リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

便乗ビートルズ世代

2024年12月08日 11時01分41秒 | 音楽系

よく70歳台前半を筆頭に60歳台真ん中あたりの人がビートルズ世代を自称したりしています。オレたちはビートルズを聴いて育ったんだとおっしゃっています。世間もその世代の人をビートルズ世代なんて呼んでいますからそれはそれで定説なんだと思います。でもこのこのビートルズ世代に属するとされる人たちは2つに分類されると思います。

まずビートルズがデビューした1960年から1966年来日の少し前に洋楽が好きではまってしまった人、そしてその後から聞き始めた人の2つです。

ビートルズ来日の頃でさえ実は私の通っていた学校にはそれほど多くのビートル・フリークはいなかったということを知っています。知っている範囲ではY君とH君とI君のお兄さんくらいのような感じです。田舎の中学校のことだし自分の交友範囲だけの話で正確な調査をしたわけではありません。でも少なくとも後の「泳げたいやき君」みたいに誰もが曲を知っていて美空びばりみたいに多くのファンがいたという状況ではなかったことは間違いありません。

第1番目の分類の人たちは評価の定まっていない中から自らセレクトし影響を受けた本当の意味のビートルズ世代といっていいでしょう。あとの分類の人は世間で聞き始めた人が増え評価が定まった時期の頃にファンになったのですからビートルズ世代には違いありませんがおニャン子クラブ世代と言っているのとほとんど同じです。

飲み屋で70歳前後のオッサンが懐かしそうにオレはビートルズ世代なんだ、とクダを巻いている場合は、それは大体ウソかハッタリ、もう少し下の世代が同じようなことを言っている場合も大した意味はないということを知っておくとよろしいようです。


リハーサル中に

2024年12月07日 21時37分12秒 | 音楽系

今日の昼からは、11日に岐阜県加茂郡八百津町のカフェビズという古民家カフェで行われるコンサートのリハーサルを行いました。共演はヴィオラ・ダ・ガンバの山下瞬さんです。というか彼が主催するコンサートなので私の方が共演者ということになります。

曲目はマラン・マレの第4集から組曲ニ長調、同第3集からファンタジア、グラン・バレ、デルブロアのパピヨン、ラ・サシェ、組曲第3番、山下さんの無伴奏ソロでサント・コロンブのプレリュード、私のソロでド・ビゼーのシャコンヌト長調他です。

会場になるカフェビズは岐阜県の岐阜市の東部、多治見市の北部になるところにあり木曽川のすぐ近くです。木曽川は桑名市まで流れて伊勢湾に注いでいますので、木曽川を遡ればカフェビズまでたどり着くことができます。(実際は車で行きますが)

リハーサル中、急に弦がピシャピシャいうようになったのでどうしたのかと指板を見ると3フレットが切れかけていました。完全には切れていませんが、首の皮一枚で繋がっている状態でフレットが浮いているのでピシャついたのでした。早速フレットを交換しました。

一本のフレットを替えるのも全部替えるのも準備は同じで、まず半田ごてを暖め、工具を用意してからフレット用ガットを巻きます。フレットの交換記録を見てみましたらかなりまえのものだとわかりました。見た感じは、他のフレットは大丈夫みたいでしたが、本番までには念のために全部替えておこうと思います。


ビートルズ・カバー

2024年12月06日 18時25分52秒 | 音楽系

中学生の頃、ビートルズのNo Replyという曲に衝撃を受けたという話を以前書いたことがありました。テレビなどから流れていた当時の「流行歌」とは全く異なるレベルの美しいハーモニーやコード進行、転調に心を引かれました。私の場合は実はそれはバッハへの入り口だったみたいで、60年代の初めより後にポップスに夢中になることはありませんでした。

最近はビートルズのカバーがYou Tubeに沢山出ているのでときどき聞くことがあります。ひと頃流行った音楽だけでなく顔つき、楽器、服装までまねをするコピーバンドではなく、ビートルズのレパートリーを自分たち流にカバーしたものです。You Tuberとして作り込んだビデオを沢山アップしている人たちもいれば、路上パフォーマンスのアップなんかもあります。さすがにアレンジまでし直したものはありませんが、結構聞けるものもあります。なんかヨーロッパの古典音楽(スタンダードと言ったほうがいいかも)のひとつになってなっている感があります。

