(1)五木寛之さんは「孤独のすすめ」を書いて、老後社会にそういう説をとく作家の本も目につく。一方で東日本大震災、コロナ社会で老令者の孤独死が社会問題になっており、政府は深刻化する孤独、孤立、生活困窮者支援、自殺防止、子どもの貧困問題を重点計画としてNPO法人支援に63億円の21年度補正、22年度予算案を実施、計上した。
(2)10代の若年層が親の介護をするヤングケアラー問題も今年関心の特徴だ。孤独も目的、意欲、健康、能力があれば人に干渉されずに自由に望みどおりの人生が歩めるが、誰もがそうとはいかずに国、社会の補助、支援、協力が必要になる。
ケアマネによる訪問看護が必要な人も多く、地域によるセーフティネットのひろがりで支援、共助、協力していくことが求められている。
(3)少子高令化社会は経済、社会保障の影響だけでなく老令者、若者の孤独、孤立からヤングケアラー問題まで幅の広い問題を生んで、1億総問題化社会を構成している。50代の働き盛りの世代が無職、独身で母親の世話になっているという(働く意欲、能力があっても機会に恵まれない場合もある)パラサイト(parasite)社会の問題でもある。
(4)国会では野党中心に生活保護を国民の権利として位置づけて申請、取り組みを強化する動きがあるが、制度そのものが早期の社会復帰による経済的自立を促す、優先するものになっているのか、職業訓練の課題はあるが就労に向けた積極的な支援、補助、マッチングを強化しなければならない。
(5)社会保障の進んだ北欧社会ではベーシックインカム(basic income:最低生活費保障)社会が定着していて、それでは働かなくなるという懸念には逆に就労層が増えているというデータもある。社会基盤がしっかりしていれば、さらにいい生活、社会への取り組み姿勢、期待がみられるということだろう。
国民人口比較、税制負担率(北欧国の消費税率は比較高い)、文化の違いもあり、一概に日本でもベーシックインカムがふさわしいかは検討、検証がいるが、日本の生活保護も社会復帰、経済的自立を目指すことには変わりがない社会保障だ。
(6)政府が63億円予算をかけて孤独、孤立社会を変える対策はいいが、支援の先に経済的自立が見えてこないと問題解決にはならずにそういう意味でのそうなってこその「孤独のすすめ」でもあると理解する。
昨年から今年にかけて新幹線内無差別殺人、電車内放火傷害、病院放火殺害事件が記憶にあたらしいうちに続いており、たとえば幸福な人を見ると関係なく邪魔したくなるなど社会からの疎外感が強く浮かぶ強烈な事件が目につく。
(7)格差社会の孤独、孤立、パラサイト問題の深刻さがうかがえて、社会と「無縁」という孤独、孤立であってはならない。『孤独のすすめ」は「自立」のすすめでもある。