(1)順調に伸びていた日本の農産物輸出が政府が目標としてきた1兆円を始めて超えた。日本の農業は品質、味、栽培、生産、管理力で高い技術、潜在能力(potential)を持ち国際競争力の高さを備えていたが、政府の農業過保護政策、品質保証による比較価格の高さが問題で競争力に影響してきた。
(2)国際社会がメタボ解消による健康志向時代から自然栽培食品としての日本食への関心が集まり、TPPなど関税撤廃による自由貿易協定で外国産の低価格の農産物の輸入が増えることの危機感から、日本の若い農業者を中心に農業の潜在能力、IT活用を背景に世界市場に向けて日本の農産物の輸出展開が増加して、世界の健康食品志向と相まって輸出農産物1兆円を超える目標達成となったと考える。
(3)もうひとつの背景にはコロナパンデミック社会で自宅での食事の機会が増えて、インターネットでの販売、購入が好調(報道)だったことがあげられている。政府はさらに25年に2兆円、30年に5兆円の目標拡大を掲げている。
一方で国内市場は低価格の輸入外国製品との競争力が待ち受けており、品質、味よりは需要適正価格時代の中で創意工夫が求められることになる。コロナ社会で疲弊した国内経済は原油高、原材料上昇で来年3月以降の食料品、調味料の値上げラッシュが続く。あまり早い値上げ方針発表は市場の品薄(供給調整)、買い占めにつながる。
(4)世界はオミクロン変異株の感染拡大でコロナ感染者が再び増加傾向にあり、日本は今年後半はワクチン接種が進んでか(原因は不明)感染者もほとんどの自治体で1日ヒト桁台で推移しており、このまま来年は経済回復基調の足掛かりとしたいところだが早々の値上げラッシュ発表で機先を制されたところだ。岸田政権の成長と分配の好循環、賃上げ効果が実現するのか見通しははっきりしない。
(5)値上げといえばコンサート入場料の変遷も大きい。こちらの方は興味、関心、嗜好、文化のカテゴリー(category)で一律というものではないが、かってはコンサート入場料は3千円位でも高いと感じていたが、あっという間に5千円、7千円と跳ね上がり、1万円台もめずらしくないという格別の上昇率だ。
こちらの方は誰が、何を、どう、どのくらい提供するのかという価値評価の問題で、極端にいえばいくら高い入場料でも人が集まってくれれば相当な収支が釣り合う設定になるので、興味、関心、嗜好、文化の需要と供給のバランス設定問題だ。
(6)コンサートも芸術性、音楽性、文化性を高めるというよりは、今日的社会を象徴するように経済性、利益性、収益性効果が優先して入場料の値上げが続く。1966年にビートルズが来日公演した時には、すでにビートルズには利益、資産に興味がなかったといわれて当時としても手ごろな入場料設定だったといわれる。そうして自らの(革命的)音楽、文化、創造世界を提供する精神性が高かったといえる。
(7)物価というのは費用対効果、市場対効果、経済対効果の原理、原則で決まるものだが、日銀は物価上昇2%達成目標を8年掲げて金融緩和策を続けているがデフレ脱却の実現はほど遠く、欧米はインフレ対策での利上げ方針だ。