ビートルズはある意味たたき上げの実力バンドでしたから当時のライブパフォーマンスもなかなかのものでそれらのいくつかはYou Tubeでも聞くことができ、現代におけるカバーと比較してみるのもなかなか興味深いです。

今の楽器は多分チューナーで正確に調弦されていますが、ビートルズのライブでは調弦はやや甘めだしボーカルも少しはずれがちです。でも彼らはハーモニーをよく分かっていたので下手なバンドにありがちな調子っぱずれになってしまうことはなくむしろそれが味わいになっています。

日本人によるカバーもありますが、ほとんどは英語の発音がダメだしとハーモニーの精度が低く残念賞ばかりです。音楽文化の薄っぺらさがここではモロに出てしまった感じがします。


BWV1006a(32)

2024年12月02日 16時46分16秒 | 音楽系

最後の曲になるメヌエットの1~31小節です。

1小節目はローポジションで弾くと次のようになります。

一見何でもないようですが、これは意外と弾きにくいので4ポジションで弾くように改めました。音の動きがシンプルなメヌエットですが、全体的にポジションが高めなのでものすごく簡単に弾けるというものではありません。

19~26小節のフレーズがリュートにとって居心地のいいポジションです。次回の掲載になりますが、メヌエットIIの冒頭もいいポジションですが、これらのポジションは本来はこのメヌエットの低い位置として書かれています。ですから楽器としては「低い感」が出た方がいいのですが、実際は「ちょうどいい位置感」です。これはそもそもキーが高いからなんでしょう。やはりニ長調版か。この曲をニ長調で弾いている人はまだ誰もいません。冒頭のプレリュードがうまくいけるようならニ長調版を作る意味はありますが。


場数

2024年12月01日 11時51分50秒 | 音楽系

昔「芸術は場数だ!」言っていた美術家がいました。舞台芸術は場数を踏まないといけないという意味のようで、いいことを言うなぁと思っていました。実際は場数ではなく「爆発」と言っていたらしいですが。

人前で演奏するときは個人差はあるものの誰でも緊張します。それこそ沢山の場数を踏んでいるはずの某ヴァイオリン演奏家や某漫才師なんか今でもとてもビビリであることが知られています。もっとも中には舞台袖で直前まで談笑していてさっとステージに出て一瞬にしてスイッチが入り演技が出来るという役者さんもいらっしゃるようですが。

プロであっても基本的に生来のビビリは解消とか克服できるものではなく、場数を重ねるにつれて共存していけるようになるということなんでしょう。アマチュアの人が発表会などの本番であがって困るので何とかして克服したいというのはよく聞く話です。どこかの音楽教室ではアガリ克服講座なんかを催しているみたいですが、それは全くの無駄、無理です。

そもそも克服しようと考えるから余計あがるのです。まずはステージに上がるまでに沢山練習を積むことです。家ではいつも120%いや150%確実にできるくらい練習するべきです。曲目の選択も重要です。プロが弾くような曲を発表会用に選んではいけません。そういう曲が人前で弾けて拍手喝采を受けたいという気持ちはわかりますが。ふつう本番では家で練習しているときの60%もできれば合格です。家で150%まで仕上げていれば本番では90%ですから大成功、素晴らしいできのはずです。

中には少し困った人がいて、リュートというのはそもそも歴史的に見て人前で弾く楽器ではない、というような屁理屈を作って合理化し閉じこもってまい、さらにそれを正当化するための論陣?を張る人がたまにいます。そこまでも言わないにしてもトシだといろいろ理屈をつけて人前で弾かない人もいます。

まぁグダグダ言わないで思い切って飛び込んでみましょう!そのうちきっと新しい世界が広がりますよ。芸術はバカズです。


BWV1006a(31)

