読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

佐々木譲の北海道警もの

2010年03月13日 | 読書

「巡査の休日」佐々木譲著 角川春樹事務所2009年10月刊

  私立図書館に予約した本が届いて一気に読んだ。佐々木譲の北海道警ものの
 シリーズ第4弾最新版である。

  強姦殺人犯のストーカーを警護に当たっていた小島百合巡査が発砲し取り押さ
 えて逮捕。しかし犯人は病院から脱走し身をくらます。その男が「よさこいソーラン
 まつり」の警備体制の最中、再び以前のストーカー相手に不気味なメールを寄せ
 始める・・・。当然小島は専任警備に当たることになる。話は主として小島百合中
 心の展開である。
  しかし一方佐伯警部補が3年前に担当したの四輪駆動車密輸事件事件に有罪
 の一審判決が出た。佐伯は再び悩む。再審請求が出たら道警幹部等キャリアの
 でっち上げで罠に嵌った立場の被告らをこのままにしていいのか。でっち上げ麻
 薬密輸事件で服役している郡司警部を証言台に立たせ真実を語らせるべきでは
 ないか。(この先は言わない。)  

  今回の話はおなじみの警官が総出という感じではあるが、例の強姦殺人犯確
 保が主題なので、連携の付け方が難しかったのだろう、盛り上がりがいまいちで
 ある。珍しく大団円の場面も和気藹々。良かった良かったという雰囲気で、・・・
 良かった。

  小島巡査は佐伯警部補に好意以上の気持ちを持っている。佐伯も小島を憎か
 らず思っている。互いにそうした気持ちでいることを知っている。だから「よさこい
 ソーランまつり」にランチを誘われたときに、即「了解」と返信したのだ。
  歳は一回り違うがお互いバツいち。フィーリングが合う間柄だが一向に一定の
 間隔があって、それ以上の進展がない不思議な関係。佐伯の性格もあるが、警
 官の職業柄という面もある。間が悪いのである。今回もこのランチは実現しなか
 った。

  警官は離婚率が高い。特に刑事はいつ何時事件が発生するか分からない。時
 間構わず呼び出し、張り込みで、約束は破られるは、家族の団欒も、夫婦の会
 話も途絶えがち、妻としては我慢も限界ということになる。警官同士なら理解が
 あってうまくいくかというと、なかなかそうもかなないようだ。

  今平行して読んでいるアメリカの警察小説「黒幕は闇に沈む(上・下)」(ディビッド
 ・L・リンジー)新潮文庫2001.3刊の主人公ヒューストン市警犯罪情報課マーカス
  ・グレーバーはもっと悲惨で、妻が若い弁護士と駆け落ちしてしまって独り者。警
  部だから秘書がついていて、その秘書は女性としても魅力的で、仕事も信頼で
 きる、好もしい女性と思っている。また、彼女の方も、警部を上司としても男性と
 しても、信頼し尊敬している。この二人にとって唯一の難点は、もし今の微妙な
 関係を越えたならば、仕事の上でどんなゆがみが出るか、それが怖くて、両者と
 も関係の進展を図れない。
  こんな状況はどこの組織でも起こりうる。仕事を取るか私生活・自分の人生を
 取るか。ジレンマである。

         

   
         (この項終わり)

 

コメント
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