だいぶ前に描いた小品ですが、カードシリーズの中に入れてみることにしました。
これは「月の庭」。月世界にある庭です。木はもちろん、月の桂でしょう。静やかな天使と瞳をみかわせながら、小さな月の子に寝床を提供している。月の子は大変な仕事をしているからです。
月は、闇夜をもやさしく照らしてくれる光。どんな深い夜の闇も、否むことなく、父を慕う子のように無邪気に、静かに、ひたりよってくれる。誰に知られることなく、すべての人の心に触れ、その人をもっとも苦しめている傷を探っている。
それが月の子の仕事です。月は、罪に沈む人の心を、最後に許すために、あらゆることを準備せねばならないのです。
何もかもが壊れ、すべてを失ってしまっている。事実上、あらゆるものが、馬鹿なことになってしまっている。それでも、なんとかせねばならない。何をやっても、結局は無駄なことに帰してしまうというのに、みんなを助けるために、その馬鹿な役目をせねばならない。そういうときがあります。
何もかも無駄なのです。それをやっても、元に戻るということは絶対にない。なぜなら、もう、一切はなくなっているのに、無理やりあることにしているからです。馬鹿な人間を助けるために、あらゆるものが協力して、恐ろしく愚かなものを作ってしまった。その整理をせねばならない。
馬鹿なことを、すっかり馬鹿なものにしないために。すべてはなくなっても、みんなのやってくれたことを、恐ろしく愚かな醜いことにしてしまわないために、やらねばならないことがある。そのとき、最後に祈る場所が、ここ、「月の庭」なのです。
月は、すべてを救うからです。
月は、教えてくれます。それをやれば、ひどいことにはなりきらないという、最後の一手を。しかしそれは、引き換えに、人間にもっとも苦しい選択を迫ることにもなるのです。
それはたとえば。
もっとも憎む相手を、許すこと。
もっとも嫌いな相手を、愛すること。
もっとも反発している人に、助けを求めること。
つまりは。その人がそうなることになった、もっとも愚かな過ちを、認めねばならないということなのです。
それで、すべてが愚かな虚無に潰えることが、防げる。
このカードの意味は、「最後の救い」です。