院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

数学科出身者が進む道

2014-01-16 06:18:13 | 学術
 大学の数学科出身者の99%はプロの数学者にはなれない。プロの数学者とは、囲碁将棋の世界と似ていて、その道に異常な才能がある人である。だから受験生は、めったなことでは数学や理論物理を専攻しようとはしないのだ。

 20年ほど前からか、金融工学という学問が台頭してきた。これは、投資をどこにしたら、もっともリスクが少ないか、または余計に儲けられるかを、統計学を初めとした数学的な思考で追及する学問である。プロの数学者にはなれないが、こういった「実用的な」計算を行う仕事が出てきたために、数学科出身者の就職先が増えた。

 もっとも金融工学で生み出された投資で失敗したのが、リーマンショックである。金融工学も市場では万能ではありえなかったが、金融工学なくしては成功しなかった事例のほうが多いので、リーマンショックという失敗だけで金融工学を否定することはできない。

 このところのコンピュータの発達によって、コンピュータグラフィック(CG)の進歩がめざましい。ふつうの映画でさえCGを一か所も使用していない映画を見つけるのが難しいほどだ。ディズニープロは、「Cars」など、すべて3DCGのアニメをヒットさせている。

 ここでCGで人間の表情を自然に出すにはどうしたらよいか、というような問題が新たに生じてきた。ここにもプロの数学者ではない数学科出身者の活動する余地ができた。なんとかという方程式を使うと表情がよくシミュレーションできるといった研究が盛んになってきた。

 最近よく言われるのが、「ビッグデータ」である。ビッグデータをうまく処理するには数学的な知識が必要だ。アメリカではすでにビッグデータのアナリストを数学科出身者から育てている。いまビッグデータのアナリストは供給が少なく、高給取りである。

 医学の世界ではだいぶ前から、統計学の知識がなければやっていけない領域が出てきた。だから、一部の医者は統計学の最先端を学んで、それをコンピュータに乗せるにはどうしたらよいかを勉強している。

 私は「医者ロボット」が遠からず発明されると思っている。そのときも数学科出身者が活躍するかもしれない。