大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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【討論】上下水道も電気・ガス・通信・道路も無い空港跡地が㎡あたり28万坪92万円!通り隔てた天空橋は24万円路線価

2018年05月27日 | 羽田空港

財務省が所有する羽田空港跡地5.9haを165億円で大田区が購入する補正予算の議案が可決されました。たった一日の議会で、です。
165億円の根拠、土地を買って行う事業の必要性、妥当性、たった一日で済ませる手続きの正当性など、どれも問題があり、反対しましたが、残念ながら、反対少数で可決されました。



第二の森友学園にも匹敵するような、あるいは、それ以上に非常に大きな問題だと思います。

以下、跡地購入予算を計上した「補正予算」に反対した際の討論です。



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フェアな民主主義 奈須りえです。

第42号議案「平成30年度大田区一般会計補正予算(第1次)」について討論いたします。

今回の補正予算の議案には、都市整備費として、現在国が所有している羽田空港跡地第一ゾーンの5.9haを国から取得するための購入費用16,494,105 164億9,410万5千円が計上されています。

補正予算の財源は取り崩した基金を繰入れることでまかなわれます。

この5.9haは、大田区が平成28年10月に事業者募集し、平成29519日付けで決定した鹿島建設株式会社を代表企業とする応募グループが開発することになっています。事業者とは、平成29年8月21日付で「事業の円滑な実施に必要な大田区と事業予定者双方の協力事項及び諸手続き等を定めた基本協定」を締結しています。

大田区が出した、募集要項にも、事業者選定委員会講評にも、土地は大田区が貸し付け、地代が大田区に入ってくることを前提としています。今は国の土地ですが、こうした表記から、羽田空港の跡地5.9haは、土地取得を前提とした事業スキームで進められてきたことがわかります。

国が、大田区に土地を譲渡すると決めたことを所管課が大田区議会に報告したのが昨年平成29年11月ですが、それ以前から大田区は、国の土地が大田区に譲渡されることを前提に事業者募集、選考、事業者との基本協定を締結していたことになります。

この土地を購入する費用が第一次補正予算で計上されています。

臨時会は慣例で会期は1日ということは周知の事実です。また、大田区は、この間国から土地を取得して事業を行う前提で動いてきました。

 

 

また、平成29年11月の羽田空港対策特別委員会において、国が、国有地の処理方針決定し、去る9月28日に財務省関東財務局長の諮問を受けた、国有財産関東地方審議会が開催され審議会の委員名簿とともに、産業交流施設及びクールジャパン発信拠点施設の敷地として国有財産を大田区に対して時価売り払いすることについて適当と認める答申がなされた。これにより、本対象地を一般競争入札ではなく公共随契として大田区に処分することを決定したと報告されています。

 この報告をうけ共産党の清水委員の「取得の時期はまったくわからないのか」という質疑に大田区事業調整担当課長は「こちらで伺っているのは、今年度作業という形では、伺っております」

それをうけ、清水委員が「来年度、つまり平成30年度の予算の中に、第1ゾーンの購入については入ってくると考えてよろしいということですね。」と確認しています。

これにたいし、大田区事業調整担当課長は「現在、その予定で進めております。」と答弁しています。

 

国は5.9haの国有地についての処理方針決定していますし、平成29年9月28日に財務省関東財務局長の諮問を受けた、国有財産関東地方審議会が開催され跡地5.9haは大田区に対して時価売り払いすることについて適当と認める答申がなされています。これにより、跡地5.9haは一般競争入札ではなく公共随契として大田区に処分することも決まっています。

しかも、大田区は、「つまり平成30年度の予算の中に、第1ゾーンの購入については入ってくると考えてよろしいということですね。」という質疑に、「現在、その予定で進めております。」と答弁しています。

にもかかわらず、当初予算には計上されず、予算議決後最初の第一回の補正予算、それも、たった一日の会期の臨時会に議案が送付されたわけです。

臨時会で急ぐなら、国の国有財産関東地方審議会が開催されるなど、要件も整っており、当初予算で計上すべきだったのではないでしょうか。その後の変化に対応する補正予算の計上なら、まだ理解できます。

あえて、当初予算に計上せず、第一回の臨時会の補正予算に165億円もの土地取得を計上していますが、上程したその日に議決を求めるような議案では到底ありません。

仮に国有財産観桜地方審議会では価格についての審議をしていないとなると、どこでこの価格165億円を決めたのか、ということになります。

国の売り払い価格は時価ですが、上下水道も電気もガスも通信ケーブルも整備されていない土地に、平米当たり28万円、坪あたり92万円ですが、第一ゾーンに隣接する羽田6丁目のバス通りで平米33万円、道路を隔てた天空橋駅が時価より低い路線価で24万円。

