◇ 『父のひと粒、太陽のギフト』 著者: 大門 剛明 2012.11幻冬舎 刊
先ごろ大沢在昌の『Kの日々』を読んで和製ハードボイルドを満喫したが、家人がリクエスト
して借りた本、大門 剛明の『父の一粒、太陽のギフト』が空いていたのでそのまま借りて2日
で読み切った。
大門 剛明の本はかつて『氷の秒針』、『共同正犯』を読んだ。本書は一見青春ものとも思い
惑うが、減反政策や個別所得補償制度をはじめ農業政策の問題点を指摘し、今焦点となっ
ているTTPの行方についても触れるなど、社会性も含んでいる。
主人公は新潟大学は出たもののニート状態にある青年・小山大地。ひょんなことで新しい農
法で成功しつつある農園で働くことに。農園の社長雄太は農薬・化学肥料を使わない農法を
めぐって地域の農家と確執があって村八分にあっている。その社長が突然田んぼで死んだ。
大地は誰かに殺されたのではないかと疑い、優太の息子優翔(ハルト)と不審な点を解明し
ようと駆けまわる。
ぐうたらニートだった大地が後半急に頭脳明晰な素人探偵になって事件の解明に当たると
ころ、12歳の少年が急に18歳くらいの知性のヒラメキを見せたりするところが面白い。
都会からの農業参入者の新しい試みと旧来の因習に慣れた農家の確執が生み出した悲劇
であるが、意外な結末が待っている。
懐かしい故郷の越後平野が舞台になっている。しかし、燕市の山間(やまあい)にある小さな
村・・・といった個所(p51)では(?)燕市は蒲原平野の真ん中で山などどこにもないのだがと
不審に思う。加茂市とか三条市なら条件にあっていたかも。
謎解きが主たる狙いの作品と割り切らないとエンディングがやや唐突の感がすることは否め
ない。
(以上この項終わり)