いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

村上春樹インタビュー観。 view of h.murakami's interview

2014-11-05 19:39:22 | 日記
 (1)あまりメディアに登場しない村上春樹さんが5年ぶりとかで新聞の単独インタビューに登場した。1ページの短いインタビュー記事であったが、随所に印象的な言葉がちりばめられて興味深いものだった。

 村上春樹さんの小説は現代作家の中でももっとも多くの海外翻訳本が出版されて海外での人気も高く、これが毎年ノーベル文学賞の候補者として名前の上る所以(ゆえん)でもあると言われている。

 (2)昨年出版の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は日本では100万部を超えるベストセラー本となったが、その英語版が今夏の米国ニューヨークタイムス紙のベストセラーランキングの1位(ハード・カバー・フィクション部門ー同インタビュー)になって、村上作品がほとんど日本出版と時を置かずにして翻訳されて海外でもベストセラーになる人気、支持の高さだ。

 欧米とアジアの読者観の違いについて、村上さんはインタビューで欧米人は「論理的」に読み、「ストーリーやテーマ性よりは文学的なメソッド(方法)で評価されることが多い」とし、日本以外のアジアでは「ストーリーの要素が大きい」として「登場人物のライフスタイルやものの考え方に対する興味もある」と分析している。

 (3)人間が井戸の壁をすり抜ける小説表現に対して欧米は能動的(「マジックリアリズムだ」)なのに対して、アジアでは受動的(「そういうことはあるかもな」)な読者観と見ているのではないのか。

 何がリアルで何が非リアルかを深く考えずに同じように受け入れるアジア観と、ポストリアリズムだ、マジックリアリズムだと判別する欧米観を「風土(climate)」の違いとして分析している。

 (4)「簡単な言葉を使って、複雑で深い物語を書きたい」のが村上さんの理想で、欧米に高く評価される文学要素になっているのではないのか。
 「ノルウェーの森」に代表されるようにビートルズ音楽のドライブ感を文学に取り入れて表現している。ビートルズは、分かりやすい言葉(詞)を斬新なコード進行で歌い演奏して音楽のあたらしい時代を築いた。

 ちなみにちょこっと言わしてもらうならば、ここでブログを書く目的の大きなひとつが「表現力」の学習で、はるか、はるか彼方で村上文学思想につながっているのかもしれない気がする。

 (5)余談はさて置いて、この村上インタビューで印象に残るのは「理想主義(世界は良くなっていくはずだ)は人と人をつなぐものですが、それに達するには本当にぎりぎりのところまで一人にならないと難しい」という言葉だ。

 よく欧米は個人主義(individualism)で日本は迎合主義(opportunism)と区別されることがある。欧米は個人の主張がはっきりしているが日本は個人の主張よりは絶対多数に同調するイズム(主義)が文化の特徴だ。言語がそうで、欧米語は主文が先に来るが日本語は主文が最後に来る文化観だ。
 どちらにもいい、悪いはあって多様なところが融合(fusion)する意味、意義であり、世界は融合されなければ理想主義に行き着くことは出来ないのは確かだ。

 (6)「本当にぎりぎりのところまで一人になる」のは、そこまでいかなければ可能性、潜在力、反発力つまり個人能力(individuality)を十分発揮することにならない教訓として、いい言葉だ。

 欧米のモダニズム、リアリズムにつながるものだろう。村上さんは「ずっと日本で仕事をしていてはだめだと思って」80年後半から90年初めに欧米に出かけて滞在、生活して「もう一度ゼロからやり直す」ことで融合(fusion)を目指したのではないのか。

 (7)欧米と日本の文学メディアの考え方を「どちらが正しいとかじゃなくて」と言っている。

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