リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

軟質カーボン弦

2020年01月11日 20時56分34秒 | 音楽系
カーボン弦の材料はクレハなどが製造している釣り糸です。クレハでは鮪を釣るためのフロロカーボン釣り糸も製造販売していますが、鮪釣りにこんなに必要かという思うくらいさまざまなゲージのものを出しています。これって多分ハープなど(リュートも含まれるでしょうが)の楽器用としての需要も見越していることだと思います。実際サヴァレスのKF弦は大体クレハのゲージに沿った弦を出しています。

リュートの世界でこの釣り糸(以下カーボン弦)が話題になり広まったのは80年代の初め頃です。今ではガット弦を使って活動していることで知られる某リュート奏者も、当時は盛んにカーボン弦を薦めていました。音量もあり音も明るいので、一時は大変好まれました。当時スイスのジョナサン・ルビンという演奏家なんか私のところに電話をかけてきて、カーボン弦を(つまりクレハの釣り糸を)送ってくれないかと頼んできたこともありました。

今でもスイスの製作家モーリス・オッティガーは完成した自分の楽器にはカーボン弦をかけています。何年か前、余っているカーボン弦を彼にあげたら、お返しにおいしいチーズを頂いたこともありました。(笑)そういや今村泰典氏もヴィウェラにカーボン弦を使っています。少し前に頼まれて日本からカーボン弦を送ったこともありました。スイスではカーボン弦がいまだ流行っているのかな?

その後、高音がキンキンするのを嫌い、余り使われなくなりましたが、ここ数年来太いカーボン弦が出てからは中音域、低音域で使う人もでてきました。私は低音域ではアキラのCD弦を使っていますが、中音域(4,5コース、ときどき3コースも)ではカーボン弦を使っています。

そんなフロロカーボン釣り糸ですが、最近より柔らかい材質のものが出ています。クレハから出ている 「Seaguar FXR船」というブランドがそれです。なんかいかにも釣り糸っぽい名前でちょっと引いてしまいますが、試しにバロック・ギターとルネサンス・リュートの1コースに張ってみましたが、キンキンさが減って結構いい感じです。デュポン社のナイロンと普通のカーボン弦の中間くらいです。ルネサンス・リュートだと1コースで5号(0.370mm)くらいです。ナイロン弦はもとよりガット弦と比べてもかなり細いですが、このくらいでも結構張力があります。興味のある方はお試しあれ。