◇浄土ヶ浜
「さながら極楽浄土のごとし」と、この地を訪れたさる僧が言ったという「浄土ヶ浜」
は岩手県の指定名勝。
白砂青松の景観は陸中海岸の一番の観光名所だろう。
ただしここは海水浴場百選に選ばれた地点ではあるが白い砂ではない。白い
岩山は石英粗面岩で、海岸は多分同質の石浜である。
宮古駅からバスで20分(210円)で終点の「奥浄土ヶ浜」に着く。ここにはレストハウス
が置かれている。
徒歩で5~6分も歩くと「浄土ヶ浜マリンハウス」というお店があって、ここから「さっぱ
船」を使った観光ボートが出ている。
定員4名というボートで20分間の湾内観光。1人1,500円なので2人で3,000円。
この先にある遊覧観光船は40分1,200円なので、随分ぼろい商売と思うが、大型
観光船が行けない「青の洞窟」を初め、浄土ケ島・剣の山・賽の河原・子安地蔵・
血の池など要所を巡って解説してくれるので、ま、そう高くはないか。ウミネコ用
に「かっぱえびせん」をサービスしてくれた。
「青の洞窟」は、イタリアのカプリ島が有名であるが、ここは奥行きはせいぜい20m
くらい。その更に奥には引き潮でないとは入れない洞窟がある。その先を辿ると
青森県八戸に通じているという言い伝えがあり、地元では「八戸穴」と呼ぶ。
規模は小さいなりに入り口からの外光を受けて海水がエメラルド色にたゆとい、
神秘的である。天気が良ければもっと色鮮やかであったかも。洞窟は低いので
船にはヘルメットと救命具を着けて乗る。
この近辺は海側からしか行けないので、岩牡蠣がたっぷりと岩礁にへばりつ
いている。山からロープ使って下り密漁する輩もいるとか。岩場には若布・昆布
なども沢山ゆれている。ウミネコが観光客のばら撒くかっぱえびせんなどを狙っ
て沢山群れている。
さらに歩いてトンネルを抜けると大型観光船の発着所があり、このターミナルビルの
横にこのほど「ビジターセンター」が出来て4月にオープンした。環境庁が8億円を投じて
作った。最新映像技術をふんだんに取り込んでいて見ごたえはあるが、またも
お荷物になるハコモノ施設と化すのではと余計な心配をさせる。
◇釜石から気仙沼へ
駅前の割烹で昼食をしたため、山田線で釜石に向かう。
山田線は盛岡と宮古・釜石を結ぶ。かつて新鮮な魚介類をいちはやく内陸部
に運ぶ貴重な輸送手段としての期待が大きかったが、いまや1日に4往復という
日本一の超閑散路線となっている。
岩手横断鉄道への期待は早く、1892年(明治29年)既に鉄道敷設法の調査路
線になっているが、工事費用や輸送需要への懸念から難行した。岩手出身の
首相原敬も力を入れ、「いったい需要があるのか。あの辺には猿しかいないで
はないか。」と質された際「法律をよく読んでいただくとお分かりになることであり
ますが、わが国の鉄道法では猿は乗せないことになっております。」と答えたと
か。1935年(昭和10年)に漸く開業した。
釜石間での路線はさらに遅く、1939年(昭和14年)に漸く開業した。
釜石ははわが国近代製鉄発祥の地として知られる。駅頭にたたら製法から
近代高炉製鉄導入に貢献した南部藩大島高任の胸像がある。
その後この地は官業・日鉄・富士製鉄・新日本製鉄釜石製鉄所として歴史を
刻んだが、平成元年高炉は廃止され、現在は線材だけ生産されている。
◇天然の良港・気仙沼
陸中山田から気仙沼まではリアス式海岸のため、深く入り込んだところが港や
浜辺で、鉄道はこのような地をトンネルで結んで進むことになる。宮古・山田・大槌
・釜石・唐丹・吉浜・三陸・大船渡・陸前高田・気仙沼全て天然の良港である。
釜石から乗り換えた三陸鉄道南リアス線は「盛駅」で大船渡線に乗り換える。
気仙沼の宿は高台でしかも居室が5階のため眺望が良く、気仙沼港と著名な
リゾート地・大島も遠望できた。
その夜は「ふかひれ」や「あわび」、「うに」など山海(というか海鮮)の珍味に舌
鼓を打った。おまけにサッカー決勝トーナメント日本対パラグァイ戦を2時まで観戦し、
寝不足の眼でしょぼ降る雨の中気仙沼魚市場の「海鮮市場海の市」を覘いた
あと、再び大船渡線に乗り一ノ関から新幹線経由で帰宅した。
昼食:魚元 吉里吉里国の入り口? 釜石・大島高任の銅像
唐丹の海岸 南リアス線のトンネル 並んだ山海の珍味
なまうに あわびの陶板焼き ふかひれ煮
海鮮炊き込みご飯・ふかひれスープ 気仙沼港 気仙沼港
(以上この項終わり)