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偶然手にしたこの歌集も、第八回現代短歌社賞受賞作「蓮池譜」を改稿したものとか。歌人は仕事人であったようで職場での歌も多く、仕事にまつわる言葉も多く見受けられどこか都会の冷え切ったビルのなかを彷彿させる。目でからの情報ではなく、頭の中でめぐる情報で満たされる言葉で紡ぐ歌。どこかシステマチックで人の感情とは離れて見ている。
ということで、気になった歌は少な目
・色彩をしばし冬木に貸し与えメジロの羽はふくらみゆけり
・旅行者は順につかれて朝を待つにおいのしないフードコートで
・今日ひとひ無駄にサドルを温めた自転車むだにサドルをはたく
・百日紅はつはつひらく坂道をのぼればのぼるほど雲が重いよ
・がんに慣れがんに馴れずに吐く祖父へかたち無きまでなすを煮るのみ
・かなぶんを拾う ただしい向きに置く 出窓の西は雨雲である
・共通の友の不幸が回線を行き来してゆききして夕暮れ
・荷造り紐食って瀕死のルンバにも微笑む 子など持つまい子など
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