読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

カサブランカとスカシユリの対話

2021年07月08日 | その他

◇ ユリ科の女王カサブランカが咲いて

  

  庭のカサブランカが咲きました。先に咲いた4種類のスカシユリは既に散り果てて、
 最後のスカシユリが一緒に咲いています。

「あんた、色白だし、ずいぶん大柄だし、どこから来たの?」(スカシユリ)

「どこからって言われても…あなたと同じ栽培種だから言ってみれば混血ね」(カサブランカ)

「生まれは選べないからしょうがないけど、いい匂いだし、豪華で目立つからもてて得だよね」

「でも、花の命は短くて 苦しきことのみ多かれば 風も吹くなり 雲も光るなりよ。いつか
 は同じように死ぬのよ」

「わたしどうせ短い一生なら、あなたのように美しくもてはやされて死にたい」

「あなただって身長がなくっても華やかな色で人さまを楽しませているわ、同じよ」

(以上勝手に想像したスカシユリとカサブランカの対話です)

 カサブランカは首を垂直か上向きに咲くほかの百合と違って蕾が下向きです。花が開くと花弁
の先端が反り返るのが特徴です。盛りを過ぎると可哀そうなくらいみじめな姿になります。

  

  

  
 
                 (以上この項終わり)


  

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垣谷 美雨の『女たちの避難所』

2021年07月08日 | 読書

◇『女たちの避難所

  著者: 垣谷 美雨   2017.7 新潮社 刊 (新潮文庫)

     

 東日本大震災を題材にした被災した女性たちの物語である。著者が実際に
被災したり身内に被災者がいたわけではないが、津波や被災の状況や避難所
の様子などが生々しく伝わってきて、正調東北弁なのかどうかはともかく現
地らしさがリアルで、引きずり込まれる。
 あとがきには作者は現地を訪れ、資料を読み、福島・宮城の被災した友人
から話を聞き、仕切りのない避難所で苦闘する女性たちを、生活者の目線で
追うことを心がけたとある。

 主人公は3人の中年の女性である。
 ①ナギサ洞というスナックを営む山野渚。夫とは離婚して昌也という小6
の息子がいる。②椿原福子。パチンコに明け暮れる夫がいる。津波で”夫が
死んでくれれば”と思った。③乳飲み子を抱えた漆山遠乃。色白の美人。津
波で夫を亡くした。頑迷固陋な舅と遠乃を自分の嫁にと狙う義兄がいる。

 百人の被災者には百個の人生があり、津波という共通する災難に遭遇して
もその受け止め方も生ずる波紋も人それぞれであるし、避難所という世界で
はまた新しい関係が生まれる。そんなことを女性という属性を中心に問題点
を抉り出した傑作であろう。
 貧困、学校でのいじめ、離婚、DV,セクハラその他地域の根強い男尊女卑の
風習、家族関係などが地震と津波による被災で浮き彫りにされる。

 最終的に3人が東京に移り、一緒に未来に向けて生活を築ていく姿が描かれ
ていてホッとする。
                         (以上この項終わり)





  

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家庭菜園のトマト栽培(その5)

2021年07月06日 | 畑の作物

◇ 令和3年のトマト終焉を迎える

 ついに連作障害出現か。まだ7月半ばというのに、すでにトマトはうどん粉病
に感染し、消毒で何とか持ち直したものの今度は下葉が黄色く枯れ、もはやこれ
以上の結果は望めないと観念いたしました。終わりです。
 来年はここでのナス科作物は休耕でしょうか。

  

  
  うどん粉病を克服したのに
  
  無残な姿
  
  無惨な姿2
  
  第5果
  
  第5果
  
  鉢植えの中玉(第3果)
                 (以上この項終わり)

  

  

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染井 為人の『正体』

2021年07月04日 | 読書

◇『正体

      著者: 染井 為人  2020.1 光文社 刊

  

  2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリー大賞優秀賞を受賞した作者
 の『正義の申し子』、『震える天秤』に次ぐ第4作目である。
  冤罪で少年でありながら死刑宣告を受け脱獄した事件を追う。

  ある意味数多の冤罪事件を生み出している日本の司法、警察、検察、
 裁判所を指弾する作品である。死刑囚が脱獄してから追い詰められて
 銃で撃たれ死ぬまでの1年半の逃走劇を時系列で何段階かに分けてまと
 めているが、登場人物のキャラクターが巧みに設定されていてインタ
 ーテイメント色満点である。特に作者の出身地かと紛うばかり(作者
 は千葉県出身)の山形弁を駆使した会話が面白い。

