リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

夏場のガット弦は・・・

2024年08月30日 19時23分30秒 | 音楽系

ここしばらくずっとバロック・リュートのオクターブ弦にガット弦を使ってきました。バス弦は合成樹脂のCD弦です。この組み合わせはとても相性がいいです。というのも音の減衰時間がCD弦の方が気持ち短いのでバスがとてもすっきりと鳴るからです。

CD弦と組むオクターブ弦には、ナイルガット弦、カーボン弦を使ってきましたがいずれも音の減衰時間がバス弦より長いし音も派手目なのでバスが聞こえにくくなる傾向がありました。逆にいうとオクターブ音が目立ちすぎるのです。

CD弦ととても相性がいいガット弦ですが、夏場はエアコンをかけると湿度や温度の変化が結構あり頻繁に調弦する必要があります。エアコンで温度調節をするとはいうもののピタッと温度や湿度が一定になっているわけではありません。

外が38度、室温がエアコンを使って26度まで下げました。そのとき湿度計を見ますと50%弱です。しかししばらくそのままエアコンをかけて練習していると湿度は30%台になっています。その間2分も経たないうちに音程が10セントくらいも下がります。その都度調弦しなおすのはいいのですが、安定はせず3分おきに下がっては上げ、上がっては下げの繰り返しです。

2時間くらい練習したうちの結構な時間を8本のペグ回しに取られてしまいます。それなりに早く合わせる自信はあるのですが、何しろ8本もあります。もちろんその間合成樹脂弦を張ってあるコースも調弦する必要が出て来ます。

ということで時間の無駄をなくすためにきっぱりとオクターブ弦をガットからナイロンに替えました。ナイロン弦はガムート社製のものです。交換したらやはり楽です。エンジンをクランクを回してかける旧車からオートマチックトランスミッションの現代車に乗り換えたような気分です。もちろんナイロンも狂いますが、狂う音程幅は最大でも数セントもいきません。

ただCD弦とのバランスという点では、ナイルガットやカーボンよりはいいのですが、減衰時間は大体CD弦と同じで、これだとまだ若干オクターブ弦が目立つ感じもしますが、音色はあまり悪目立ちしないのでまぁギリOKというところでしょうか。

オクターブ弦は、上に挙げたガット、ナイルガット、ナイロンとも同じ張力のものを使用しています。バス弦の大体80%の張力のものを使用しています。これを70%くらいにすればもう少しバランスがよくなるかも知れませんが、しっかり鳴ってスッと消えてくれるガットの方が優れています。張力を減らすとしっかり鳴らず、そのわりにはうまく消えてくれないかも知れません。

10月中頃になったらまたガットに戻すつもりですが、11月のコンサートでその弦のままで演奏するかはちょっと微妙です。