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大森静佳さん24歳の時の歌集で、沢山の短歌賞を受賞した歌集。大学四年間の歌を集めたモノらしいけど、若々しさのみずみずしさと熟したものかげとが微妙に混ざっている。
不思議義なのは、上の句と下の句の関連性が離れていて、途中から並んでいる二首の下の句を入れ替えて遊びだした・・。へそ曲がりの、ごまめでおました。
・冬の駅ひとりになれば耳の奥に硝子の駒を置く場所がある
・途切れない小雨のような喫茶店会おうとしなければ会えないのだと
・そばにいるひとの思いがツユクサに触れて離れたあとに晩夏は
・夕空がしずかに吸うように君の言葉をいま聞いている
・遠ざかるビニール傘の骨は透けてもうしばらくは今日であること
・性欲に向きのあることかなしめりほの白く皺の寄る昼の月
・雨脚が細くなりゆくつたなさにふたりはひとりよりもしずかだ
・眠るひとの手首に指で輪をつくる窓辺に月の雨はこぼれて
・手鏡を折りたたむとき閉じ込めたあれがほんとうの月夜だった
・売ることも買うこともできる快楽、と思いつつはぷはぷ牛乳を注ぐ
・空はいつわたしへ降りてくるのだろう言葉の骨に眩みゆく夏
・感情を飼い馴らしてはならぬから版画の暗さに冬が来ている
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