介護保険における「散歩」の考え方について国会質問が議論を呼んでいますね。
「散歩」という表現が適当なのかどうかは別にして、
自宅に引きこもりがちの高齢者が、訪問介護員とともに家を出て、外を歩き、運動の機会を得、また、外の空気を吸い、様々な刺激を受けることは、予防上も効果が高い。ケアマネジメントで、「散歩」が必要であると認めた場合については、介護給付の対象になると思うがどんな場合が対象ですか?
という質問に、
①適切なケアマネジメントに基づけば
②自立支援、日常生活活動の向上になるので
③安全性が確保されていて常時介助できる状態で行えば
④結果として利用者の自立した生活の支援になると考えられる
だから、介護報酬の算定して良いですよ。
と答弁したのです。
その後、算定可能ということですが、これまでに、全国でどのくらいの方が「散歩」で給付を受けたのですか?と数値をたずねたのですが、把握していないという答弁でした。
こちらも、また、自治体に責任が押し付けられた形ですが、都内の保険者(自治体)に、「散歩」の給付をどう解釈しているかについてアンケートをとったNPOがありました。
それによれば、都内の各保険者で、「散歩」という表現を用いた場合には算定されないと解釈できる見解を示している保険者は過半数の15 保険者(58%)に上ったそうです。(「特定非営利活動法人 東京都介護支援専門員研究協議会」調査結果より)
国は、自治体の判断にゆだねるとしたわけですが、現状では、アンケート結果にもあるように、都内の自治体でも、この「散歩」を認めるか否かは、大きくわかれています。
国が自治体の判断にゆだねている事項は多いのですが、大田区では、おおむね、狭義に解釈し、給付を制限する傾向にあります。
たとえば、介護保険の「日中独居(:同居していても、昼間は、家族が働きに行っているなどして高齢者が一人の場合に、家族がいるからと支給しない。あるいは、昼間一人の状況をどうするかで判断する。と解釈が分かれる)」「病院内介助(:文字通り、病院内での介助を給付の対象にするか否か)」なども、個々の状況によっては、給付が可能なはずですが、大田区では、どのような状況の時に可能で、どのような場合にはダメかということの客観てきな指標を公表していません。あるいは、無いのかも知れませんが。
税金が投入されている公共サービスにおいて、一職員が、勝手に決められることは何もありません。法に基づき、条例に従い、そして、客観的な基準を設けるべきです。
先ほどの「散歩」の事例も、きちんと明文化している自治体の事例の調査(http://www5d.biglobe.ne.jp/~CMAT/090205CMAT_sanpo.pdf)があります。
大田区も、そうした運用に変わっていかなければなりません。
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国会で行われた「散歩」についての質問と答弁は下記のとおり。
◆参議院議員による質問(平成20 年11 月18 日)
要支援高齢者、要介護高齢者はともすれば自宅に引きこもりがちとなるが、訪問介護において訪問介護員が利用者に同行する「散歩」が給付対象とされていないと聞く。
2005年の介護保険法改正では、「介護予防」の考え方が導入されたが、居宅介護支援事業所や訪問介護事業所からは、「散歩」による予防効果は高いとの意見が多く寄せられている。
地域包括支援センター、介護支援専門員によるケアマネジメントで「散歩」の必要性を認めた場合には、訪問介護員による「散歩」の同行を保障すべきであると考えるが、訪問介護員による「散歩」の支援が認められていない現状について、具体的な見解を示されたい。
△答弁:
訪問介護員による散歩の同行については、適切なケアマネジメントに基づき、自立支援、日常生活活動の向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものについては、利用者の自立した生活の支援に資するものと考えられることから、現行制度においても、介護報酬の算定は可能である。
◆再質問(平成20 年12 月15 日)
▼質問6-2:
前回答弁書においては、訪問介護員による散歩の同行については、現行制度においても、介護報酬の算定は可能とのことだが、介護保険法施行以降2007年度までの各年度における散歩の算定件数、費用額、受給者数を示されたい。
△答弁:
お尋ねの散歩の算定件数、費用額及び受給者数については把握していない。