上下水道主電気ガス通信の整備されている土地と比べて高いのではないでしょうか。

しかも、大田区は区画整理事業で、いま、インフラ整備を行っていて、これらは、今後土地価格に転嫁されることになります。

国が取り決め大田区が了承した165億円が何を根拠に算出されているのか、1日の審議で解明できるでしょうか。

 

   第一に当初予算で計上されなかったこと

   たった1日の会期の臨時会に議案を送付していること。

など手続き上の問題からも反対です。

   しかも、当初予算で計上されない、臨時会に送付といった手続きの問題だけでなく、議案質疑の再質疑にも答弁しないように、大田区が積極的に情報を公開し、十分に説明を尽くす姿勢にないことも問題です。

 

森友学園の国有財産の売り払いで、言った、言わない、書類があった、無かったなどから自殺者まででる大きな問題になっています。価格算定の根拠が不透明だからです。羽田空港跡地という国有財産の譲渡においても、その価格の算出根拠は、示されるべきです。

   しかも、大田区は、跡地購入について、国に減額を求めると言ってきましたが、減額、減免等はされなくなったそうです。

大田区が求めた減額が無ければ、保育園や特別養護老人ホームに使える大田区民のための福祉の財源が減ることになります。大田区は、減免を前提に、つまり、この取得価格より低負担で跡地を取得しようとしていたわけで、それが無くなれば、取得をやめるといった選択肢もあり得ます。

 

   また、たとえ、国が、財務省関東財務局長の諮問を受けた、国有財産関東地方審議会が開催されたとしても、大田区の財産価格審議会に諮問をかけるべきではないでしょうか。特に財務省の森友学園の土地取得に関わる一連の国会での審議やマスコミの報道で、国民・区民の財務省への不信は大きくなっています。だからこそ、大田区として、きちんと価格の妥当性を示すべきです。財価審の条例に基づき、松原区長の判断で財産価格審議会に書けることができるのにしなかったとなれば、大田区としての価格の妥当性は、どう示すのでしょう。財務省関東財務局が国有財産関東地方審議会の諮問をうけて時価売り払いを決めた昨年夏以降、あるいは、大田区議会に報告のあった11月以降、半年以上がたちますが、大田区は、何をしてきたのでしょうか。

 

土地を取得するということは、大田区の財政や住民福祉にも影響を与えます。

価格や手続きとともに、そもそもこの土地を取得すべきかという視点での点検も必要です。

   大田区は、国の答申の前に、事業者の募集要項の中で、今回取得する土地5.9haを平米当たり300円を最低賃料として募集をかけています。

大田区は、羽田空港の跡地を国から取得できるのか、できないのか、いくらで取得できるのか、減免が受けられるのか、といったことが明らかになるまえに、事業者に地代平米あたり300円以上だったら50年の事業用定期借地権で貸し出すと決めているのです。

結果として、600円を提案した事業体が事業を担いますが、この大田区の収入となる賃料と大田区が負担する土地取得費用の関係も、事業を行うべきかどうかの判断に重要なことです。大田区は定期借地期間50年で土地代165億円を超える賃料212億円が入るのだから、といいますが、今の貨幣価値165億円と50年を経た212億円の価値が違うのはわかっているのでしょうか。貨幣価値の違いを見込まず単純に比較するのは、誤りです。

 

大田区事業調整担当課長に確認したら、最低賃料は、事業者とコンサルという専門家に相談して決めたそうです。地代の算出の目安は、事業採算性だそうです。事業者がこの土地でいくら収益を上げられるかで決めているのです。

住民福祉でなく、跡地で事業を行って事業採算をいくらにするかという事業者のために165億円の費用をかける事業は必要でしょうか。

そのうえ、区民の税金を165億円かけ事業採算性のある事業に大田区民の税金を使って土地を購入して、平米当たり600円で貸す事業者を選定して、いったいいくら税収が増えるか、気になるところですが、賃料の根拠も見込める税収などの区民へのメリットも一切示されていません。これで経済政策といえるでしょうか。空港の近くに税金をかけて箱物を作れば産業創出できるなら、世界の首都に隣接した空港周辺に同様の施設ができますから、施設を作れば国際競争力が生まれるなどという単純なものであるはずがありません。