  若い夫婦とその子供が刺殺され、隣家から通報を受けた警官が刺殺
 体のそばにいた少年(当時18歳)を現行犯逮捕した。本人自白で立件
 され裁判では無罪を主張したが、死刑を宣告された。その後少年は収
 監されていた神戸拘置所から脱走し、未だに捕まっていない。
  犯行現場では被害者の母が現場を目撃していたのであるが、アルツ
 ハイマー型認知症であったために警察が証言を巧みに誘導した憾みが
 残った。状況証拠が揃っていることから余分な捜査を端折った節があ
 る。 

  脱獄した少年鏑木慶一はいろんな働き場所でいろんな人たちに顔を
 さらしながら職場と居所を転々とする。言葉遣いも丁寧で、人が困っ
 ているときに助けることを厭わない人柄で、概ね好感を持って受け入
 れられるが、正体がばれそうになると姿を消す。それが建設現場であ
 り、在宅ライター、パン工場、スキー場であり、新興宗教団体であり、
 介護施設だった。

  アオバというグループホームで介護のバイトを始めた酒井舞。桜井
 という名でここに潜り込んだ鏑木慶一に恋心を抱く。その挙動に不信
 を抱き、手配犯の鏑木ではないかと思い悩むのだが、桜井から事件当
 時殺害現場を目撃した被害者の母井尾由子に真実を思い出して証言し
 てもらうためにこの介護施設に入り込んだのだと知る。

  脱獄犯に似た人物がいると通報を受けた警察はアオバを包囲するが、
 桜井は舞を盾に井尾由子と合わせるよう要求するが、警察は構わず突
 入桜井(鏑木)を射殺する。状況証拠だけで強引に立件した負い目が
 ある警察のやりそうなことだ。

  桜井から事の真相を明かされた舞は既に辞めたアオバの介護主任の
 四方田から呼び出される。そこには4人の見知らぬ男女がいて、いず
 れも鏑木慶人の無罪を信じていて、彼を救うために集まった人という。
 舞はその後一人で井尾由子を訪ね、警察に誘導されて鏑木を犯人だと
 証言したことが誤りであり、真実の瞬間の記憶が少しづつ戻ってきて
 いたことを知った。

  舞は井尾の告白を四方田に伝えて、自分も鏑木を救う会に協力する
 と告げた。
  裁判で鏑木が無罪の判決を勝ち取ったようなシーンが出てくる。
 一体どんな裁判を請求したのか頭をかしげるのであるが。
  オリンピック、パラリンピックが無事に終わったとあったが、コロ
 ナ騒ぎもなかったころ書いたんですね。
                     (以上この項終わり)

  
 

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吉川英治の『新書太閤記(十)』

2021年07月01日 | 読書

◇『新書太閤記(十)

     著者:吉川 英治    1995.5 講談社 刊 (吉川英治歴史時代文庫)

 

 琵琶湖湖畔の賤ケ岳での戦いで当面の剔柴田勝家陣営を打ち負かした羽柴
秀吉の次の頭痛の種は東の雄徳川家康との関係である。 

 柴田勝家に勝った秀吉は信長の一周忌を営んだのち大阪に規模壮大な居城を
構築し始めた。その規模は信長の安土城をはるかに凌ぐ壮大なものとなった。
しかもわずか6カ月の短期間に諸国諸将に競わせ完成させた。

 信長の嫡子らを差し置いて天下をほしいままにしている佞姦秀吉という一
部の世評は秀吉を悩ませている。家康は信長の3男信雄と語らい、義をもって
秀吉を懲らしめる戦が必至とみて作戦を練る。秀吉は勝家に次ぐ信長に重臣
であった丹羽長秀をぜひ味方に受けたいし、未だ旗幟を明らかにしていない
諸将らに書を認め使いを送り味方に付けようと奔走する。

 家康は北畠信雄と共に清洲城の近く小牧山に凡そ7万の軍勢の本陣を構える。
一方秀吉方は凡そ8万8千の兵を犬山城近くの楽田に本陣を張って満を持して
いる。
 そんな中池田勝入と婿の森長可は小牧の大軍を寄せた家康の本拠岡崎城はが
ら空き状態。そこを占拠すれば徳川の軍勢は算を乱すは必至との、奇策を献じ
た。乾坤一擲を狙う秀吉はこの策を容れ秘かに1万の軍を岡崎城攻略に差し向
けるが、岡崎城の手前にある大留城にかかずらっているうちに、一人の兵が小
牧の本陣に秀吉軍の急襲を告げたため、家康は小牧にあるあらかたの軍勢を岡
崎に向けて発進させた。ここに長久手における戦いで池田勝入と森長可の急襲
軍勢は圧倒的な徳川軍の追撃に遭い、秀吉の乾坤一擲の策は敢え無くも潰えた
のである。
                          (以上この項終わり)

 


    

     

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