に日本の俳句の五七五の17音にしただけではなく、原句のHAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に一歩近づくための有効な手立てであることを強調しておきたい。
◆例えば、ある日本の国際俳句大会で「飢えた難民の/前に口元に差し出す/マイクロフォン一本」のような三行書きにしただけで散文的な国際俳句が大会大賞、或いはある国際俳句協会のコンクールで「古い振り子時計―/蜘蛛の巣だらけになっている/祖父のおとぎ話」のような切れがあっても三段切れで冗漫な国際俳句が特選を受賞しているように、三行書きの国際俳句が標準になっていることに危惧を覚えて、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆2017年7月にフランス語圏、イタリア語圏、英語圏の55人が参加する機関紙「HAIKU」を発行しました。12月20日発行の2号では91人が参加しました。また、5月31日発行の3号では96人が参加し、320ページを数えます。さらに、12月26日発行の4号では112人が参加し、500ページを数えます。そして5号では150人が参加して、550ページを越えて、8月1日に出版しました。そして、6号を2020年12月に出版しました。また、2020年3月1日には「国際歳時記」の第1段として【春】、2022年6月には【冬・新年】を出版しました。「HAIKU」6号と「歳時記」春・冬・新年は原句の内容を損なうことなく五七五に訳出しています。
◆総合俳句雑誌「俳句界」2118年12月号(文學の森)の特集に「〔Haiku Column〕の取り組み」について」が3頁に渡って書いています。
◆「華文俳句」に於いては、華文二行俳句コンテストを行い、華文圏に広がりを見せて、遂に、2018年11月1日にニ行俳句の合同句集『華文俳句選』が発行されました。
◆ 二行俳句の個人句集では、洪郁芬氏が『渺光乃律』(2019、10)を〔華文俳句叢書1〕として、郭至卿氏が『凝光初現』(2019、10)を〔華文俳句叢書2〕として、次々に刊行している。さらに、全季節を網羅した「華文俳句歳事記」が2020年11月には刊行されて、これで季重なりの問題が解消されるでしょう。
◆さらに、2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載している。
◆『俳句界』2020年3月号の特別レポートにおいて、熊本大学で行われたラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。
◆どうぞご理解ご支援をお願いします。
The February issue of 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haiku Colum of Haiku University [Monthly best Haikus]〜
◆the February issue of HAIKUKAI俳句界 has just been published.
◆It contains the best haikus of the month selected by M. Nagata.
◆according to the plan, we will continue to publish 2 lines haikus with kire and toriawase.
Février aout de 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haikus du mois de Haiku Colum de Haiku Universite〜
◆ Février aout de HAIKUKAI俳句界 vient d'etre publie.
◆il contient les meilleurs haikus du mois selectionnes par M. Nagata.
◆Selon ce plan nous allons continuer a publier des haikus en deux lignes avec kire et toriawase.
永田満徳選評・向瀬美音選訳(仏・伊)・中野千秋訳(英)
【今月の秀句(monthly excellent Haikus)】
(Facebook「Haiku Column」より)
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シウ ホング‐イレーヌ タン (インドネシア)
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白い紙黒いインクや蕪村の忌
〔永田満徳評〕
「蕪村忌」は与謝蕪村の命日で、12月25日。「白い紙」に「黒いインク」で物を書くか、描くか、どちらかの情景であろう。〈菜の花や月は東に日は西に〉という蕪村の句風に似て、簡潔な詠みである。「白」と「黒」の水墨画的な対比とともに、親しみやすい画風で、俳画の創始者でもある与謝蕪村をうまく描いている。
Siu Hong-Irene Tan(Indonesia)
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white paper and black ink
Buson death anniversary
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
The 'Buson Memorial' is the anniversary of Yosa Buson's death, 25 December. The scene may be of writing or drawing something with black ink on white paper. The poem is simple, similar to Buson's haiku style, "Rape blossoms, the moon is to the east, the sun is to the west". The contrast between the 'white' and 'black' ink painting styles, as well as the familiar painting style, successfully depicts Yosa Buson, who was also the founder of haiga.
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アンヌ‐マリ ジュベール‐ガヤール(フランス)
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寒月やこの拒絶はなぜだらう
〔永田満徳評〕
「寒月」は冬の夜空の空気が澄みきって、玲瓏と冴えてみえる月。特別悪いことをしたことがないのに、相手にされないことがある。身に覚えのない「拒絶」にあって、嫌な思いをしたことはだれしも経験があること。冴え冴えとした「寒月」という季語との取合せによって、人間関係の不可解で不条理な場面をうまく捉えている。
Anne-Marie Joubert-Gaillard(France)
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lune d'hiver
pourquoi ce rejet ?
