(1)元経済官僚が「岸田首相は、結局何もしないだろう」(報道)ということを言っているが、妙に現実観を持って受け取られる。岸田首相は防衛費増額、少子化対策、子ども手当拡充を打ち出して、財源を増税でまかなう方針といわれて増税論者という印象を持たれていることを気にしているといわれる。
(2)そこでここにきて昨年度の税収が過去最高となったことを受けて、税収増益を国民に還元するとして補正予算による経済対策として賃上げ企業への減税、特許、ストックオプション(自社株)への減税を打ち出したが、これらは企業への減税策だ。
昨年の税収増は円安株高、輸出企業の利益効果によるもので、リスクとして円安は物価高騰の拡大を招いて国民生活に影響は大きく賃上げ効果も大幅物価上昇が上回り、実質マイナス成長となって国民に利益は回らない。
(3)税収増を国民に還元するのも成長と分配といえばいえないこともないが、税収増の副作用の円安による大幅物価高騰で国民生活を苦しくしているのだから、実質上は税収増の国民還元は成長と分配の好循環といえるものではない。
(4)岸田首相が増税論者だとする世評を気にしての減税対策で、自民党からは効果をより強く意図するために所得税減税を主張する声があがっている。成長と分配の好循環というなら持続可能な成長が必要だが、今の日本経済、企業にそんな力があるのか疑問だ。
主力輸出産業の自動車企業は海外での業績堅調だが、新しい経済主体の投資企業のSB、楽天は大幅赤字が続いて日本経済の先行きは見通せない流動的状況が続く。
(5)物価高騰の誘因となっている日銀も大規模金融緩和を見直す出口論に踏み出せない原因ともなっている。岸田首相は新しい資本主義、成長と分配の好循環を打ち出したがその原動力となる賃上げは円安による大幅物価高騰で打ち消されて、防衛費増額、子ども手当拡充の財源は増税でその後に税収増の還元としての減税対策といっても物価高騰に苦しむ国民生活には利益は及ばずに、冒頭の「岸田首相は、結局は何もしないだろう」という言葉に結びついてくる方針、政策の方向性が定まらない行ったり来たりのふらつきフラフラ政治だ。
(6)内閣改造、党役員人事を実施してもこれまでの岸田内閣支持率20%台の主要人事は残してでは、その後の岸田内閣支持率をさらに引き下げて、やるぞやるぞとみせかけての解散総選挙にはなかなか打って出れない政治状況を岸田首相自らがつくり出しているというパラドックス(paradox)な政治姿勢だ。
(7)岸田首相は、結局は何もしないということになるのか(does he has nothing to do , premier kishida)、マイナ総点検も今後どう展開していくのか、国民の批判、不満は大きくなるばかりだ。