(1)イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区のハマスとの戦闘は双方で2300人超の死者を出して、侵攻したハマスがイスラエルから人質数百人をとって(報道)緊迫した展開をみせている。イスラエルでは与野党挙国一致の「戦時内閣」を発足させて、ガザ地区への地上軍進攻が懸念されている。
(2)イスラエルを支持する米国はブリンケン国務長官がイスラエルを訪問して、連携を表明して地中海に空母群を派遣してけん制している。一方でこれまでパレスチナを支援してきたのはEUで「パレスチナ人全員がテロリストということにはならない」(報道)とこれまでのパレスチナ低所得者層への支援継続を示している。
(3)NATOの中で米国とEUがそれぞれにイスラエル支持、支援とパレスチナ支援とに分かれるという状況で、パレスチナが置かれた歴史、迫害の宿命、紆余曲折がわかるもので、それならとっくにイスラエル、パレスチナ問題は解決に向かうと考えるものだが、キリスト聖地エルサレムを巡ってともに譲れない宗教国家対立が深刻な影を落として引くに引けない関係だ。
(4)当時米国クリントン大統領の仲介調停でイスラエルと比較穏健といわれるヨルダン川西岸地区支配のパレスチナ自治政府(PLO)が和解で合意したことがあったが、これにハマスが強硬に反対して飛び地ガザ地区で戦うハマスの人気はパレスチナ自治区では高い(報道)といわれるのがイスラエルとパレスチナの深刻な対立を長引かせる。
(5)イスラエル戦時内閣の要人は「ハマスを地球上から消し去る」(報道)と述べているが、飛び地ガザ地区をイスラエルが侵攻支配することは戦力的には可能だろうが、それはイスラエル対アラブ、イラン、イスラム国との全面戦争につながるもので世界大戦への引き金にもなるものとして今回の伝えられているイスラエル地上軍のガザ地区進攻の行方が懸念される。
(6)ここは一度はイスラエルとPLOとの和解合意を主導した米国がパレスチナ低所得者層支援のEUと協議の上、停戦に向けて動くしかないのではないか。すでに双方で死傷者が多数出て、ハマスによる人質も数百人はいるといわれて歩み寄り話し合いは簡単ではないが、かっては中東の火薬庫といわれたイスラエル、パレスチナ問題が再噴火、長引けばウクライナ戦争に続いて世界情勢に暗い決定的なリスク影響要因となるもので、どの国も無関心ではいられないだろう。
(7)さらにイスラム過激組織の台頭を許せば、再び暗黒の時代の再来を招く危険構図はある中東の火薬庫だ。米ソ冷戦時代の途方もない「ベルリンの壁」問題を経験してきた世界にとって、パレスチナ自治区ガザ地区の「飛び地」(a detached estate)問題を放置してきた責任は重く、大きく、解決の糸口は容易ではないが米国とEUにその可能性がないわけではなく、期待する。