(1)プロテニス協会は中国の女性プロテニスプレーヤーが中国政府高官から関係を強要されたと告白した後、所在が不明になっていることに中国政府が適切に対応しないとして中国開催のプロテニス大会をすべて中止すると発表した。
冒頭のような事例が人権問題なのかゴシップ(gossip)なのかはむずかしいところで、これを政治、人権と結び付ければ各地で問題が多く発生するだろう。
(2)米国は来年2月開催の北京五輪、パラに米政府代表を派遣しないと表明した。中国の人権抑圧問題に敏感に反応、抗議してきた米国政府は、かねてから新彊ウイグル自治区のジェノサイド(集団残虐行為)、人道問題について懸念を示して、国際社会もウイグル地区の特産綿を使用した商品使用の企業には批判が高まっている。
(3)今や経済戦争時代で経済安全保障が重要課題となって、米中貿易戦争が世界経済にも影響を与える時代だ。中国の巨大な市場、消費を当て込んでの政治と経済は別問題との経済優先主義とは別に中国の人権問題は経済、スポーツにも大きな暗い影を落としている。
中国は人権問題は国内問題だとして他国の干渉を排除する姿勢を打ち出しており、今年は中国共産党創立100年を迎えて相当ひどいことを強硬に推し進めている。香港を国安法で介入し民主派勢力を一掃して完全統治して、台湾にも軍事関与を強める姿勢をみせている。
(4)そういう中での中国女子プロテニスプレーヤーの所在不明であり、中国の人権抑圧政治を浮き上がらせて北京冬季五輪、パラへの米国政府の五輪外交ボイコットにつながった。米議会からの強い外交ボイコットの要請(報道)を受けて、バイデン大統領も決断したようだ。
バイデン大統領と習近平国家主席はそれぞれに副大統領、副主席時代から旧知の間柄であり、先日のオンラインでの米中首脳会談でも友好関係を強調してみせていたが、米議会からの五輪外交ボイコット要請ということになれば断れば弱腰外交とみられて、強い米国を望む米国民の反発を受ける可能性があり、この時期での米国政府の北京五輪外交ボイコットの表明となった。
(5)バイデン大統領は9、10日に世界110か国、地域を招いてのオンライン形式で「民主主義サミット」を開催する。これに中国、ロシアを排除して招待せずに中国、ロシアの専制主義と対決、対峙する民主主義の結束を示すもので、人権問題が重要テーマのひとつとなっており、その足掛かりとしての米国政府の北京冬季五輪外交ボイコットの表明、米国の意思、意図のあらわれとみることができる。
(6)バイデン大統領主導の110か国、地域招待のオンライン形式の「民主主義サミット」というのも相当大がかりな政治サミットであり、近年民主主義が後退しているといわれる時代感覚、背景の中でトランプ前大統領で失った民主主義、自由主義の覇権国家としての米国の威厳、リーダーシップを取り戻そうという意図がみえるものだ。
(7)オミクロン変異株の感染動向によっては来年2月の北京冬季五輪の開催、参加も不透明になるところだが、それを待つことなく中国女子プロテニスプレーヤーの所在不明という中国の人権問題であり、プロテニス協会のすべての中国大会中止表明という対抗措置があっての米国政府の北京冬季五輪外交ボイコット表明だ。
(8)民主主義サミットでの政治とスポーツ、人権の問題で、中国との関係がどう評価されるのか、されないのかは関心がある。