私は上野公園を訪れたら、できるだけ西郷さんの銅像に立ち寄るようにしています。詩吟のイベントでも、西郷さんの漢詩が好きで、たびたび吟詠してきました。改めて、『南洲残影』江藤淳著(文藝春秋刊行、1998年)を読み、西南の役で鹿児島に敗走する場面を読み、心打たれました。
【196~197ページ】
現地の農民を道案内に立て、行軍の規約として、(1)喫煙せぬこと、(2)敵と遭遇してもみだりに発泡性のこと、(3)談話を交えぬこと、(4)道標として白紙を草木に結ながら行くこと、の4箇条を以ってした。かくして薩軍の残兵は進路を可愛嶽に取り、官軍の篝火が明滅するあいだを縫って、夜中の進軍を開始したのである。
もとより地図はない。道らしい道もない。行く手の断崖絶壁は、樵すら足を踏み入れぬところで、岩角を伝っては転び、木の根をつかんでは攀じ登り、兵士たちは喘ぎながら闇の中の----。
【196~197ページ】
現地の農民を道案内に立て、行軍の規約として、(1)喫煙せぬこと、(2)敵と遭遇してもみだりに発泡性のこと、(3)談話を交えぬこと、(4)道標として白紙を草木に結ながら行くこと、の4箇条を以ってした。かくして薩軍の残兵は進路を可愛嶽に取り、官軍の篝火が明滅するあいだを縫って、夜中の進軍を開始したのである。
もとより地図はない。道らしい道もない。行く手の断崖絶壁は、樵すら足を踏み入れぬところで、岩角を伝っては転び、木の根をつかんでは攀じ登り、兵士たちは喘ぎながら闇の中の----。