(1)政府は「国土強靭化」と言ってみたり、今回在日米軍駐留経費の日本側負担をこれまでの「思いやり予算」から「同盟強靭化予算」(wiry budget)とすると発表して、「強靭化」がよほど好きなようだ。
「強靭化」といわれると国家統制的な圧力が強く、有無をいわせぬ強硬姿勢が感じられてなじめない。強化とか深化という言葉もあり、今日的わかりやすい日本語を使う風潮、文化からはとっつきにくい言葉だ。
(2)その「同盟強靭化予算」は、これも近年の米国の日本側負担増強要請に沿って22年から5年間21年度より年100億円増額で日米が合意した。米国から駐留米軍経費負担増額を要請されるまでもなく、韓国同40%、ドイツ32%に対して日本は74%(米国防総省発表)の負担と突出して高い。
(3)とはいっても、日本国憲法で戦力を保持せずに交戦権を有しない日本としては「米国をつなぎとめ日米同盟の『強化』を図る以外に現在の安全保障情勢に対応しきれない」(外務省官僚)からだといわれている。
中国の軍事力強化、海洋進出に対して、米国は日本などと開かれたインド、太平洋軍事同盟構想、豪、グアム基地強化で対抗しようとしており、米軍の日本基地の役割、重要性は変わらないとみられているが変化もみられる。
(4)沖縄米軍基地も日米安保、軍事同盟によるアジア共産化阻止が主目的だったものが、中東、イラク、アフガン攻撃でも沖縄米軍基地が攻撃参加するなど多目的利用がみられて、米軍基地が日本の国防、防衛に限定したものとはなっていない中で駐留米軍経費の日本側の負担増というのは米軍の世界戦略の肩代わりを担うことにもなっている。
(5)これに合わせてということでもないのだろうが、財務省は来年度予算編成で22年度沖縄振興予算を21年度比607億円減額する案(報道)を示した。前年比20%の大幅減額で日米「同盟強靭化予算」の負担増に対応調整したかのような沖縄振興予算の減額だ。
沖縄辺野古移設工事では軟弱基盤の政府の一部設計変更に対して、玉城沖縄知事が許可しないことを表明しており沖縄県側に圧力をかけるものか、自民党からも「決して納得できる数字ではない」(報道)との反発もある。
(6)日本政府の米軍の世界戦略、同盟強靭化予算の日本側の負担増の上に沖縄振興予算の大幅減額では、日米安保、軍事同盟の目的、協力関係の利益に反するものであまりにも米国、米軍寄りの露骨な日本政府の方針、姿勢だ。
米国は対中国包囲網で豪、グアム基地の強化を打ち出しており、これまでも沖縄駐留米軍基地の70%以上が集中する解決策としてグアム基地移転計画も候補予定にあがっており、今回の米軍のグアム基地強化に当たって日本政府がどれだけ熱心に働きかけたのか実態がよくみえない中、対中国包囲網、インド、太平洋軍事同盟構想に組み込まれている日米同盟強靭化予算の目的、趣旨、機能のインバランス関係だ。