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世界屠畜紀行

2008年03月22日 | レビュー
世界屠畜紀行 内澤旬子著

先日チラッとご紹介しましたが、ようやく読み終わりました。読み応えのある本なので、かなり時間を要しました。世界各国における家畜の飼育から、解体、精肉までをイラスト入りで紹介した本です。私自身も学生実習で解剖、解体、精肉したりしますし、獣医師なので普通の人が読むのとはちょっと違うだろうとは思うのですが、どなたにも読んでいただきたい本だと思いました。今の日本では、毎日何かしらの肉を食べることが多いと思うのですが、普通の人には生きた家畜から肉ができるまでがなかなか見えません。日本人は非常にデリケートで、食肉の安全性には大変厳しい目をもっています。しかし実際に家畜がどのように繁殖され、肥育され、殺されて解体され、精肉に至るかということをきちんと理解している人は本当にわずかだと思います。そういう意味で私も解剖実習を必修として学生に課し、しかもと殺の現場を見せることにこだわっているのですが、人生の中でたった一度でもこの現実を目の当たりにし、食肉とは命をいただくことと知るということが非常に重要であると考えています。しかしこのとき大切なのは、普段と殺の現場にいない自分も肉を食べ、化粧をし、薬を飲む以上、「命をいただく」ことに責任を持つのだということを知るということで、いたずらに「かわいそう」とか「残酷」とかいう感情に逃げてはいけないのであります。

そして、私のように実際に動物を殺す立場にある人間は、命に向き合う責任もあります。一般の人は間接的にしか殺しませんから知りえないこともある。しかし私にはそのことを真摯に受け止め、きちんと社会に伝えていく責任もあります。

食の将来を担ううちの学生たちにも、よく考えてもらいたいテーマです。
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