読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

マイクル・コナリーの『チェイシング・リリー』

2015年03月14日 | 読書

◇ 『チェイシング・リリー(原題:CHASING THE DIME)』 
                著者:マイクル・コナリー (Michael Connelly)
                訳者:古沢嘉通・三角和代        2003.9 早川書房 刊

   

      引っ越しした際に取得した電話番号に、以前の持ち主あての電話がひっきりなしに掛かって
  来る。ほとんどがホテルの一室からの男性から。
   どうやら前の持ち主はリリーといって、娼婦らしい。

   ヘンリー・ピアスは「アメディオ・テクノロジーズ」というベンチャー企業の代表。スタンフォ
  ードを出た天才的生化学者で、革新的ナノテクで分子コンピュータの開発に取り組んでおり、今
  まさに特許取得と投資者獲得の関門に立っている。
   ピアスは、事業展開のこんな大事なときに、なぜか以前の電話の持ち主探しに没頭する。実はピ
  アスには今は亡き姉にまつわる痛ましい過去があった。

   最高のストーリーテラーとの評価が高いマイクル・コナリーが展開するノンストップサスペンス。
  最後まで「まちがい電話」を仕組んだ裏の人物がわからない。
   前の電話の持ち主リリーのホームページからウェブサイトの管理会社とデートクラブ経営者を
  探り出したが、リリーは数週間前から行方がわからないという。一緒に働いていたロビンは答え
  を渋る。ピアスはどんどん深みにはまっていく。大学時代からの親友コーディー・ゼラーの手を
  借りてハッキングでデートクラブ経営者の実像を探って貰うと、アダルト娯楽産業の大物ビリー
  ・ウィンツが浮かんできた。
   ようやく探し出したリリーの家で突然の失踪を確信する。さらにリリーが仕事用に借りていた
  部屋を探し出すとそこには明らかに殺人を示す血痕が。届けを聞いた警察は先ずピアスを疑う。
   その夜ピアスは二人の男に死ぬほどコテンパンに痛めつけられる。その一人はビリー・ウィ
  ンツ。 
   ピアスの借りているトランクルームからリリーの死体が入った冷凍コンテナーが見つかった。
  仕組まれた罠によってピアスは窮地に追い詰められた。そしてピアスは意外な黒幕を知る。
   そして彼のラボで繰り広げられた銃撃戦で犯人らは死ぬ。疑いが晴れたピアスらは無事に特許
  申請を果たし、新たな開発資金出資者さがしに取り組むことになった。

   原題のチェイシング・ダイム(Chasing The Dime)とはダイム(10セント硬貨)を追っ
  てという意味だが、Dimeには定冠詞 the が置かれている。実はピアスが目指す分子コンピュータ
  は現在実用化されているシリコンチップに代わる分子メモリー・アーキテクチャーによって
  Dime大のコンピュータが実現されるという夢の世界を追い求めることを指し示している。

                                   (以上この項終わり) 
    
   

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