読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

岡村直樹の『時代小説で旅する東海道五十三次』

2019年02月14日 | 読書

◇『時代小説で旅する東海道五十三次
      著者:岡村直樹  講談社 刊 (講談社+α 文庫)

 

  この本は題名に示す通り、東海道五十三次を歩く作者が、宿場の特徴などを説明した後、
その宿場にゆかりのある小説を紹介する一風変わった趣向の作品である。ある種のアンソ
ロジーと言おうか。

 宿場の関連作品は先ずメインが一作、著者の好みで推薦代表作のあらすじとさわり(読
みどころ)
のくだりがあげられる。その他の2・3作は粗筋のみ。
 代表作では読みどころの中に時折著者の独白が入ったりしてこれがまた楽しい。しかし、
東海道の宿場が登場する作品を吟味し、あげくその粗筋とさわりの部分を要領よく目の前
に提示していただき、居ながらにして宿場と数多の名作の醍醐味を味わえるということは、
誠にもって果報というべきではないか。

 著者は旅行作家なので、宿場の特徴の説明は抜かりがない。また本陣・脇本陣・問屋場
など宿場に係わる必須知識を要領よく
説明してくれる。宿場の描写は実に丁寧で、江戸時
代の姿だけでなく現代の状態まで描き出し、かつて東海道を完全踏破した我が身に懐かし
く思い出を掻き立たせてくれる。

 挙げられている各宿場がらみの時代小説や歴史小説はメインが53作。参考作品が各宿場
ごとに2から3作で計150作。延べ200超の作品が並ぶ。何度も登場する作家もいるが、錚
々たる大御所、名手が勢ぞろい。
 例えば平岩弓枝、杉本苑子、諸田玲子、五味康祐、野村胡堂、南条範夫、藤沢周平、
柴田錬三郎、大佛次郎、山手樹一郎、山田風太郎、山本周五郎、高橋三千綱、宮城谷昌光、
小松重男、吉村昭、佐藤雅美、山本一力、村上元三、早乙女貢、笹沢佐保、司馬遼太郎、
津本陽、池波正太郎等々、枚挙にいとまがない。
                             (以上この項終わり)

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