リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

武満とリュート

2008年11月12日 13時50分28秒 | 音楽系
先日黛敏郎の話をしたので、今度は武満。武満徹の音楽との出会いは、もう40年以上前に、NHKのFMラジオで聴いた小泉八雲の怪談の音楽聴いたあたりが最初だったでしょうか。これはミュージックコンクリートと言われていた、テープを編集した音楽だったと思います。実はどの曲が最初に聴いたのかはあまり覚えてなくて、弦楽のためのレクイエムとかグリーンとかを聴いたのがこの頃です。

先日書きました音楽芸術の付録でサクリファイスの楽譜を見たのはもう少しあとで高校生の頃。リズムがはっきりせず、線を引いて音のつながりが示してある楽譜を見たときはたまげました。でも新しもの好きの私は、なんかすばらしいものを見たような気がしてわくわくしました。リュートはすでに知って興味を持っていたので、現代の音楽にもリュートが使われるのか、と思ったものでした。

でも武満のリュートを含む作品(ソロはありませんが)はこのあとに書いたリングという図形楽譜を使った曲があるだけで、合計2曲です。リュートにとってはとても貴重な作品ですね。この2曲はCDに録音されています。私の知っている範囲では2種類ありますが、お薦めは「Toru Takemitu Works for Flute and Guitar ODE 839-2」です。サクリファイスのリュートパートは残念ながらギターで演奏されていますが、リングはオリジナルの編成です。サクリファイスでリュートの代わりにギターを使ったのは、想定されているリュートの調弦が、ギターの調弦に近いために選択した方法でしょう。でもとてもいい演奏です。1994年の録音。

武満にリュートのソロ作品がないのはとても残念です。武満が亡くなる10ヶ月ほど前、名古屋で彼の作品ばかりのコンサートがありました。その時、彼自身も来ていて、コンサートの休憩のときロビーに出てきていて談笑していました。そのとき、私は作曲を直談判しようかという衝動にかられたんですが、何となくためらってしまいました。超有名作曲家だし、コンサート会場のロビーで作曲依頼しても受けてもらえるべくもなかったと思ったからです。もっともその10ヶ月後には亡くなったので、どっちみち作曲の実現はあり得なかったでしょうが、言っておけばよかったと少し後悔はしています。