院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

大昔の医療

2008-10-02 08:30:46 | Weblog
 医療の源はヒポクラテス以前にさかのぼる。このころの医療はシャーマンが担っていたのではなかろうか。現在でも発展途上国はもちろん、わが国でもシャーマニズムは残っている。

 痛みや熱で苦しむ患者を家族が取り囲む。シャーマンは「ご祈祷」をする。今の私たちは、「ご祈祷」は病気には何も効かないと思いがちである。しかし、そうとも言い切れない。シャーマンの必死の「ご祈祷」によって家族の気持ちが和らげられる。その雰囲気は患者にも伝わるだろう。こういった状況は、もしかしたら患者の免疫系によい効果を与え、自然治癒力を高めるかもしれない。
 
 現代医学でもそうである。偽薬といって、何の効果もない(小麦粉を丸めたような)錠剤を患者に与えることがある。そうすると10%くらいは病気が本当に良くなるのである。医学生だったころ私は、医者は現代のシャーマンではないかと思ったものだ。というのは、同じ薬を与えても、若い医者が与えるのと教授が与えるのとでは、効果が明らかに違っていたからである。むろん、教授が与えたほうが効く。

 近年、医療は何でもできると誤解されるようになった。けれども、戦後、医療が革新的に変貌を遂げたのは、抗生物質とステロイド・ホルモンの発見のみによっている。この二つの薬を奪ったら、医者は何もできない。外科手術も抗生物質なしにはほとんど不可能である。いくら文明時代といっても、医療ができることはその程度である。精神医療で言うなら、これまた戦後発見された向精神薬なしには、精神科医は何もできない。だから、今でも医療はシャーマニズムに負うところが大きい。