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我が岸城短歌会の講師である金川宏先生の第4歌集。
難しい、難解。二十数年の休止のあと活動を開始された金川先生。そこにはどんな気持ちの変化があったのか、それも時を経た今に大いに交わっているようです。
ご自分は小さな存在、一方、水や火、木、風、地、光、と人間が所有できない地上の原始的現象は無限であり、そういうものを通してご自分を天球儀の中から俯瞰されてる。
でも、やはり、歌は難解。私の日常生活をそのまま写す短歌からは遠いところにある歌ばかり、その中でも辛うじて絵が浮かぶ歌だけ抜粋しました・・。
どこにいるのかいつからいるのかだれなのかわからないまま 一生
石の奥処にまた石ありてその石のまなざしに棲む青き舞踏は
空にふかく鰭ふれあわせああいずれあなたはとおくゆらぎさる虹
紙に浸す鉛筆のさき息つぎのように言葉は雲を翳して
生きていた記憶をそこに象って髪に泡立つひかりの粒よ
傘立てに押しあうビニール傘らみな雨の歌うたうアノニマスの午後
いつまでここにいるつもり 午前零時半、無花果の裏庭で風になる
傘ふたつ野に消えゆきて春浅き墓のほとりは薄日射したり
過去にまたその過去ありて遡行する樹の水脈に虹は架かれり
まち針にチャコと型紙ミシン油のにおひのひとは吾を生みしひと
どこにもない季節に逢ひに行ったまま もしやけふ母を見かけませんでしたか
崩れやうとする波がしらにきいてみる もしやけふ母を見かけませんでしたか
朝のかげうすき舗道に潰れたる銀杏にほふ生き恥のごと
やはらかき灰のなかよりたちあがるかなしみといふひかりの器
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