2024年11月30日 12時19分53秒 | 音楽系

ブレの後半です。

後半も特に大きな技術的な問題がなく曲が進みますのでありがたい曲だと思っていましたら、急に最後の3小節目を中心とした箇所がとても弾きにくくなるのでバスをオクターブ下げてみました。そうするとぐっと気持ちが楽になります。(笑)

これであとメヌエットを残すのみになりました。この曲はとても華やかで喜びに満ちた曲ですが、全体的にリュートにはキーが少し高めです。これはヘ長調で弾こうがスコルダトゥーラを使ってホ長調で弾こうが同じです。ここでふと思ったのがニ長調で弾いたらどうだろうということです。

早速ブレのニ長調版を作ってみました。Sibeliusだとこういう時が便利です。それがこちら。

掲載は後半部だけですが、3コース半音高のヘ長調版と比べてみてください。遙かにリュートの自然な音域に合っていると思います。頭の中で弦のポジションを決めただけで実際には弾いていませんので、どのポジションがベストなのかは検討されていません。ここまで編曲を進めてきてナンですが、ニ長調版で出直してみようかしら。(冒頭3曲はすでに本番で弾いてはいるのですが)ですが、とりあえずこのシリーズ、最後のメヌエットまで続けてみます。


またリュートの絵

2024年11月29日 12時06分04秒 | 音楽系

昨日の日経新聞の例のコラムにまたリュートの絵がありました。もっとも私は「リュートの絵」として見てしまいますが、一般的には「道化師の絵」でしょう。

17世紀のオランダの画家、フランス・ハルスによる「リュートを弾く道化師」です。

日経新聞のこのコラムにリュートが描かれている絵が出てくるのは鬼門です。今回も何かやらかしていたらまた編集部にメールか、と目を皿にして記事を読みましたが、楽器については何も書かれていないので今回はセーフでした。

コラムではこの絵はカメラ・オブスクラという機器を使って描いたという説があることを紹介しています。カメラ・オブスクラというのはラテン語で「暗い部屋」意味することばだそうです。

箱に小さい穴をあけて箱の中に像を写します。こんな原理です。

ウィキによりますと、

原始的なタイプのカメラ・オブスクラは、部屋と同じくらいのサイズの大きな箱を用意し、片方に小さな針穴(ピンホール)を開けると外の光景の一部分からの光が穴を通り、穴と反対側の黒い内壁に像を結ぶというものであった。画家がこの箱の中に入り、壁に紙を貼り、映っている像を描き写すことで、実際の光景とそっくりの下絵をつくるという使い方がされた。

とあります。同コラムの筆者はこの絵はこうした技法を使って描かれたのではといいます。でもそれにしてはリュートのネックの仕込みが少しおかしくまた少し反っているように見えます。

ルーブル美術館蔵のシャルル・ムートンの肖像画は写真みたいに正確にリュートが描かれていますが、これこそカメラ・オブスクラを使って描かれたのかも知れません。

こちらは1976年にオランダ、デンハーグのへメンテ博物館のミュージアムショップで購入したプリントですが、原画はルーブル博物館の作品をもとにしたと言われている銅版画です。リュートの形状や弦の描写はまるで写真撮影したかのように完璧です。ムートンの左手もハ長調の和音を正確に押さえていて今にも6コースのド、3コースのド、2コースのミ、1コースのソの和音が聞こえて来そうです。ただ少し不可解なのは右手親指が7コース(ソ)を触っていることで、これはちょっと残念。6コースに触れていて欲しかったです。中指、人差し指の位置は正確に描かれているのですが。それから左手小指が2コースの4フレットのファ#を押さえているように見えますがこれは弦を押さえずに上に置いているだけのはずです。画家や銅版画作者はそこがよくわかっていなかったんでしょう。実はルーブル博物館の原画はまだ見ていませんが、そこらあたりはどうなっているんでしょう?