この事業を165億円かけておこなうひつようがあるのでしょうか。

しかも、負担は165億円だけではありません。

大田区は、事業体が建設した建物の床を借りて、新産業交流や賑わい創出の事業を行います。

明らかになっていませんが、この建物の賃借料、事業体から借りますから、事業体の利益ののった賃借料も大田区が50年間、延々と負担することになります。

 

   しかも、ここには、住民福祉という視点はありません。大田区事業調整担当課長は、この事業を執行することが住民福祉だと言いますが、コンサルと事業者に聴いて作り上げた募集内容のどこが住民福祉でしょうか。そんな理屈を出してくるなら、税金は全額住民福祉に使われることになります。多くの区民は、保育園に安く入りたい、家族の介護はどうしよう、障害をもって尊厳をもってくらしていきたい、医療、住宅、等々を福祉だと考えていると思います。大田区が、羽田の跡地開発にかかる費用を福祉費として使っていると知ったら、区民は怒るのではないでしょうか。

   いま、私たちは、拡大する当初所得の格差という大きな課題を突き付けられています。

厚生労働省も、当初所得の格差の拡大は認めていて、これを税と社会保障で再分配しているから、格差は是正されていると言っています。特に日本の税制は累進性が低いので、税を集めただけでは格差を解消できず、社会保障に大きく依存していることも国は分析しています。

事業採算性のとれる事業を、日本のなだたる大企業が行うことは問題ありません。しかしこの事業が問題なのは、それが、公の土地の上であること、そして、そこに莫大な税金が投入されるということです。

国は、日本再興戦略でアベノミクスが成功していることを、大企業の自己資本利益率が10%を超える企業が増えていることで評価しています。

大田区は、165億円という区民の税金を使って、大企業の株主が収益を得られる事業の場を設定しているわけです。

これにより、大企業の株主は土地を買わずに、地代負担が少なくて、跡地での収益事業に参入できるので、少ないコストで収益を上げられることになります。それ以外の人たちの間の所得格差が広がる可能性が大きいのです。

 

しかも、跡地は、国が所有していても、大田区の所有でも公の財産ですが、それをあえて、国から大田区に移転すると、どうなるかといえば、大田区民の福祉に使えるはずの財源165億円が、国の財布に入ることになります。

 いま、ただでさえ、法人住民税国税化など、大田区の財源が国にながれ、大田区民の福祉に使える財源が逼迫しています。165億円も国に財源を提供する必要があるでしょうか。

 地方分権で大田区は社会保障の責任主体であることを自覚できているのでしょうか。空港跡地なら国に行わせ、大田区の要望をしっかりと反映させられるよう働きかけるのが大田区の役割です。

 

   そうはいっても、ひとつ、跡地を大田区が開発する意義があるとするなら、48時間強制退去という歴史的経緯を持つ大田区が、羽田空港の沖合移転に伴ってできた土地だから、ということです。あの土地はもともと大田区民の土地なのです。

沖合移転に伴い、当初大田区は、空港の干渉帯としての位置づけで、環境を守るために活用し、一部をものづくり町工場の大田区ですから、産業の為に使う方針でした。これほど大規模で、日本のなだたる大企業を相手にした事業用地にするという印象はまったくありませんでした。

それが、松原区長になってからまったく様相をかえることになります。

羽田空港対策特別委員会で、緩衝帯として活用すると説明してきた部分はどうなりますかと質問した時、ありませんと大田区が答弁したら、傍聴者の一人が嗚咽とともに委員会室から退席されたのを覚えていらっしゃるでしょうか。私たちは、何のために羽田空港の沖合移転をしたのか、忘れてはならないと思います

そもそも、48時間の強制退去や、跡地ができた歴史的経緯から考えれば、今や騒音抑止など緩衝帯の機能さえなくなってしまっている大田区が進めている活用のために土地を165億円もかけて購入する必要はありません。

しかも、買っても企業体に50年の事業用定期借地で貸し出すのです。

50年といえば、現在の世代にとっては、ほぼ返ってこない、売ったも同然の長い年月です。

企業は自己責任と市場の競争の中で収益をあげるべきで、行政の支援は、べつのところにあるはずです。行政が保護して収益を上げさせる大田区のにぎわいや産業支援施策は、本来の大田区のものづくりや中小企業の最適な支援とは言えず、事業採算制で募集要項を作って応募してきた事業体のための経済政策になっているのではないでしょうか。

以上、どこからみても、165億円を投入することを賛成できない理由ばかりなので反対いたします。


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