大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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大田区の旧耐震基準のマンションの建て替え優遇策とその影響

2015年06月18日 | ├.まちづくり・都市計画

マンション建て替え円滑化法マン建て法における建て替え要件について建築審査会が同意することにするための条例改正案について、都市整備委員会で審議しました。   

容積率を優遇することで旧耐震基準のマンションの建て替えをしやすくするしくみで、建て替えを考えているみなさんには、良い制度のように見えますが、細かく点検すると問題が見えてきました。

マンション建て替えを検討しているみなさんは、こうした課題も知った上で制度を活用されると良いと思います。       

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マンション建て替え円滑化法マン建て法における建て替え要件について建築審査会が同意することにするための条例改正案について、都市整備委員会で審議しました。

このしくみは、

容積率をアップさせて、その敷地にたてられる住居戸数を増やし、その収益を建て替え費用に充てれば、耐震強度不足のマンションの建て替えを促進させ安全性を確保できますよ。

というもので、昭和56年以前の旧耐震基準マンションにお住まいの方たちには非常に良い仕組みに見えます。

しかし、注意しなければならないのは、建て替えをするためには、マンション敷地を売却しなければ、ならないことです。
しかも、敷地売却先は、デベロッパーを想定しています。

容積率アップは、住民へのボーナスでは無く、土地を買ったデベロッパーへのボーナスになります。

いったん、売って買い戻しますから、これまで住んでいたマンションを自分たちで建て替えるようにみえますが、住んでいたマンションを売って新しく買うと思った方が分かりやすいと思います。
価格はともかく、たまたま、新しく買うマンションが同じ敷地に建っているということです。

全員の同意がなければ建て替えられなかったマンションですが、昨年法律がかわり8割の同意で建て替えられるようになりました。

それだけでなく、耐震強度不足のマンションは、4/5の同意で敷地売却の決議、敷地売却決議合意者の3/4で組合を設立できることとしています。

4/5の3/4は全体の6割ですが、敷地売却に同意する6割の住民で組合を設立することができると読むことができます。

マンション住民の6割ででデベロッパーにマンションを売って建て替えることを決めると、組合が設立され、プランが進んでいきます。

これは、再開発の組合施工と非常によく似たしくみです。

再開発が、容積率アップなどの規制緩和によって得られた床面積売却で建設資金を賄うように、耐震強度不足のマンションの建て替え費用にあてるというのは、一見よいことのように見えます。

しかし、いくつかの疑問が生じます。

【容積率アップのメリットは居住者にどれくらい還元される?】


建物を建てるのも居住者に売却するのも、また容積率アップ部分などを新住民売却するのもデベロッパーです。

利益率やコストのかけ方により、マンション販売価格は決まりますから、容積率アップ部分がどれくらい住民に還元されるか確認しなければ見えてきません。

建て替えに同意しなかった住民の住戸をいくらで買うのかも気になります。
デベロッパーになる可能性が高いですが、再開発と違い、そこに行政が関与するとは思えないので(ここは予想なので確認する必要がありますが)シビアな価格になるかもしれません。

管理費、共益費等々月々の負担も気になります。


【住んでいる地域により差が出る?不公平なしくみ?】

デベロッパーが買わないと建て替えは始まりません。

駅前一等地の建て替えで有れば、容積率アップにより大きな利益が期待できますから、場合によっては、デベロッパーが営業をかけにくるかもしれません。

条件の良くないマンションであっても、容積率を大きくすれば、採算ベースにのるかもしれません。

しかし、大田区はまだしも、地方の過疎地帯を想像していただければ分かりやすいと思いますが、いくら容積率をあげても建て替えがのぞめないところもたくさんあるでしょう。

この制度でメリットを得られるのは、都心部や駅近くなど条件の良い土地に限られることになります。

基準のありかたによっては、建て替えできるところ、できないところで、差別化されていく可能性もあります。

【建て替えを進めることが不公平や格差を招く?】

人口が減少し、東京一極集中にも限界がみえてきています。東京で有れば、どこでも、容積率アップしてマンションを建設すれば売れる時代ではなくなっています。

それでも、優遇策でマンションを建設し、売れ残れば、住民にリスクが及ぶことになるかもしれません。

今でも空き家が増えて問題になっているのに、駅近くに新しい規模の大きなマンションが増えれば、駅から遠いなど比較的条件のよくないマンションは、総体的に売れにくくなったり、入居者が減ったりすることになります。

また、再開発の場合には、公共インフラの整備などに莫大な税金が投入されますが、計画が見込み違いになった時の責任体制なども不透明です。

仮にデベロッパーに責任を持たせるなら、条件の良くないマンションはこの制度を使うことができにくくなります。


【白紙委任を求める議会軽視、不透明な建築審査会同意要件】

建築審査会の同意の基準について大田区は、東京都にならい作ると言っていますが、条例改正時に示していません。
これは、大田区の常套で、白紙委任せよという議会軽視以外の何物でもありません。


【広がる区長裁量 心配な事業者優先のまちづくり 遠のく住民自治】

しかも、今回の改正は、建築審査会の同意だけでなく、区長の処分についても加えたため、このマン建て法に限らず、区長の権限が大きくなります。

基準を明確に示し、それに同意するき則事務と違い、区長の裁量権を大きくすれば、法治体制は俗人的になり、いわば無法地帯を広げることになります。

経済最優先の経済政策は、拍車をかけるばかりです。

ただでさえ、事業者任せで主体性の無い大田区のまちづくりですが、基準の設定の在り方によりこの制度をきちんと運用していかないと、容積率アップと言う優遇政策は、採算性だけに使われ、地価や固定資産評価などから住民間の格差をさらに広げることになるでしょう。

 


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