 


ヨーロッパの街角から

2024年11月28日 23時25分41秒 | 音楽系

オーケストラ ファン・ヴァセナール室内楽シリーズ第25回「ヨーロッパの街角から」~日常に楽しむ美しい響き~というコンサートに行ってきました。

会場はHITOMIホールです。ホールのHPで偶然知ったのですが、知り合いの佐藤亜紀子さんが出演されるということで出かけました。

共演は赤津眞吾さん(ヴァイオリン)、今田利(ヴァイオリン、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)です。プログラムはイタリア系のものが中心でした。佐藤さんはアーチ・リュート(リウト・アッティオルバート)とバロック・ギターを通奏低音で使い分けていました。

終演後伺ったのですがこの2本の楽器は数年前に亡くなられた某リュート奏者が使った楽器で両方ともスティーブン・マーフィーの作です。実は私もマーフィーのバロック・ギターを持っているのですが、音も外観もとてもよく似ているので話を伺ってやっぱり!という感じでした。

終演後のツーショットです。

コロナ禍以降移動は車ばかりで、公共交通機関を使うことがほとんどありません。今回はたまにはということで電車に乗ってでかけましたが、会場の最寄り駅の中央線千種駅が私が知っている千種駅と全くことなっていたので戸惑いました。

HITOMIホールで何回もコンサートをやっているくせに、実は電車で行ったことがないし、千種駅の様子が変わってしまっていたし、おまけに関西線が10分も遅れて名古屋に到着したので会場に着いたときはすでに曲が始まってしまっていて最初の2曲を聴くことができませんでした。かえすがえすも残念。

 

 

 


BWV1006a(30)

2024年11月27日 19時56分09秒 | 音楽系

今回からブレです。ブレはアップテンポの曲ですので軽快に弾く必要があります。

意外にもこの曲の前半はそれほど技術的に難渋する箇所はありません。9小節目からバスの動きが活発になりますが、鍵盤楽器のアレンジみたいな動きではなくリュート奏者が作った曲でもこのくらいの動きがあるのはいくらでもあります。

とはいうものの全体のテクスチャーがリュートの「ツボ」にはまっているかというとそれはなかなか微妙なところ。できるだけリュートに都合のいいポジションを取ったつもりですが、ヴァイスみたいにはいかないのがバッハです。でも聞いている人にとってはとてもリュート的な音の流れだと感じるのではと思います。

ともあれ、無窮動で138小節もあるプレリュードやスローでも技術的に大変なルーレと比べればずっとありがたい曲です。組曲の終盤だということでバッハもある程度は配慮してくれたのかも知れません。


桑名六華苑ミニコンサート2024秋

2024年11月24日 17時04分22秒 | 音楽系

今日もコンサートでした。

桑名六華苑のミニコンサートで、春に続き本年度2回目になります。今回は愛知県刈谷市在住のギタリスト高須大地さんとのジョイントです。まぁジョイントというより私は「前座」ですが。

昨日の夕方は風も強くとても寒かったですが、今日は比較的穏やかな陽気でした。しっかりと厚着をしてホッカイロを両ポケットに忍ばせておいたおかげで手が冷たくなるということはありませんでした。

今回も後ろに立ち見が出るくらい沢山の方にお越しいただきました。寒いのでお客様用のホッカイロも用意していきましたが、幸いにも会場が思ったより寒くなかったせいか欲しいかたはいらっしゃいませんでした。

プログラムは次の通りです。

ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)/組曲ホ長調BWV1006aより

 ルーレ、ロンド風ガヴォット

シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス(1687-1750)/パッサカリア ニ長調

ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)/組曲ホ短調BWV996より

 アルマンド、ジグ

ロベール・ド・ヴィゼー(c.1650-1725)/プレリュード、ガロ氏のトンボー、モンフェルメイユのロンド

マヌエル・ポンセ(1882-1948)/組曲イ短調

 プレリュード、アルマンド、サラバンド、ガヴォットI II、ジグ

アンコールとして高須さんにクープラン/神秘のバリケードを演奏していただきました。

(ヴァイスと996を演奏したのは高須さんです)

桑名六華苑で年二回開催しているこのシリーズ、始めてから16年を数えますが、来年もまた春のコンサートを5月頃に開催する予定です。