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
La "lune froide" est la lune où l'air du ciel nocturne d'hiver est clair et semble lumineux et brillant. Il arrive que l'on ne vous prenne pas au sérieux, même si vous n'avez rien fait de mal. Nous avons tous vécu un rejet dont nous ne nous souvenons pas, et nous nous sommes tous sentis mal à l'aise. L'association du mot saisonnier "cold moon" (lune froide) et du mot lumineux et brillant "cold moon" (lune froide) rend bien les scènes inexplicables et absurdes des relations humaines.
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キム オルムタック ゴメス(オランダ)
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輝ける海の真珠を持ちて牡蠣
〔永田満徳評〕
「牡蠣」は別名「海のミルク」と呼ばれ、牛乳のように栄養素をバランスよく含むことで知られている。牡蠣のような、内側がキラキラした二枚貝は真珠を作り出すことができるという。「輝ける海」の措辞がよく、冬日にかがやく、あるいは冬の月にひかる海の「真珠」を身の内に育てるという発想は詩的で、実に美しい。
Kim Olmtak Gomes(Holland)
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oyster
blinking sea pearls
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
'Oysters', also known as 'milk of the sea', are known to contain a balance of nutrients like milk. Oyster-like bivalves with a sparkling interior are said to be capable of producing pearls. The phrase 'the shining sea' is well worded, and the idea of cultivating within oneself the 'pearls' of the sea, glistening in the winter sun or shining in the winter moon, is poetic and truly beautiful.
【今月の季語(Kigo of this month】
(Facebook「Haiku Column」より)
【 立冬 りっとう rittou / the first day of winter / premier jour de l’hiver 】
ナニ マリアニ(オーストラリア)
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立冬や雀の声の新しく
Nani Mariani (Australia)
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first day of winter
the chirping of sparrows is not like yesterday
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ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)
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立冬や角のパン屋の閉じられて
Nuky Kristijno(Indonesia)
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first day of winter
the bakery on the corner is closed
【 小春 こはる koharu / Indian summer / été de la Saint- Marin 】
ザンザミ イスマイル(インドネシア)
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ベストセラーの本とお茶ある小春かな
Zamzami Ismail(Indonesia)
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Indian summer
bestselling book and hot tea on the table
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タンポポ 亜仁寿(インドネシア)
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小春日や老バリスタの珈琲店
タンポポ 亜仁寿(Indonesia)
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Indian summer -
smiling old barista at coffee shop
【 初雪 はつゆき hatsuyuki / first snow / premiére neige 】
ローザ マリア ディ サルバトーレ(イタリア)
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初雪や幸せさうな赤き頬
Rosa Maria Di Salvatore(Italy)
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first snow
red cheeks and happiness
prima neve
guance rosse e felicità
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キム オルムタック ゴメス(オランダ)
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初雪や犬は尻尾を振りまはす
Kim Olmtak Gomes (Holland)
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first snow
the joy in my dog's wagging tail
【 波の花 なみのはな naminohana / foam of the wave / écume des vagues 】
アンヌ‐マリ ジュベール‐ガヤール(フランス)
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波の花日はどんどん過ぎてゆく
Anne-Marie Joubert-Gaillard (France)
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les jours s’ajoutent aux jours-
reste l’écume des vagues
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ナニ マリアニ(オーストラリア)
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留まらぬ人生であり波の花
Nani Mariani(Australia)
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foam of the wave
the story of a life that keeps moving
【 クリスマス くりすます kurisumasu / Christmas / Noel 】
Isni Heryanto(Indonesia)
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boy out of the slide at the mall
Christmas
イシ ヘルヤント(インドネシア)
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クリスマス子が飛び出して滑り台
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ナッキー クリスティジーノ(インドネシア)
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クリスマスしかと抱きしむる貯金箱
Nuky Kristijno(Indonesia)
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Christmas
holding her piggy bank dearly
【 芭蕉忌 ばしょうき bashoki / Basho death anniversary / anniversaire de la mort de BASHO 】
キム オルムタック ゴメス(オランダ)
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芭蕉忌や俳句匂はす彼の筆
Kim Olmtak Gomes (Holland)
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Basho's death anniversary
haiku memories from his ink brush
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チュイリエ フランソワーズ(フランス)
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芭蕉忌や心と俳句は一つなり
Thuillier Françoise(France)
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anniversaire de la mort de Bashô
ils écrivent d'un même coeur et partagent leurs haiku
【冬景色、ふゆげしき、fuyugeshiki / winter landscape , winter scene / paysage d'hiver 】
クローディア ロマナ コド(フランス)
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冬景色ホットココアと開いた本
Claudia Ramona Codau(France)
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paysage d’hiver -
du chocolat chaud et un livre ouvert
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ミレラ ブライレーン(ルーマニア)
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冬景色すべての色はひとつへと
Mirela Brailean(Romania)
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winter landscape -
all colors in one
【 落葉 おちば ochiba / fallen leaves / feuilles morte 】
ジーナ ボナセーラ(イタリア)
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落葉舞ふカラフルな縞に風の吹き
Gina Bonasera(Italy)
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foglie morte-
su strisce colorate alita il vento
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マリン ラダ(ルーマニア)
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落葉の絨毯日輪はいつも金の糸
Marin RADA (Romania)
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tapis de feuilles -
le soleil brille toujours fils d'or
俳句大学国際俳句学部!
