恋する歌音 こころに効く恋愛短歌50 (集英社文庫) | |
クリエーター情報なし | |
集英社 |
☆☆☆
短歌とエッセイも素敵だが、挿画がおしゃれ。
アンチークレースのリボンを思わす、帯の装飾・・・これだけでも手元に置いときたくなる。
古今の名歌50に、佐藤真由美さんの歌が応える。
今も昔も、想いは同じ・・・・・古き万葉の時代でも、恋する歌音(カノン)
カノンとは、与えられた一声の旋律に対して、あとから他の声部が、一定の間隔をおいて、
忠実にまねていくか、同時に出発した他の声部が、ちがった法則にしたがって(たとえば原主題を
拡。大して)、まねていく音楽である。・・・・
(高校一年の時使ってた、属啓成著、「楽典と楽式」より、物持ち良いでしょう・・・この本、私の音楽でのバイブルです。)
では、このカノン形式にしたがって気にいった歌音をご紹介すると・・・。
[恋はクールに]
君待つと我が恋ひをればわが屋戸の すだれ動かし秋の風吹く 額田王(万葉集)(8世紀半ば頃)
メール打つ手が震えても あなたにはわからないのがなんか悔しい 佐藤真由美
[せつない片思い]
われを思ふ人を思はぬむくいにや わが思ふ人の我をおもはぬ よみ人しらず(古今和歌集)(905頃)
あの人に会うかもしれない それだけで選んだ服をきょうも着ている 佐藤真由美
[不倫は蜜の味]
明治屋に初めて二人で行きし日の 苺のジャムの一瓶終わる 俵万智(1997年)
略奪はしません お借りするだけです 返すかはまだ決めてませんが 佐藤真由美
[言わなかった言葉]
かの時に言ひそびれたる 大切の言葉は今も 胸にのこれど 石川啄木(1910年)
ああ言えばよかった メール打ちかけて 消してわたしは短歌を作る 佐藤真由美
[言葉にしなきゃ]
恋ひ恋ひて逢へる時だに 愛しき言尽くしてよ 大伴坂上郎女(万葉集)(8世紀半ば頃)
言葉より気持ちが大事 そんなこと 仕事のときは言わないくせに 佐藤真由美
[変わらぬ想い]
月やあらぬ春や昔の春ならぬ わが身ひとつはもとの身にして 在原業平(古今和歌集)(905年頃)
夏なので夏の感じを思い出す 去年はここにいなかったけど 佐藤真由美
[正妻の孤独]
嘆きつつ独り寝る夜の明くる間は いかに久しきものかは知る 藤原道綱母(蜻蛉日記)(975年頃)
泣きながら眠っていつも朝だけが わたしを裏切らずに来てくれる 佐藤真由美
[颯爽と生きる]
あっさりとカシミアセーター着くずして 自転車に乗るように生きたし 松平盟子(1990年)
渡ろうとする信号が全部青 そんな日もある 忘れてたけど 佐藤真由美
[何回しました]
一度だけ本当の恋がありまして 南天の実が知っております 山崎方代(1980年)
この恋が本当の恋だといいね 最後の恋にならなくっても 佐藤真由美
[われても末に]
瀬をはやみ岩にせかるる滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ 崇徳院(詞花和歌集)(1151年)
十年後でも会いたいと あの店で泣いた夜から九年がたつ 佐藤真由美
【拡大カノン】【縮小カノン】【無限カノン】【循環カノン】【逆行カノン】【転回カノン】と色々あるが、
今、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を聴いています・・・・。
今も昔も、想いは同じ・・・・・古き万葉の時代でも、恋する歌音(カノン)
言葉だけの世界に入ってしまう短歌だけに、ところどころにある挿絵は心の中に色が冴える。
挿画はすべて・・・山口由紀子さん
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