リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

日本の交響楽

2014年02月13日 17時13分23秒 | 音楽系
例の佐村河内氏が釈明の文書を報道各社に送ったようですね。曰く「実はここ2、3年で耳が聞こえてきたみたいなー・・・」なるほど、そう出ましたか。まぁまともに信じる人は少ないでしょうけど。(笑)

新垣氏の交響曲などの作品はとてもいい曲なので聴いていただくといいと思うんですが、もうすでに一般の店では買えないようです。ヤフー・オークションには一杯出てましたが、えらく高くなっています。これらの楽曲が曰く付きの幻の名曲になってしまうのは忍び難いですねぇ。

まぁせっかくですからこれを機会に日本人が作ったオーケストラ作品を聴いてみたらどうでしょうか、ということで無理矢理話をもっていきますが、何曲か作品を紹介してみようと思います。これらを何曲か聴けば、佐村河内守の名による、新垣隆作曲の交響曲第1番の立ち位置もわかろうというものです。

なお私は評論家の先生みたいに総花的に聴いているわけではないので、あくまで私の趣味で選んだということでご了解ください。

では古い順で、まず橋本國彦作曲交響曲第1番。1940年の作曲だったと思いますが、紀元2600年の奉祝曲として作曲された曲です。当時の世相を反映して、第3楽章は紀元節の歌を主題とした変奏曲とフーガです。第1楽章はこの紀元節の歌から導き出された循環テーマで構成されています。オーケストレーションも見事で、「え、こんな曲が戦前に存在してたの?」と目ウロコ間違いなしです。このような曲が戦前に存在していたということは、戦前は暗黒時代ではなかったんだ!と歴史観も変わります。(笑)ナクソスからCDが出ています。

次は戦中に書かれた伊福部昭作曲交響譚詩。1943年の作品。伊福部昭という作曲家はある意味不思議な人です。この29歳の時の作品でももうすでに完成された伊福部ワールドがあるんですよね。これはバロック・リュートの作品でもゴジラでも晩年の箏曲でも同じ。この音楽的確信はいったい何なんでしょう。ナクソスで聞けますが、同じ指揮者(広上淳一)がスゥエーデンのマルモオーケストラを振ったBIS盤の方が私の好みです。

戦争が終わり、しばらくして日本の社会も本格的復興に向かいつつあった1957年には武満徹が弦楽のためのレクイエムを発表しました。この曲は当時来日していたストラヴィンスキーが激賞したという、いわば武満の出世作です。弦楽オーケストラのための作品ですが一応あげておきます。大変有名な曲なので録音は一杯あります。

武満がレクイエムを発表した翌1958年に矢代秋雄が交響曲を発表しました。彼は寡作家でかつ若くしてなくなったので作品数は少ないです。そして武満みたいに饒舌に音楽論を述べるということをよしとしなかったこともあって今では早くも忘れられた作曲家になってしまった感が。でも残された作品は粒ぞろいです。昔の三重国体の音楽も担当しました。ナクソス盤があります。

ちょうど同じ時期に、松平頼則(まつだいらよりつね)が右舞(1957)左舞を発表しています。名字からわかるように彼は昔の位の高い武家の出身で、終生(正確には戦後から2001年になくなるまでですが)前衛の作曲スタイルを通した人です。94歳まで生きたのでとても作品が多いのですが、難解とされているのかCDの数はとても少ないのが残念。右舞、左舞ともナクソスで聞けます。ここにあげた全くスタイルの異なった武満、矢代、松平の4作品がほぼ同年に作曲されているというのはとても興味深いです。そして3人がその後歩んだ道の違いも興味深いです。

次は黛敏郎のバレエ音楽BUGAKU(1962)で行きましょう。彼は題名のない音楽会の司会、企画で有名でしたが、70年代以降は右よりの政治的活動のために作品の委嘱が全くといいほどなくなってしまったようです。日本は70年代中頃から、日の丸君が代を問題視する風潮が芽生えてきて、その後河野談話、村山談話、尖閣諸島問題、慰安婦問題が出てきます。黛が作曲家として日本ではほされてしまったも同然だったのはこういった世の中の変化と大いに関係がありそうです。ホント惜しいことをしました。私が高校生から大学生になるころ、この舞楽や無伴奏チェロのための文楽、雅楽のための昭和天平楽、ちょっと前なら曼荼羅交響曲とやつぎばやにいい作品が出てきてさて、次は?と楽しみにしていたらパタっと筆が止まったんですね。さて、このオーケストラのためのBUGAKU、カッコいい曲ですよ。当時の録音も出てますが、新しく録音されたナクソス盤がいいです。

さて最後は吉松隆の朱鷺によせる哀歌(1980)です。確か昔出たCDには尾高賞受賞!って書いてあったみたいですが、事実とは異なるようです。まだ現役の作曲家で一昨年は平清盛の音楽を担当したことでも知られています。彼の作風は前衛とは全く異なるのでとっつきやすいでしょう。シャンドスというレーベルから一杯出ています。交響曲は6番まで完成されていますが、まだ6番は聴いていません。

ということでちょっと長くなってしまいましたが、佐村河内騒動を機に日本人作曲家の作品に目を向けてもらえたらということで何曲か紹介いたしました。

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