リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハのシャコンヌ(2)

2008年07月08日 13時32分30秒 | 音楽系
バッハのシャコンヌは無伴奏のヴァイオリンのために書かれた作品です。普段はメロディを弾いていることの多いヴァイオリン一挺でバスやメロディが書かれた曲を演奏するのは技術的に非常に大変なことです。でもこれは巧みな作曲技術があってのことで、それ抜きで作曲してしまうと、演奏不可能作品になってしまいます。

無伴奏ヴァイオリンのための作品を書く巧みな作曲技術は、実はヴァイオリンの演奏技術を必要とします。つまりバッハは巧みにヴァイオリンを演奏することができるからこそ、こういった曲を作曲できたわけです。ちなみにバッハが一番最初に奉職したのは、ヴァイオリン奏者としてだったそうです。彼は鍵盤楽器だけでなく、ヴァイオリンにも巧みな技を持っていたというのはすごいことですねぇ。現代でヴァイオリンとチェンバロのスイッチヒッターなんて見たことも聞いたこともありませんです。

リュートやギターの曲を書くときも、無伴奏ヴァイオリンのための作品を書くときと同様、作曲者は楽器のことをよく知っている必要があります。楽器のことをよく分からないで作曲すると、簡単そうに見えても演奏が恐ろしく困難だったり、演奏不可能だったりする曲ができあがります。ですから、リュートやギターの曲は演奏者が書くか、楽器のことをよく知らない作曲家の場合は、奏者とよくコンタクトをとって書き進めるのが望ましいと思います。