(1)岸田首相が地方創生に掲げるのが「デジタル田園都市国家構想」だ。デジタル技術、インフラを経済、社会、医療、農業に使って都市機能の活性化、活用化、有効性を進める。医療もオンラインを使っての遠隔治療、診断が具体化、農業も遠隔操作管理で栽培、収穫管理を効果的にはかるものが具体化しており、移動しなくても高度な技術供与、利益が受けられて、都市一極集中を解消して地方創生をはかろうというものだ。
ただし、少子化にともなう市場の需要と供給のインバランス関係が起きれば地方創生にはつながらない問題もある。
(2)医療、農業にとっては画期的な構造改革であり、成果が期待される。少子化、経営資金に対応する方法論、対策としてデジタル化は推進する必要はある。デジタル化に注目、関心が集まるが、国家の役割は「人」を育てることだ。
デジタル化社会でもそれを動かし、活用、機能する人的資本(personal capital)が育ち、保障されなければ機能、有効化はしない。「人」を育てることは教育への投資である。日本は教育への投資が比較少ないことが指摘されて、研究者、知能、知的財産(intellectual property)の国外流出が問題となっており、教育環境の投資、整備が求められる。
(3)コロナ社会で奨学金利用家庭ではアンケートをとった対象の4人に1人が9月の手取り収入なし(報道)との家庭があった。あしなが育英会ではコロナ感染拡大で街頭募金活動を中止していたが12月に街頭募金を再開(同)した。
街頭募金も持続的に奨学支援、補助となるものだが、とてもそれで負担できる、まかなえるものではなくやはり大企業、高額所得経営者からの支援が欠かせない。企業にとっても将来の日本経済、社会を支える人的資本を育てることは必要であり、もっと貢献してもいい。
(4)米国は寄付社会といわれて、税金対策もあるのだろうが義務のような使命のような高額所得者の社会的寄付が慣例化しており、日本でも1兆円を超える営業実益の企業も増えてきておりもっと将来の人的資本への投資を考えてもいい環境にある。
「人」の投資といえば官僚からの政治家転身が目につくが、政治の既得権益、省庁利益確保、優先に働いて、国民利益に公正、公平に向いていない。政治の世界も「人」を育てることは必要で、国民有権者に課せられた責任だ。
(5)岸田首相は新しい資本主義、成長と分配の好循環を目指して経済界に3%の賃上げを要請して、連合は4%の賃上げを求めており、トヨタはこれまでの会社一律の賃上げ交渉から職種、職域ごとの賃上げ検討、交渉に切り替えて、好不況の落差のあるコロナ社会で停滞した経済状況のなかでも多様なあたらしい賃金構造改革を打ち出している。
(6)国家の持続的な発展、成長には、「人」の成長と人的資本の適正な分配がダイナミズム(dynamism)であり、政府機関の地方移転、地方創生、デジタル田園都市国家構想にも欠かせない。