Facebook「華文俳句社」
〜【俳句界】2023.2月号〜
◆2023年『俳句界』2月号が発行されました。
◆華文圏に俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載しています。
◆どうぞご理解とご支援をお願いします。
俳句大學國際俳句學部的通知!
~Facebook 「華文俳句社」Kabun Haiku 2023・2〜
◆2023年『俳句界』2月號已出版。
◆於華文圏提倡包含俳句的基礎「一個切」和「兩項對照組合」的二行俳句。
◆請各位多多支持指教。
華文俳句【俳句界】2023,2月号
永田満徳選評・洪郁芬選訳
冬暖
擦背的小曾孫
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鐵人
〔永田満徳評論〕
「冬暖」是一個季語,表達了冬天的溫暖和平靜,讓你忘記寒冷,讓你感受到冬天的祝福。為了讓祖父感覺好一些,小曾孫正在為他擦背。孫子或小曾孫都是祖父心頭的一塊肉。此刻曾孫為他搓背,並有冬日的溫暖相扶,他沉浸在幸福中。
冬暖か背中をさするひ孫かな
●
鐵人
〔永田満徳評〕
「冬暖か」は寒さを忘れるような日の暖かさ、穏やかさを言い、冬の恵みを感じさせる季語。「ひ孫」が元気にしたい、良くしてあげたい気持で祖父の背中をさすっている情景だろう。孫やひ孫という存在は目の中に入れても痛くないほど、かわいくてたまらないもの。ひ孫から背をさすられ、冬の暖かさも手伝って、幸せな気分に浸っているところがうまく描き出されている。
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中藥行玻璃窗的廣告
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立冬
明月
〔永田満徳評論〕
「立冬」是秋天的尾聲。天氣雖然尚未嚴寒,但北風呼嘯,初有入冬的跡象。「藥屋」在作者的原文裡是「中藥行」。例如葛根湯或桂枝湯等,都是治療感冒的草藥。隨著冬天來臨,中藥行的「窗戶」玻璃上貼了感冒藥等「廣告」。作者看到廣告,便知道冬天來了,這一點讓我感同身受。
薬屋の窓に広告冬立てり
●
明月
〔永田満徳評〕
「立冬」は秋が極まり、寒さはそれほど厳しくないが、心なしか吹く風も冷たく、冬の気配が立ち始める日。「薬屋」は原句では「漢方薬の店」。風邪対策の漢方薬と言えば葛根湯・桂枝湯などがある。冬を迎えて、風邪薬などの「広告」が「窓」のガラスに貼り出されている風景であろう。薬の広告を目にしたことによって、冬の到来を覚えている点で共感できる。
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蹲後巷刷牙的芳鄰
冬暖
●
胡同
〔永田満徳評論〕
踏入台灣的「後巷」,如畫的懷舊風景與復古的都市風光交相輝映。在狹窄的巷落裡,可以找到許多老牌的店鋪,也是逛街的好去處。暴露在風中的後巷,一大清早就有人在刷牙。這真是冬暖中的情景!它成功地捕捉了一個尋常小鎮的新的一天。
路地裏の歯磨く人や冬暖か
●
胡同
〔永田満徳評〕
台湾の「路地裏」に一歩足を踏み入れると、レトロな街並みが広がっていて、懐かしく、絵になる風景に出会うことができる。路地裏で見かける「巷」(店) は古くから営業しているところも多く、散策を楽しむ場所でもある。吹きさらしの「路地裏」で、早朝歯磨きをしている姿は「冬暖か」ならでの情景である。庶民的な裏町の一日の始まりをうまく切り取っている。